酔生夢死浪人日記

 日々、思いついたさまざまなことを気ままに綴っていく

「操作された都市」~斬新なアイデアと友情で紡がれた韓流エンターテインメント

2018-02-05 21:09:00 | 映画、ドラマ
 我が家では俺が中学生の頃(1970年前後)、母特製の恵方巻を食べていた。ポークソーセージ、卵焼き、胡瓜を具材にした巻き寿司は、俺にとってのソウルフードで、節分以外でも折に触れ食卓に上った。引き継いでくれた妹が死に、食べる機会がなくなったことが寂しくてならない。

 名護市長選挙で、辺野古移設反対を訴えてきた現職が敗れた。自公と建設業界がタッグを組んで争点を隠した結果といえるだろう。同一の視座で沖縄と繋がるのがパレスチナだ。NGOの一員として当地で様々な活動に関わっていた知人によれば、欧米メディアがテロリスト扱いしているファタハやハマスは、相互扶助組織として機能している。リベラルや左派には「組織力に負けた」が口癖の人がいるが、組織を作れなかった者の遠吠えに過ぎない。

 シネマート新宿で先日、韓国映画「操作された都市」(2017年、パク・クァンヒョン監督)を見た。ソールドアウトのスクリーン2(定員60)は女性サービ
デーでもあり、男性は1割ほど。20~60代の韓流ファンの女性が詰めかけていた。主役のクォン・ユを演じたチ・チャンウクはドラマで活躍してきたイケメンで現在、入隊中という。

 韓流エンターテインメントは欧米作品を上回る質を誇っている。今年の映画初め「キングスマン: ゴールデン・サークル」は想定内の完成度だがプラスαはなく、「操作された都市」と比べてインパクトは感じなかった。

 主人公のクォンはテコンドー韓国代表チームから追放され、現在はネット喫茶に入り浸るフリーターだが、母はまだ息子の再起に期待を掛けている。クォンは〝神〟と崇められるゲーマーで、一度も会ったことがない仲間の信頼を勝ち得ている。技術に加え、チームを助ける犠牲的精神が理由だ。

 社会の片隅で生きるクォンが窮地に陥る。身に覚えのない少女暴行致死事件の犯人として終身刑の判決を言い渡され、凄まじい暴力が支配する刑務所に収監される。前半はクォンの絶望的な状況に暗澹たる気分になるが、むろん、後半に鮮やかでエキサイティングな展開が用意されている。

 絶体絶命のクォンに手を差し伸べたのはゲーム仲間だ。ヴァーチャルの世界における格好いいキャラと現実の姿に落差はあるが、隊長クォンへの友情は揺るがない。とりわけ魅力的なのはヨウル(シム・ウンギョン)だ。対人恐怖症で身近な仲間にも携帯で話すヨウルは卓越したハッカーで、事件の真相に迫っていく。

 冒頭とラストのクォンのモノローグで、チョン・サンビョンの詩の一節が語られる。自分たちフリーター、アウトサイダーは<腐った木>なのかと自問自答し、<腐った木ではなく、青い空に枝を展開して伸びていく木>と結ぶ。本作では他の韓国映画同様、<腐った木>の実態が描かれている。

 韓流エンターテインメントのベースになっているのは、政官財に司法が加わった複合汚染への憤りだ。クォンだけでなく複数の若者を冤罪に陥れたのは有力政治家、財閥トップ、そして彼らの意のままに動く検察と警察だ。彼らを操る黒幕は闇勢力とも繋がり、クォンを追い詰めていく。

 カーアクションを含め、息をのむシーンの連続で、痛快なラストにカタルシスを覚える。各キャラの説明不足は否めないが、続編を準備しているのかもしれない。<青い空に友情という枝を展開して伸びていく木>……。感想を述べるとこんな感じになる。

 平昌五輪が始まる。夏季大会には興味はないが、ジャンプやスケートは機会があれば見るつもりだ。
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