環境色彩デザインを考える人へ

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雰囲気をつくるということ

2011-03-05 01:31:56 | 日々のこと
これといった特別な要素や特徴があるわけではないけれど、そこはかとなく感じがいい、あるいは雰囲気がいい。近頃、特に住宅の計画においてはそのような『全体感をどうつくるか』ということを強く意識しています。

それはただ穏やかな色を使えば良い、ということでは無いと考えます。また、単純に色数を抑えればいい、ということでもありません。

私は常々、形態の特徴を生かす色、素材の特徴を強化する色など、色をコントロールすることにより、その対象を“どのように見せることができるか”ということを考えています。色彩調和の基本的な方法論を基に、規模や形態の変化にふさわしい色彩を選定していく。ですから、ある部分が変われば当然、全体を見直す作業が発生します。一部の変化はもしかすると、全体にはさほど影響を与えることは無いかも知れない。でも、“あるかも知れない”のであれば、やはり見なおす必要があります。

昨日、引き渡し直前の賃貸住宅の最終検査がありました。既に関係者の内覧会も行われ、CLIMATスタッフも皆見学は済ませていましたが、クライアントから改めて“担当者全員で反省会をしたい”との連絡があり、翌日に引き渡しを控えたギリギリのタイミングで担当者全員が顔を揃えました。

その計画では、コンクリート打放しやアルミ手摺、乳白ガラスなどの素材色がメインであり、塗装色を使用したのは第二構面(サッシ面や玄関回り)や軒天、各住戸の玄関扉程度です。複数棟ある住宅の基調となる素材が統一されていますから、アイレベルにおいて多少の変化が感じられるよう、例えば1階部分の玄関扉のみ少し彩度を上げる等、少しだけ“味付け”を施しました。外観がほぼニュートラルですから、その奥にちらっと見える扉の色が適度なアクセントになる、という十分な検証を踏まえ、決定に至りました。

ところが、後にそのエリア全体のサイン計画が別の流れで進み、最終的には玄関前の門柱と門扉(1階は庭から直接アプローチできるタイプがあるため)の一部にエリアサインのカラーが展開されていました。

玄関扉の色が2.5Y 6/5程度のカラシ色。サインカラーは10B 6/6程度の明るいブルーです。いずれもやや彩度のある色同士、微妙にトーンが異なっているので、色彩的な調和感の観点で行くと“ずれている”ということになります。

ここで面白いなと思ったのは、その不具合を気にしているのはやはり色彩担当で、例えばサインの方は“サインが良くできている”としか考えていないのです(※それが悪い、ということではもちろんありません、とても良く考えられたサイン計画でしたし)。それでも私は、『サイン計画がこういうシステムでこのような色を展開することがあらかじめわかっていたら、1階の玄関扉はこの色にしなかった』と思うのです。

そのことを建築の担当の方に話したら、少し驚いたような顔をされました。“そこまでやらなくても、サインはサインだし”という感じ。でも人の目に日夜触れ続ける部分には、いくら気を配ってもそれで充分ということはありません。さりげなく良い感じをつくる、ということは“不具合や気になると感じる部分がない”ということに他なりません。

そうして、他の専門家が気にしないある意味微細な部分に拘ることが、果たしてどれだけの効果をもたらしているかということは、言葉で完璧に説明することは困難です。ですがそれは決して単なる印象論・感覚論ではない、と考えており、可能な限り論理的に証明していくことを意識しています。

上記の例は、後日写真付きで再度解説してみたいと思います。
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