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色彩の効果(2) - 色相対比

2011-05-12 21:16:48 | 色彩指定のポイント
配色の効果は比較するものがあると大変わかりやすくなります。対象の色が何に影響を受けているかということは、組み合わせた2色だけを見ていても把握し辛いものですし、私自身もよく思うことですがその効果を実感したところで“だから何?”と思う部分もあります。

ですが例えば、建物全体の雰囲気をこのように見せたい、或いはロゴなどに展開したテーマカラーを印象的に見せたいと考える時。選択した色がどのように見えるか、意図したように“効果的に(想像通りに)”見せることが出来るかということは、色の特性や配色の効果を十分に把握することが必要であると考えます。

よく建築設計に係わる方が発言される、“色は難しいから”ということに対しては、恐らくこの部分が最も重要な部分ではないか、と考えています。私がこれまで聞いてきた、最も多くささやかれることは

『(実際に出来たものやサンプルをみて)…こんな色にするつもりじゃなかった』…という台詞です。このような事態を避けるためには、どうすれば良いかについて、考え続けています。

【中国で騒色として問題になっていたホテルの外装色】


これはかなり極端な例ですが。ここではその外装色自体の話はちょっと置いておきます。外装の2色の組み合わせに注目してください。地はやや彩度のある明るい黄色です。では図となっている帯の色は何色に見えますか?私には少し紫がかったグレイに見えました。

これが色相の対比によるものです。黄色の補色は紫。地の色が図の色に影響を与え、補色の紫に寄って見えている状態が起きているのです。

下図はそれを模式的に表したものです。左の図に使用した帯の灰色は全く色味の無いニュートラルな灰色です。下に示した小さな正方形が帯に使用した色。背景が黄色か白かで見え方が変わることがわかると思います。

そこで、補色の影響を抑えるために、右側の図は帯の灰に少し黄を入れてみました。鮮やかな黄を背景とした場合は、右側の帯の方がより『灰色らしく』見えると思います。



このように両者を比較すると、色が地または図の色に影響を受けやすく、同時に影響を与えるものであるということがよくわかると思います。配色の基本はこのようにいずれかの条件を変えることにより、見え方がどう変わるかということを徹底的に検証することで、色彩の特性を体感により身につけることが可能です。

グラフィックデザインにおいては、このような色彩の効果とビジュアルに表現されるものの“距離感”が比較的近いように感じます。紙面や画面で検討したものが(ある程度の学習により)具体化されるにあたり、使い慣れない印刷機を使用しなければならない場合や故障などが無い限り“概ね予想通り”の結果に導くことが出来ると思います。

ですが規模の大きな建築や工作物になると、用途・形態など他の要素が複雑に絡み合い、更に光の条件による変化等も加わるため、単に色彩の特性や配色の効果を知っているというだけでは表現したいものと実際に出来たものとの距離が中々縮まりません。

その距離を縮めていくためには、やはり色を関係性で見る、ということを計画の段階から習慣にすると共に、実際の建築物等でよい色だなと思った時に、周辺や背景との対比の程度や例えば基調色とサッシの色の関係など、“良い見え方”が形成されている要因を見極める訓練が必要だと思います。

それはイコール、良くない例を分析することにも繋がります。冒頭の中国のホテル、周辺との対比が強く違和感が大きいという色自体の選択のまずさもさることながら、地の色に影響を受けすぎている図の色を選んでしまっており、その対比が違和感(この場合、建築の外装基調色として見慣れない色であることに加え、対比の強い補色に見える組み合わせが形態や建物の性質を超えて色が主張することに対しての違和)を感じさせるという状態は、“デザインをよく知らない設計者が考えた質の低い外観”という印象を与えてしまうのではないでしょうか。

例えば地の黄色が企業のCIカラーである場合でも、建物そのものをブランドのアイコンとして認識させる必要があるのか、更に形態との整合性が十分に図られているか、等の視点から検証する必要があります。黄色というイメージを生かしながら周辺景観との調和を形成することは可能ですし、そのバランスよく、という視点で実現を目指すのが環境色彩デザインだと考えています。
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