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◇クラシック音楽◇NHK‐FM「ベストオブクラシック」レビュー

2016-10-25 07:43:02 | NHK‐FM「ベストオブクラシック」レビュー

~ヒラリー・ハーンとイェンセン指揮北ドイツ放送フィルハーモニー管弦楽団の競演~

 

ウェーバー:歌劇「魔弾の射手」序曲       
ヴュータン:ヴァイオリン協奏曲第4番
バッハ:“無伴奏バイオリン・パルティータ 第3番 BWV1006から“ジーグ”(アンコール)
シューマン:交響曲第4番

ヴァイオリン:ヒラリー・ハーン

指揮:エイヴィン・グルベルク・イェンセン

管弦楽:北ドイツ放送フィルハーモニー管弦楽団

収録:2016年3月11日、ドイツ・ハノーバー、北ドイツ放送グランド・スタジオ

提供:北ドイツ放送協会

放送:2016年9月26日(月) 午後7:30~午後9:10

 今夜のNHK‐FM「ベストオブクラシック」は、ヒラリー・ハーンによるヴァイオリン独奏、エイヴィン・グルベルク・イェンセン指揮北ドイツ放送フィルハーモニー管弦楽団による、ドイツ・ハノーバーにおけるコンサートの放送である。指揮のエイヴィン・グルベルグ・イェンセン(1972年生まれ)は、ノルウェー出身。2009年から2014年の5年間、北ドイツ放送フィルハーモニー管弦楽団 (NDR Radiophilharmonie)の首席指揮者を務めた。2012年7月には、札幌で毎年開催されている「パシフィック・ミュージック・フェスティバル(PMF)」に客演指揮者として参加。このほか日本では、読売日本交響楽団、東京フィルハーモニー交響楽団、新日本フィルハーモニー交響楽団などを指揮している。北ドイツ放送フィルハーモニー管弦楽団は、ドイツ・ハノーファーに本拠を置く北ドイツ放送(NDR)付属オーケストラ。ハンブルクの北ドイツ放送交響楽団に次いで結成された。1998年~2009には同楽団の大植英次が首席指揮者を務めていた。今夜の最初の曲は、ウェーバー:歌劇「魔弾の射手」序曲。出だしから、イェンセンの骨太の指揮ぶりがリスナーにぐいぐいと迫ってくる。最近の指揮者は技巧派が多く、イェンセンのようなストーレートに曲を表現する指揮者は珍しい。一瞬、現代的感覚から少々遠い存在にも聴こえるが、よく聴くと、イェンセンの真摯に曲を表現する力強い指揮ぶりにリスナーは魅了されることになる。

 次の曲は、ヴュータン:ヴァイオリン協奏曲第4番。ヴァイオリン独奏は、今では世界を代表するヴァイオリニストの一人に成長を遂げたヒラリー・ハーンである。ヒラリー・ハーンは、アメリカ・バージニア州レキシントン出身。10歳でフィラデルフィアのカーティス音楽学校に入学。1991年、11歳の時に初リサイタルデビュー。その後、クリーヴランド管弦楽団、ピッツバーグ交響楽団、フィラデルフィア管弦楽団、ニューヨーク・フィルハーモニックなど米国の主要オーケストラとの共演で、国内でその名が知られるようになる。1995年にはドイツで海外デビューを果たす。1997年デビューアルバムの「バッハ:無伴奏ソナタ・パルティータ集」がディアパゾン・ドール賞を受賞し、一躍世界的な脚光を浴びる。ネヴィル・マリナー指揮のアカデミー室内管弦楽団との協奏曲(ブラームスとストラヴィンスキー)の録音により、2003年「グラミー賞」を受賞。ヒラリー・ハーンは、親日家としても知られ、しばしば来日し、日本にも数多くのファンを持つ。親日家になった切っ掛けは、子供の頃習った“スズキメソッド”によるとも言われている。阪神淡路大震災の時には、アメリカで支援コンサートも開催している。

