酔生夢死浪人日記

 日々、思いついたさまざまなことを気ままに綴っていく

ワールドカップを政治的に楽しむ

2018-06-16 11:18:45 | スポーツ
 安倍政権に忖度する官僚は不起訴になり、首相の知人である記者は強姦罪を免れた。刃向かった籠池夫妻は下獄する。東京高裁が11日に下した袴田巌元被告の再審請求棄却も、この国の司法の歪みを端的に示している。静岡地裁が再審開始の根拠とした本田克也筑波大教授の最先端技術による鑑定に、高裁は疑義を呈した。

 別稿(今年4月9日)で紹介した映画「獄友」(18年、金聖雄監督)では、獄中で精神を壊された袴田さんが石川一雄さん(狭山事件被告で再審請求中)、桜井昌司さん(布川事件で無罪確定)らの励ましによって回復し、将棋をツールに周囲と繋がっていく過程が描かれていた。仲間と支援者に囲まれている〝不屈のボクサー〟が挫けることはないだろう。

 この10年、国を挙げて応援するスポーツイベントに忌避感を覚えるようになった。出征兵士のように選手を送迎する風潮に我慢がならないから、夏季も冬季も五輪は殆ど見ない。ロシアW杯が開幕したが、〝サッカーの祖国〟が出場しないので白けている。オランダが精彩を欠いている理由を考えてみた。

 第一に、アヤックスの選手育成ノウハウが模倣され、常識になってしまったこと。バルセロナがその典型だ。第二に、〝多民族〟がトレンドになったこと。スリナム系選手の運動能力が貢献してきたが、ドイツにしてもゲルマン魂なんて今は昔、ポーランドやトルコからの移民が多く招集されている。優勝時のフランスも旧植民地出身選手がチームの核になっていた。

 多様性が重要な意味を持つのはサッカーに限らない。日本でも陸上、柔道、テニス、卓球と躍進著しい競技では、様々なDNAを受け継ぐ選手が台頭している。今回の代表はフレッシュさに欠けるが、いずれ目に見える変化が起きるだろう。

 臍曲がりゆえ、世間と別の視点でW杯を楽しむことにして出場国をチェックした。オランダの代わりというわけではないが、隣国ベルギーのダイナミックなサッカーは魅力的だ。バルガス・リョサの出身国ペルーにも頑張ってほしい。

 政治とスポーツは切り離せない。思想信条で二つの国をピックアップした。俺はグリーンズジャパンの会員だが、友党グリーンズレフトのヤコブスドッテイル党首が昨年11月、アイスランド首相に就任した。民主度ランキングで世界2位に評価されており、オルタナバンドの最高峰シガー・ロス、そしてビヨークを生んだロックの聖地でもある。外交力を駆使してアメリカの軛を逃れ、非武装中立を宣言した〝奇跡の国〟コスタリカにも共感を抱いている。

 ベルギーはFIFAランキング3位、ペルーは11位で下馬評も高い。〝負けるな一茶。これにあり〟の心境で応援するつもりだったアイスランドとコスタリカだが、〝やせ蛙〟ではなかった。アイスランドは22位、コスタリカは23位だから、決勝トーナメント進出の可能性は十分だ。
 
 応援したくない国の筆頭は、アメリカと並ぶ横綱クラスのテロ国家ロシアだ。開幕戦でそのロシアに惨敗したサウジアラビアも然りで、アメリカを後ろ盾にイエメンで非人道的な無差別空爆を行っている。出場していないイスラエルと並ぶ大関クラスのテロ国家といえるだろう。

 1974年ドイツW杯決勝は、俺の人生に絶大な影響を及ぼした。革新性と美しさで心を鷲掴みされたオランダがドイツに敗れた時のショックは今も消えない。勝ったベッケンバウアーはその後も、「勝った者が強いのだ」と主張している。敗れたクライフは「美しく負けることを恥じるべきではない。無様に勝つことこそ恥なのだ」と美学を語り続けた。

 あれから44年……。来し方を振り返れば、俺は無様に負け続けた。だが、ピリオドを打つのは早い。美しくは無理だが、溌剌と老いていきたい。ポルトガルとスペインの死闘を観戦しながら本稿を書き終えた。政治抜きに楽しめる素晴らしい内容だった。
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