御伽噺19

Copyright:(C) 2009-2010 shinya komatsu. All Rights Reserved

広告

※このエリアは、60日間投稿が無い場合に表示されます。記事を投稿すると、表示されなくなります。

十字架

2010-02-13 12:10:25 | 日記
  『十字架』

 私はカトリック教徒のAV女優だ。私の給料で新しく教会を建てた。いつも、信者たちが私を見て、祈ってくれる。私も無力ながら祈る。
 私はずっと天涯孤独だった。20才で大学を辞めて、金が欲しくてAV女優になった。売れっ子で、中々教会には行けない。
「すみません。ちょっと仕事が忙しいので」
「貴方が一番、苦しい思いをしているんですよ。家族だと思って祈りに来て下さい」
「有難く思っています」
そうして、十字架の印を首に掛けて、そして、撮影場所に行く。私は一人では生きていけないけれど、私はこの撮影も愉しんでいる。案外気性に合っているのかもしれない。私は、クロムハーツを外す。この仕事を辞めたら、次の職場は決まっていない。
 そして、今日も見知らぬ男に抱かれる。キリスト教徒だとは言っていない。AV男優が引くかもしれないからだ。ファッションですよと言っている。
 撮影は終わると、電車でアパートまで帰る。本来ならもっといい所に住める。でも、私は少しでも出費を抑えたかった。
 恋人は十字架のみ。恋愛遍歴はごく平凡だった。とてもAV女優になるタイプではなかった。でも、私は一番金が儲ける職業に就いた。きっと、これが正しい道だと信じているから。
 今日も撮影が終わった。早めに終わったので、うどんを食した。意外と美味しかった。いつもとは違う駅で一旦降りた。夜空を見上げた。星が綺麗だ。月が、私の見えない傷を癒してくれる。とても仲が良かった家族だった。それを思い出す。
 そして、しばらく夜空を見ながら、歩いて家まで帰った。きっと、もう二度と会えるはずのない家族を思った。とても、綺麗な涙が伝った。
「私は元気でやっているよ」
そう呟いた。届く当てのない言葉だけど。
 やっている時、私は結構いいと思った。スポットライトを浴びながら、誰もがする行為をただ「お茶の間」に披露しているだけ。金儲けが出来て、しかもやれる。恋人を作らないけど、それを補ってくれる。
 恋人は過去のもの。信者とは結婚する気や、付き合う気持ちもない。一夜限りでも。
 それがいいのか、悪いのか分からない。ただ私は単純に高額のギャラが欲しかっただけ。
 アドレスは全て消した。もう十分人生を楽しんだ。後は苦難を乗り越える。やがて、黒いウエディング姿で、一生の伴侶を得たいものだ。本音はそう思っている。少し、トクンと心臓が鳴る。忘れていた想いが甦る。学生時代から、ずっとレズだと思われていた。男の話をしないからだろう。
 彼氏はいた。でも、偽装恋愛だと思われていたみたいだ。
 そんな事まで思い出した。私は今なら笑える。ずっと、歩いていく。神父はこう言ってくれた。
「いつかいい伴侶が見つかりますよ」と。
私はいつか、ずっと私だけの人生を楽しむ事にした。もう伴侶は辞めた後見つけられればいいなと思った。私は短く深く生きたい。そして、孤独な夜中の部屋でがたがた震えている。心臓の脈拍が途切れ途切れになっていく。
 私は、独りでいる時。私は地獄を見ている。きっと、誰か愛してくれる人がいるのだろうけど、それが私に届くはずもない。早く朝が来ないかなと思っている。
 仕事はしながら、教会に寄付をして、そして、私はただ祈っている。世界中から争いがなくなるように。と。
 
ジャンル:
ウェブログ
この記事についてブログを書く
« 愛した人 | トップ | 恋人 »

日記」カテゴリの最新記事