特殊清掃「戦う男たち」

自殺・孤独死・事故死・殺人・焼死・溺死・ 飛び込み・・・遺体処置から特殊清掃・撤去・遺品処理・整理まで施行する男たち

レール

2007-04-03 12:57:39 | Weblog
列車事故による轢死体を初めて見たのは、この仕事を始めて二年目くらいの時だったと思う。
レールの上で電車に曳かれた遺体だった。
「バラバラ」と言う程でもなかったけど、手足がちぎれてかなり悲惨な状態。
赤い肉が緩んで広がる切断面と、裂けるような形で突き出た白い骨が、私の頭を凍らせた。

経験の浅い私には衝撃が強すぎたのか、普通なら波立ってもおかしくないはずの気持ちは、ずっと硬直したままだった。

「肉はビーフ、骨はチキンみたい・・・人間も所詮はただの肉なんだな」
亡くなった故人には失礼だったかもしれないけど、極めて冷静にそう思ったのを今でも憶えている。

この社会では、子供をレールに乗せようとする親が多い。
親は、子供のために安全に走れるレールを探し、安定したレールに乗せたがる。
そのために、躍起になって学校教育にすがりつく。

私くらいの年代になると、小学生くらいの子供を持つ人も少なくない。
同年代の私の友人にも、小学生の子を持つ者が何人かいる。
その中の一人が、子供の教育について相談を持ち掛けてきた。
相談の内容は、中学進学について。
小学校高学年になる子供を、この先、私立中学or地元の公立中学どちらに入れようか考えているらしかった。

子供の学力は優秀らしく、問題は学費。
その問題がなければ、悩むことなく私立中学を選ぶところなのだが、学費のことを考えると二の足を踏むらしい。

学費は一時的なもので済むものではない。
数年に渡る負担を強いられるのだから、それに見合った安定収入が求められる。
この長期戦に自分が耐え得るかどうか、友人は考えあぐねていた。

「世の中、所詮は金次第!」
「金がなきゃ立派な人間は育たないんだよ!」
「口でいいこと言ったって、金がなきゃ何もできないんだよ!」
興奮気味に語る友人の言葉を、私は黙って聞くしかなかった。

世の中には、自分に学力があっても親に経済力がなくて〝いい学校〟に行けない子供がいる。
その逆に、親に経済力があるのに自分に学力がないため〝いい学校〟に行けない子供もいる。
学力と経済力を兼ね備えた子供しか〝いい学校〟に行けないという現実がある。
その現実が、親の経済力と子供の学力を比例させる傾向を強め、格差社会・階層の固定化に拍車をる。

一部の学校に過ぎないことを願うばかりだが、昨今の公立小学校・公立中学校の荒廃は、目に余るものがあるらしい。
そんな所に子供を行かせたくない親の気持ちは分かる。
私立学校に避難させたい気持ちは分かる。
子供の将来を思えば当然だ。
しかし、問題の根源は学校を過信する無責任な親にあるような気がする。

子供を育てる上での全責任・全権利は親にある。
学校や教師ではない。
なのに、現実はその逆傾向。
本来なら、子供の教育を学校に委任するのはほんの一部にするべきところ、ほとんどのことを学校に丸投げして、何か問題が起こったら学校の責任を追求する・・・そんな無責任な親の姿に、私は違和感を覚える。
子供が社会や学校によって育てられるのも事実ながら、その全責任と全権利は親にあること・親にしかないのは当たり前のことだと思う。
だって、子供を想う気持ちは、学校の教師より親の方がはるかに大きいでしょ?

私の親も、私を安定したレールに乗せようとして必死で頑張ってくれた。
裕福ではなかったのに、両親共働きで私を私立中学に行かせてくれた。
しかし、「親の心、子知らず」。
結果的に、私は親の願うレールに乗らず(乗れず?)、現在に至っている。
そして、それが親子の確執を生んだ一因にもなっている。

「決められたレールに乗っかって、おとなしく進む人生なんてまっぴらゴメン!」
とイキがっていたのは10代後半。
30代後半の今は、
「安定したレールに乗っかってみたいなぁ」
と思うことが多々。
しかし、私はもうレールに乗ることはできない。
そもそも、レール自体が見当たらない。
でも、それは親の責任でも学校の責任でもなく、私自身の責任。

「〝どの学校に行かせるか〟より、まずは〝どんな親であるか〟の方が大事なんじゃないの?」
「子供にとっての最善のの学校は家庭環境、そして最良の教師は親だと思うよ」
〝私立校信仰〟の典型的な失敗例である私が吐く自論に、真剣に耳を傾けてくれる友人だった。

さてさて、この脱線列車はこれから先どこへ暴走していくのだろう。
まずはとにかく、できるだけ人をキズつけないように注意しながら走っていこう。





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