酔生夢死浪人日記

 日々、思いついたさまざまなことを気ままに綴っていく

ミューズ、落語にシュルレアリスム~お盆の夕べの清涼剤

2013-08-18 20:35:35 | カルチャー
 安倍首相は戦没者追悼式で、6年前(1次政権時)に自身も言及したアジア諸国への加害責任、不戦の誓いを式辞から省略した。欧米諸国の日本への視線は、さらに厳しくなるだろう。オバマ政権が送り込んだキャロライン・ケネディ駐日大使は、リベラルとして知られる。〝日本の右傾化ストッパー〟としての任務を果たせるだろうか。

 イスラエル高官が「広島と長崎への原爆投下は日本の侵略が招いた結果で、独り善がりの追悼式典にうんざりしている。日本が追悼すべきは、侵略や虐殺の犠牲になった中国人や韓国人だ」(論旨)とフェイスブックに書き込んだ。麻生財務相のナチス発言への意趣返しとみる識者もいるが、戦時の加害と被害は、時代を経ても論争の的になる。

 ナチスを育んだ反省を踏まえ、ドイツはイスラエルに寛容だった。この空気を破ったのが、親衛隊入隊の過去を告白したギュンター・グラスで、被害の刃をパレスチナへの加害に反転させたイスラエルを許してはならないと訴えた。ユダヤ人であるノーマ・チョムスキーも、イスラエルによるジェノサイドに厳しい批判を繰り返している。

 あれこれ考えさせられたお盆の日々、清涼剤、癒やし、和みになったのはミューズ、落語、シュルレアリスムだ。

 サマソニには食指が動かなかったが、単独公演ならとミューズの単独公演(ZEPPダイバーシティ)をダメ元で申し込んだら、チケットをゲットできた。2階席には同世代の姿もチラホラあったが、ファン層はとにかく若い。

 最初の40分間は01年のZEPP東京公演を彷彿させる選曲で、蒼い衝動と憤懣を前面にパンキッシュな音を奏でた。いったん引っ込み、すぐにステージに登場するや「アップライジング」~「タイム・イズ・ランニング・アウト」~「プラグ・イン・ベイビー」とお馴染みの曲が続いたが、3曲でメンバーはステージから去る。

 欧州でスタジアムツアー、アメリカでアリーナツアーを敢行するほどになったが、初期のミューズは研ぎ澄まされた肉体性と、おバカといっていいサービス精神で勝負していた。1部で見せたのが前者なら、2度目のアンコールで見せたのが後者である。この日のライブは、いずれDVD化されるという。ご覧になる方は、エンターテインメントに徹した姿勢に驚くに違いない。

 レア曲満載のセットリストは世界中で垂涎の的になったが、1時間20分はあまりに短く、照明が灯っても立ち尽くすファンは多かった。ちなみにミューズは昨日、ソウルでのサマーフェスに出演した。日本で撮影したPV「パニックステーション」の冒頭に挿入されていた旭日旗のカットを、抗議を受けて削除したことが話題になったが、Youtubeにアップされた映像では、経緯を水に流し、ミューズを熱狂的に迎えた韓国ファンの様子を見ることができる。

 「鈴本夏まつり」は柳家さん喬と柳家権太楼が交互でトリを務めるお盆興行で、立ち見も出る盛況だった。当日のトリは権太楼で、「鰻の幇間」は客に取り入ったつもりの幇間が痛い目に遭うコミカルな筋立てで、キャラを演じ切る力業に魅せられた。軽妙なさん喬、間の取り方が抜群の柳家喬太郎は師弟関係という。

 上方から参上した霧の新治の言葉遣いに、京都生まれの俺はノスタルジックな気分になった。音色入りの「七段目」は芝居噺で、続いて上がった紙切りの正楽は、客席からのリクエストに応え、演目のオチを神業の手さばきで創作していた。寄席に足を運ぶたびに新たな個性を発見できるのは、初心者の特権といえる。

 ギラつく日差しの下、よろけながら方南通りを歩いていると、「遊ぶシュルレアリスム」のポスターが目に入った。避暑でアート鑑賞とは不純だが、「東郷青児美術館」(損保ジャパンビル42階)を訪れた。美に疎い俺は美術館とご無沙汰で、25年ほど前の「Bunkamuraミュージアム」以来になる。

 20世紀初頭からダダイズム、表現主義、構成主義、ロシアアヴァンギャルド、そしてシュレアリスムと幾つものムーヴメントが台頭し、時に政治も絡んで交錯していたが、俺には正直、区別がつかない。当展を鑑賞するまで、〝シャガールはシュルレアリスムの画家〟と勘違いしていたが、構成主義、ロシアアヴァンギャルドの潮流に属しているようだ。

 若いカップルが仲良く鑑賞し、美大生らしき男の子が解説役を務めていた。横の女の子が頷き、その背後で俺が感心するという、シュールというより奇妙な光景がしばし続いた。蓄積のない俺だが、現実と非現実の境界を、遊び心でモノクロームに表現するのがシュルレアリスムの出発点らしい。

 肖像写真家に分類していたマン・レイがシュルレアリストだったり、小泉八雲の「怪談」に触発された作品があったり、多くの日本人が関わっていたりと、同展でインプットされた知識は多少ある。とはいえ、アートや美術に親しむツールは<感性>だ。心身を活性化させるためにも、たまには美術館を訪ねてみることにしよう。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする