酔生夢死浪人日記

 日々、思いついたさまざまなことを気ままに綴っていく

新譜&グラストンベリー~秋の夜長にロックを愉しむ

2014-09-18 23:39:17 | 音楽
 10日以上前だが、仕事先の先輩Yさんがフェイスブックで、若い世代の音楽の聴き方に疑義を呈していた。フェスなどでメッセージを発信するミュージシャンを批判するツイッターに、同意のコメントが幾つも寄せられていたからだ。槍玉に挙がっていたのは、反原発を訴えるクロマニヨンズや斎藤和義である。

 ロックの原点はメッセージのはずだが、体制に「NO」を突き付けるのは、欧米でも勇気がいる。ブルース・スプリングスティーンでさえ〝社会主義的〟と見做され、干された時期があったほどだ。〝イスラエルタブー〟は絶対で、ガザ攻撃を批判したビッグネームはエディ・ヴェダー(パール・ジャム)ぐらいである。パール・ジャムはチケットマスターやレーベルと闘って勝ち残った希有なバンドだから、恐れるものなどない。

 今年前半はロックと疎遠になっていたが、思い出したようにCDを買っていた。涼しくなって聴き込んでいるのは、インターポールの「エル・ピントール」とヴァインズの「ウィキット・ネイチャー」だ。秋の夜長に馴染む音で、後者は俺にとって年間ベストワン候補である。

 インターポールはアメリカ出身だが、<ポストパンク・リバイバル>に分類されるようにUKニューウェーヴ色が濃い。ジョイ・ディヴィジョンの影響が窺えるダークでメランコリックな音に、20代の心の風景が甦ってくる。俺にとってロックはあの頃、生きるための必須ビタミンだった。

 ヴァインズには驚かされた。15年以上のキャリアを誇るベテランだが、6thアルバムは初期衝動、繊細さ、煌めきに満ちている。30代後半でこんな音が出せるとは、魔法としか言いようがない。クチクラ化した俺の血管に、爽やかに染み渡っていく。

 ヨーロッパの大学生にとって、夏季休暇の一番の楽しみは何か……。アンケートの1位はロックフェスである。欧州全域で毎週末に開催されるフェスをはしごする若者は多いが、最大のイベントといえばグラストンベリーだ。スカパーでオンエアされたグラストンベリー'14の総集編(5時間)を通して見た。

 アーケイド・ファイアで始まり、ジャック・ホワイトで終わる。中締めはメタリカでMGMTも大受けと、製作したBBCは〝非英色〟を前面に出していた。オンエアされたのは一握りだが、数組をピックアップして感想を記したい。紹介しきれなかったアーティストについては、別稿で触れることにする。

 フジロックで見るはずだったアーケイドだが、バッティングしたマニック・ストリート・プリーチャーズの方を選んだ。マニックス一家に草鞋を脱いでいる以上、裏切るわけにはいかなかったからである。

 アーケイドは雑食性のモンスターだ。正式メンバーは7人だが、20人以上の大編成でステージに立つ。ロマの楽団といった趣で、寸劇やおふざけもあり。学芸会で初めて舞台に立った少年のときめきを忘れていない。フロントマンのウィン・バトラーはポン引き、奥さんのレジーヌ・シャサーニュは場末のクラブママといった雰囲気だ。チープさを漂わせながら、その実、緻密に構成された斬新かつ高度な演奏で、大観衆とともに祝祭空間を創り上げる。

 締めのジャック・ホワイトはアーケイドと志向が逆で、鋭く激しく、ロックの骨組みを浮き彫りにして、観衆を高揚させていた。2枚のCDを絶賛したフォスター・ザ・ピープルはライブ映えするバンドだった。キャッチーな曲、隙のない演奏、ルックスの良さを兼ね備えたフォスターは、デペッシュ・モード級に大化けするかもしれない。

 この年になって女の子うんぬんも大人げないが、続々と降臨するロックディーバたちに胸がときめいた。美人3姉妹のハイム、ラナ・デル・レイ、エリー・ゴールディング、ロンドン・グラマーのハンナ、チャーチズのローレンetc……。才能、美貌、個性を併せ持った女の子たちが、世界最高の舞台で輝いていた。

 スコットランド独立を問う国民投票の結果があす判明する。ミュージシャンの間でも意見が分かれているようだ。反グローバリズム派なら賛成というわけでもなく、行き過ぎたナショナリズムを危惧する声もある。独立となれば欧州全土、そして沖縄にも波及するだろう。
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