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測色010-三鷹天命反転住宅

2011-06-20 21:01:37 | 建築・工作物・都市の色
先週末、あいにくの曇り空の下、三鷹天命反転住宅In Memory of Helen Kellerの見学会に参加してきました。

最近、環境色彩デザインの仕事の内容について話をしていると、『その論理はわかるんですけど、じゃあ積極的に色を使う、ってやらないんですか』等と質問される機会が増えつつあります。学生を始め、若い方々と接しているからでしょうか。

その問いに対し、個性の強い有彩色(=人の記憶に必ず残る程の強い印象を感じさせる)を扱う可能性やその場合の論理について、色々思いを巡らせています。



このカラフルな外観・内観は、芸術家/建築家である荒川修作+マドリン・ギンズによるもの。『極彩色の死なない家』として、世界各地から見学者が後を絶たないそうです。私が参加した回にも、20数名中3名の外国人の方がいらっしゃいました。

この住宅の作品としての価値や、設計そのものにどのような意図が込められているか、或いは“死なない”の意味等は、数々の著書や上記サイトで知ることが出来ますし、この空間は何よりも『体験してみること』が重要だと思いますので、ここでその詳細を挙げることは避けるべきでは、と考えました。

ここでは私自身が長く気になっていた、『極彩色が景色としてどう見えるのか』ということについて、記しておきたいと思います。

【交差点からすぐ、よく目立つ幹線道路沿いに位置している】


まず交差点に立った時、“あ、あの建物か”という視認性は確かに感じられます。ところがそれは想像していた程強烈な印象ではありません。隣の建物に比べ、少しセットバックしていること、更に敷地内や街路の樹木が前景となり、自然の緑というフィルターを介しているからだと感じました。

【交差点とは反対方向からの眺め】


交差点と反対方向に進んでみても、その印象は変わりません。むしろ高木が完全に前景となり、建物の半分はすっかり後ろに隠れています。恐らく夜間、反対車線から見たときには見過ごしてしまう可能性も高いのでは、と感じました。但し街路樹は落葉樹でしたから、冬場には外観の殆どが視認できるくらいになることが予想されます。季節の変化により色が見え隠れする、という点も興味深く、ぜひ次回は冬時期に(或いは黄色く紅葉した時期にも)再訪したいと思います。

見学会の際、学芸員の方から伺ったお話はどれも大変興味深いものだったのですが、その中で一つ、なぜこのような極彩色が“景観を阻害する要因とは言いがたく、芸術作品として高く評価されるのか”ということの説明になるのではないか、と感じたことがあります。

『色は多色を使うと色同士がそれぞれの存在を打ち消し合うという効果がある。赤色、黄色などという各色に対する認識ではなく、“いろいろな色がある”という認識になる』ということ。確かに、高彩度色を多数使っていますが、多数という印象が強く、どれかの色が突出して目立っている・目立たせようとしているという訳ではないのだということを感じました。

それを実証するかのごとく、通りを挟んだ正面あたりに、次のような屋外広告物があり、色の扱い方の難しさについて、改めて考え込んでしまいました。

【黄色ほぼ1色の看板は色として良く目立ち、環境の中で際立つ】


もちろんこれは広告(サイン)ですから、目立つための配色だと思います。その違いが、景観としての見え方を考える時、“周辺の景観を阻害する要因として働いてしまうのか、ランドマークとして地域に根付くものなのか”という判断に繋がるのではないかと考えています。

まず主張、という点では、天命反転住宅も住宅展示場の広告も同じである、と考えてみます。次に“主張の内容・度合い”を測る必要があるでしょう。そうして個別に・各自が判断することが大切なのではないか、と常々考えています。

三鷹天命反転住宅、私は好きか・住みたいかと聞かれると、嫌いではない、でも一人で住むにはちょっと…という若干の抵抗感があります。ところが、そうした好き・嫌い、或いは住みたいか・住みたくないか、という観点を超えて『これがあと何十年か経ち、多くの人が何度も訪れる三鷹の名所になるかもしれない』という、個人の嗜好とは別のところで、圧倒的な存在感や美術作品としての価値を見出せるように思いました。


私にとって荒川・ギンズの色使いは、想像の範囲を超えたものであったと同時に、その超え方の気持ちよさというか、比較的素直に受け入れられるものだな、という印象を持ちました。竣工して6年。まだまだこれから、周囲の評価も変わっていくかも知れません。ですが、こうした事例は多くの示唆に富み、他の地で“真似たような色使い”や“同様のコンセプトを持った外装色”が出現した時、必ずそれらを景観としてどう見るか、ということのための指針になるはずです。

自身としては、こうして各地の特徴ある色とその環境における見え方、を注視して行きたいと思っています。

ちなみに、測色結果、全色(秘密・調べれればわかりますので)測りきれませんでしたが、いくつか掲載しておきます。
5YR 7.0/10.0、10B 6.0/8.0、10R 8.0/3.0、7.5P 3.0/3.0、2.5G 5.0/10.0、10B 3.0/10.0、7.5GY 6.0/10.0、5Y 7.5/12.0、5R 4.0/12.0…等々、全て参考値です。いずれも、完全な原色ばかりではないことがわかります。個性ある色の組み合わせにより、今までに出逢ったことの無い景色がつくり出されています。

【見学した303号室の一部】
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