 ヴュータン(1820年-1881年)は、ベルギー出身のヴァイオリニスト・作曲家で、主にフランスで活躍した。典雅な奏法で知られる19世紀のフランコ・ベルギー楽派の創始者として知られるベルギー出身のヴァイオリニスト・作曲家シャルル=オーギュスト・ド・ベリオ(1802年-1870年)に師事した後、独力でヴァイオリンを学ぶ。1833年のドイツ楽旅では、シューマンなどと親交を結び、シューマンからは「小さなパガニーニ」とも言われたほど、超絶技巧有するヴァイオリニストとしての名声を得る。その後、作曲家としての道を歩み、1849年サンクトペテルブルクにおいて世界初演されたヴァイオリン協奏曲第1番が絶賛された。1846年から1851年までペテルブルクに定住し、ペテルブルク音楽院ヴァイオリン科の教師を務めたが、1871年に帰国し、ブリュッセル音楽院においてウジェーヌ・イザイらの逸材を育成する。ヴュータンの作品の根幹は7つのヴァイオリン協奏曲にあるが、今夜演奏される第4番はその中でも傑作と言われ、ヒラリー・ハーンもコンサートでしばしば取り上げているという。今夜のヒラリー・ハーンのヴァイオリン独奏は、一球入魂ならぬ“一弦入魂”とでも言ったらいいような鬼気迫る名演を聴かせてくれた。極めて集中度の高い演奏内容であり、ヒラリー・ハーンがこの曲に惚れこんだことがひしひしと伝わって情熱的な演奏内容となった。一方、アンコールで弾いたバッハ:“無伴奏バイオリン・パルティータ第3番BWV1006から“ジーグ”は、一転して正統的な優雅さがキラリと光る演奏内容に終始した。これら2曲の聴き比べをして、ヒラリー・ハーンは、これからもまだまだ成長を遂げるヴァイオリニストであることを感じさせてくれた。それにしてもイェンセンの迫力のある伴奏には脱帽!

 最後の曲は、シューマン:交響曲第4番。この交響曲は、妻クララの誕生日のプレゼントとして彼女に贈られた。初演は、クララの誕生日から3か月後の1841年12月に行われたが、10年後の1851年に改訂され、現在ではこの改訂版が多く演奏される。実際には、第1番「春」に次ぐシューマンの2番目の交響曲にあたるが、改訂後の出版年次(1854年)によって第4番となったもの。現在ではシューマンの交響曲の名曲と知られる交響曲第4番も、初演時には評価されず出版は見送られた。シューマンの死後に、その楽譜の編集に当たったブラームスは初稿の優位性を主張したが、クララは反対したという。今夜のイェンセン指揮北ドイツ放送フィルハーモニー管弦楽団の演奏は、一般に我々日本人が考えるシューマン:交響曲第4番のイメージとは大分異なる。私は、イェンセンがノルウェー出身と聞かされてもどうもピンとこない。事前に何の知識もなくイェンセンの演奏を聴いたら、多分イタリア出身の指揮者では、と私は考えるであろう。ノルウェーを含む北欧の音楽は、幻影に富み、透明で幻想的なことがその特徴というイメージがが濃厚だからだ。今夜のイェンセンの指揮ぶりは、明暗を明確に表現し、真っ直線に驀進するかのような演奏内容であった。これによりシューマン:交響曲第4番が、その堂々とした姿を今夜初めて聴衆の前に姿を現したと言ってもいいほどの力の漲った演奏内容に仕上がった。これは最近の指揮者には珍しい演奏内容だ。その昔、フルトヴェングラーが迫力満ちたシューマン:交響曲第4番を録音を残してくれているが、今夜のイェンセンもなかなかどうしてその迫力は侮れない。ヒラリー・ハーンと同様、イェンセンの今後の活躍に注目したい。(蔵 志津久)    

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