酔生夢死浪人日記

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「幕末太陽傳」~フランキー堺の魅力

2006-08-23 02:28:46 | 映画、ドラマ
 今回もフランキー堺の主演作について記したい。ミクシィ日記の焼き直しだが、前稿からの流れで読んでいただければ幸いである、

 フランキー堺は進駐軍相手のジャズドラマーとしてキャリアをスタートした。邦画史の残る「幕末太陽傳」(57年、川島雄三)で主役を演じた後は、「駅前シリーズ」で森繁久弥、伴淳三郎と共演し、喜劇俳優としての地位を確立する。

 「幕末太陽傳」は「居残り佐平次」をベースに、「三枚起請」、「品川心中」、「芝浜」らの廓噺を織り交ぜ構成されている。各演目の味を生かすだけでなく、テンポとリズムを増してシャープなストーリーに仕上がっている。黛敏郎の音楽も効果的だ。自由人のフランキー堺は、劇中で演じた佐平次と重なる部分が大きい。

 佐平次が居残った遊郭で、勘定を払えぬ高杉晋作(石原裕次郎)が「人質」になっていた。佐平次と高杉との交遊が、作品の肝になっている。50年代は武装闘争から太陽族まで、怒れる(イカレた)若者たちが闊歩していたが、彼らを志士に投影する意図も制作サイドにあったはずだ。

 佐平次の機転で難題は次々解決し、高杉たちの計画も上々の首尾となる。コメディータッチに影を落とすのが佐平次の苦しげな咳で、ラストも暗示的である。高杉は維新を迎えることなく肺結核で夭折している(享年27歳)。佐平次にうつされたのかもしれない(バカな!)。

 「幕末太陽傳」は川島雄三監督の日活最後の作品だった。日活は作家性より人気スタ-を上に置く風潮があり、川島監督も上層部と軋轢を抱えていたようだ。本作の豪華なキャスティングも、スターシステムの日活らしい。フランキー堺、裕次郎に加え、小林旭、二谷英明が志士役、南田洋子、左幸子がきれいどころと、キラ星の如き若手俳優が名を連ねている。脇を固めるのは金子信雄、西村晃、小沢昭一、殿山泰司ら個性派たちだ。

 脚本&助監督担当は若き日の今村昌平監督だ。「豚と軍艦」(61年)でのパワフルな演出に本作の影響が窺える。日活デビューながら、今村監督は自由に映画を撮ることを許されていたのかもしれない。初期の「盗まれた欲情」や「果てしなき欲望」も、タイトルこそ太陽族映画だが、松竹ヌーベルバーグに引けを取らない意欲作である。

 リアルタイムでフランキー堺に接したのは、ブラウン管を通してである。「赤かぶシリーズ」の柊検事役、「霊感ヤマカン第六感」の名司会者ぶりが記憶に残っている。桂文昇の噺家名を持ち、俳句をたしなんだ。写楽研究家としても有名で、晩年には大阪芸大教授として舞台芸術の講座を持っていた。実に多彩で幅広い。フランキー堺ほど人生を満喫した者はいないのではなかろうか。

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