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寒色系の彩度

2010-09-15 20:18:30 | 色彩指定のポイント
建築や工作物の外装色によく使用される色を慣用色と言います。その多くは私達が暮らしの中で慣れ親しんできた建材、木材や土、石などの自然素材の色=暖色系の低彩度色が中心です。耐候性に優れた顔料を用いた塗料や、工場で大量に(均質に)生産される建材が次々と誕生し、自然素材の色が中心であった日本のまちなみの色彩は大きく変貌しました。

多様な建材・色の選択の幅が増えたということは、ある意味では大変喜ばしいことでもあります。今までになかった微妙な色使いや、多色相トーン調和型の配色などが可能になります。一方、長く慣れ親しんできた慣用色以外の色彩の扱いについて、色彩の見え方の基本的な事項を把握していないと、思うような色が再現出来ずに悪戦苦闘することも多いと言われます。

写真の建物は平成2年に完成した、横浜ポートサイド地区の住宅棟です。この地区一帯はガイドラインの中で、基調色をBG(ブルーグリーン)系の低彩度色とすること、が規定されています。写真奥の建物はマイケル・グレイブス設計によるもので、特徴ある超高層棟のデザインは当時大変話題になった記憶があります。

この建物の基調色は、1.5BG 7.0/1.0程度。彩度はわずか1.0しかありません。手前のグリッドの部分でも、1.5程度。全体にBG系の色相を使用することにより、個々の色彩が“呼び合って”青緑感を強調している、とも言えます。



後に建設された同じ地区の建物も、やはりBG系の基調色で統一されています。ここでも、彩度は1.2~1.5以下。色味を強い主張として感じるか感じないか、本当にギリギリのラインです。入社一年目の頃、この計画の実施計画に係わり、実際にタイル等の色調整の準備をしたことを覚えています。
変色・退色の少ない磁器質のタイルを使用していますので、色調整はかなり微妙に、細かく段階を刻んで実験をしました。彩度1.5を超えると、大面積になったときこのくらいの見え方をする、あるいは0.2ピッチで彩度を下げて行ったとき、どのくらいがニュートラル(無彩色)との境目か…など。何度もタイルの焼き直しを行い、候補色を選定しました。




寒色系を選定する際、もっとも難しいのが彩度(鮮やかさ)です。暖色系の純色の最高彩度は12~14くらいありますが、例えばBG系では8までしかありません(※JISマンセルの場合)。そのため、暖色系の彩度3とBG系の彩度3を比較したとき、純色までの段階の違いから、BG系の彩度3の方が見かけ上、ずっと鮮やかな色に見えます。

また、色彩の見え方には面積効果というものがあります。色票など小さなものは、実際の色よりも暗く、鈍く(彩度が低く)見えます。指定した色が大判の見本で出来上がった際、印象が異なって見える一番の要因です。下のBG系の明度と彩度のチャートを見てみると、左から2列目が彩度1の階調です。色気がある色を選定する、と考えると、どうしてもさらに右の方から選定したくなります。それが小さな色見本の怖いところです。

【BG系の色相の明度と彩度】


ですが、覚えておいて下さい。『寒色系は、彩度1.0でも十分色味を感じる』のです。
特に建築の基調色に採用する際は、彩度1.0から選定を開始してみて下さい。色は周辺との関係性により見え方が決まりますから、暖色系の色彩に囲まれた寒色系の色彩は暖かな色に影響を受け、わずかな彩度でも十分に色味を感じさせます。

単独で色の善し悪しを判断するのではなく、“その色がどのように見えるか”ということを判断する必要があります。そのために、色彩をある程度数値(マンセル値)で把握することは大いに役立のではないか、と考えています。
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