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◇クラシック音楽CD◇山田和樹指揮のビゼー:交響曲/モーツァルト:交響曲第41番

2010-04-27 09:31:38 | 交響曲

ビゼー:交響曲ハ長調

モーツァルト:交響曲第41番ハ長調

指揮:山田和樹

管弦楽:横浜シンフォニエッタ

CD:EXTON EXCL‐00032

 若きスター指揮者の登場だ!09年9月、第51回ブサンソン国際指揮者コンクールで優勝し、併せて聴衆賞も獲得した山田和樹(1979年生まれ)が、09年10月に横浜・青葉台のフィリアホールで収録したのが、“ビゼー&モーツァルト 2つのハ長調交響曲”と銘打ったこのCDである。2つの交響曲とも若々しさに溢れた好演と言っていいだろう。演奏自体が決して静止しておらず、常に躍動している、言ってみれば揺れ動いている感じは、そう滅多に味わえるものでない。このCDを聴いていると、音楽が今生まれたといった雰囲気が一気に押し寄せてくる。山田のタクトを執る指先が見えてくるような、不思議な感覚に襲われてしまう。

 ビゼーの交響曲は、山田と横浜シンフォニエッタという若さ漲るコンビにとって、またとない曲といってもよかろう。第1楽章の躍動感溢れる軽快さは、すでにこのコンビの十八番のシンフォニーといったような演奏をみせ、期待が一気に高まる。第2楽章は、意外にもあっさりと演奏するが、そこはそれ、静かな中にオーケストラの高まりを徐々に高めていく演出力は、さすがはブサンソンの優勝指揮者ということになろうか。第3楽章の開放感溢れた、力の入った演奏は、爽やかさも併せ持った演出が利き、聴いていて十分に楽しめる。第4楽章は、また、第1楽章の雰囲気が戻ってきて、その躍動感に酔いしれることができる。

 モーツァルトの第41番の交響曲は、緻密な演奏が何よりも好感が持てる。オーケストラの編成にもよろうが、やたらとスケールの大きさを表現するのではなく、どちらかというと、室内楽的な演奏に徹しようとしているかのようだ。第1楽章は、一音一音をそれは大事に大事に演奏していることが手にとるように分り、好感が持てる。それに徐々に曲を盛り上げる指揮ぶりは、未来の巨匠の片鱗を一瞬垣間見た思いもする。第2楽章の演奏も、第1楽章と同じことがいえるが、より筋肉質な引き締まった演奏が、モーツアルト独特のピュアで爽やかな印象を、そこからは聴き取ることができるのだ。第3楽章は、山田の持つ天性の躍動感の魅力がいっぱい詰まった演奏ぶりが印象に残る。最後の第4楽章は、若さを思う存分炸裂させた演奏で締めくくる。思わず“ブラボー”と言いたくなってしまう演奏なのだ。

 これまでの日本人のブサンソン国際指揮者コンクールの優勝者を挙げてみると、小澤征爾、松尾葉子、佐渡裕、沼尻竜典、曽我大介、阪 哲朗、下野竜也とそうそうたるメンバーが続き、そしてこの中に新たに山田和樹が加わった。日本人初の優勝者である小澤征爾は、喉頭がん治療のため予定していた演奏会を下りなければならなかったが、小澤が直々に代役に指名したのが山田和樹なのだ。そのとき二人は全く面識がなかったというから面白い。小澤がブサンソンで優勝した山田のビデを見て即座に決めたそうだ。これは小澤が山田の才能を見抜き、自分が若かりし頃と今の山田とをダブらせたのではなかろうか。その山田も、日本で小学校での演奏会を毎日毎日何校も回り、くたくたになった経験があるそうだが、「そのときの経験がその後役に立った」と語っていた。そんな日頃の地道な努力が今花開いたということなのだろう。

 このCDで演奏している横浜シンフォニエッタは、山田を中心に1998年に結成されたオーケストラで、東京藝術大学卒業生・在学生を中心に構成されている。今後、山田+横浜シンフォニエッタの若きコンビが、世界に向かって羽ばたいってほしいものだと思う。いつの時代でも若者が新しい時代を切り開いてきたのだから。(蔵 志津久)


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