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クラシック音楽研究者 蔵 志津久によるCD/DVDの名曲・名盤の紹介および最新コンサート情報/新刊書のブログ

◇クラシック音楽CD◇ツィンマーマンのチャイコフスキー&プロコフィエフ:ヴァイオリン協奏曲

2009-09-15 10:32:15 | 協奏曲(ヴァイオリン)

チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調
プロコフィエフ:ヴァイオリン協奏曲第1番

ヴァイオリン:フランク・ペーター・ツィンマーマン

指揮:ロリン・マゼール

管弦楽:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

CD:東芝EMI:CE25-5565

 プロコフィエフのヴァイオリン協奏曲は1917年に作曲された第1番と、1935年に作曲された第2番の二つがあるが、このCDに収められたのは第一番の方である。私とってプロコフィエフというとそう馴染みのある作曲家ではないが、このヴァイオリン協奏曲第1番は、実に聴きやすく美しさに溢れた古今のヴァイオリン協奏曲の中でも傑作の一つといっても過言なかろう。この名曲をツィマーマンは、繊細でしかもこの上なく優雅に演奏しており、ヴァイオリンの音の美しさを存分に味わうことができる。この演奏を聴いている間は、リスニングルーム全体が別世界にでも持っていかれたような、不思議な感覚に襲われる程だ。メンデルスゾーンやチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲はしょっちゅう演奏される割に、プロコフィエフのヴァイオリン協奏曲は演奏される機会が多くはない。もっともっと多くの人に聴いてもらいたいなあと、ツィンマーマンの名演のこのCDを聴きながら思った。

 このCDの録音はは、1987年6月に行われているので、ツィンマーマン22歳のときの演奏であり、若々しさに溢れた演奏なのだが、ツィンマーマン自身10歳の時にモーツアルトのヴァイオリン協奏曲の第3番を演奏してデビューしたほどだったので、並みの22歳とは違い既に少々巨匠的な落ち着き払った雰囲気を漂わせているのはさすがと思わずにはいられない。チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲もほぼ同じことが言えるが、チャイコフスキーの方は名盤が目白押しなので、私としてはこのCDではプロコフィエフのヴァイオリン協奏曲第1番の方を推したい。指揮をしているロリン・マゼールは、ツィンマーマンが米国にデビューしたときに共演した仲で、相性がいいのだろう。ただ、プロコフィエフの伴奏は文句のつけようがないが、チャイコフスキーの方は少々メリハリを付けすぎの伴奏で、私としてはも少しツィンマーマンの繊細さに合わせてほしかったなあという感じがしている。

 ヴァイオリニストのツィンマーマンは、1965年2月にドイツのデュースブルグに生まれているので、今年44歳になる。10歳でモーツアルトのヴァイオリン協奏曲第3番を弾き、神童振りを発揮。1967年(11歳)にエッセンのフォルクヴァング音楽院に入学。1979年(14歳)にルツェルン音楽祭に出演しヨーロッパ中の注目を集め、1981年にソビエト、さらに1984年に米国でそれぞれデビューを飾る。そして1986年にはザルツブルグ音楽祭に出演し、その名が世界的に知られるようになる。

 このCDのライナーノートに音楽評論家の故・志鳥栄八郎氏は「正直なところ、現在(注・多分1990年頃)のドイツ・ヴァイオリン界は、火の消えたように寂しい。そうしたところに、突如、彗星のように現れたのが、フランク・ペーター・ツィンマーマンである」と書いているとおり、ツィンマーマンに対する当時の期待がいかに高かったかが分かる。同時に「ツィンマーマンが最も大きな影響を受けたのは、グリュミオーやダヴィット・オイストラフの弾くレコードだった」と、我々クラシック音楽リスナーにとって、わが意を得たりというエピソードも紹介している。そう言えば、ツィンマーマンの弾くヴァイオリンは、どことなく気品があり、美しい音はフランコ・ベルギー楽派の流れを汲むグリュミオーにどことなく似ている。


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