先日早朝、何となくつけたテレビに仁鶴が映っていた。「恋煩いなんて、今じゃ死語かもしれませんな」と枕で振り、お題の「祟徳院」に流れていく。片思いに悩む若旦那を描いた噺である。「恋煩いねえ」と独りごちた。俺が何度もかかった病気である。もともと妄想体質の上、生身の女性を知る前にヘッセや福永武彦を読んだのがいけなかった。
今の若者はどうだろう? ある調査によると、10代後半男子の携帯所持率は97%、アドレス登録数は70人強、メール送受信数は一日30通という。女の子とのやりとりも多いはずで、異性を知る機会が増えれば、余分な幻想を抱かなくても済む。恋煩いが死語になっていても不思議はない。
さて、屈折したアナログ中年が反省を込め、デジタル少年にエールを送ってみよう。
その一。「メールの時間があったら本でも読め」とか「真の絆は携帯では得られない」とか、もっともらしいことを言う大人は無視すべし。親であれ教師であれ、40歳以上の人間には国を傾けた責任がある。失敗者に説教する資格はない。
その二。知識は、それを生活の糧にしない限り屁の役にも立たぬ。それに、女は大抵、知性で男を選ばない。だから、机上の知識は身に付けるな。真の知識は行動によってのみ獲得される。部屋で読書するなんぞ、化粧するのと同じ次元である。
その三。生きていく上で最も肝心なことは、自己表現力と他人との正しい距離感。メールこそ両方を学べるツールなのだから、もっともっと励むべし。
彼らは上の世代のツケを払う損な役回りである。今世紀半ば、日本は3分の1以上が老人という人口構成になるという。予測通りなら点滴国家だ。労働力確保のため移民国家に転じるべきという意見もあるが、いずれにせよ舵取り役は携帯世代。新たな知恵と奮闘に期待したい。
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