恋ひ恋ひて逢へる時だに愛(うつく)しき言尽くしてよ長くと思はば
万葉集 巻四 大伴坂上郎女から
この歌、尾崎左永子さん、フランスのシャンソンのよう、とおっしゃる。
わたしもそう思う。
リュシェンヌ・ボワイエの「聞かせてよ愛の言葉を」
ボワイエのかわいい声はかんだかい少女のそれではなく、ニュアンスゆたかなおとなの女性の声だけれど、なんともいえずかわいい。
坂上郎女も、あんな声だったんだろうか。この歌は作者が、かなり年配になってから、次女の縁組のために代作したものだそうだ。
こんな歌をもらって、お婿さん候補の青年はうれしかったろう。
万葉集のなかでも、好きな恋歌。いちずなのに、その抒情によゆうがあり、愛らしい。
サルビアの緋色、かげりなくてらいがない。そんな思いと。