酔生夢死浪人日記

 日々、思いついたさまざまなことを気ままに綴っていく

「スーパーサイズ・ミー」~体を張った警告

2007-07-20 00:25:45 | 映画、ドラマ
 米国産牛肉、不二家、あらゆる中国産、ミートホープの牛肉偽装と、食の安全を脅かすニュースが相次いでいる。18日にはマクドナルドで販売中の牛乳が大腸菌群混入の恐れありとして、自主回収された。

 今回は、そのマクドナルドをめぐって物議を醸したドキュメンタリー「スーパーサイズ・ミー」(04年)を紹介する。先日シネフィル・イマジカで2度目の視聴と相成った。本作で注目を浴びたモーガン・スパーロックは、「30デイズ」シリーズ(WOWOWで放映)でテレビ界にも新風を吹き込んでいる。

 スパーロックは自らをサンプルに、<マクドナルドを一日3回、30日間食べ続ける実験>を行い、心身の変化をカメラに収める。「スーパーサイズにしますか」という店員の提案を呑むこともルールに含まれていた。本作が反響を呼び、マクドナルドは「スーパーサイズ」をメニューから外している。

 実験の結果は深刻だった。健康体だったスパーロックだが、体重は11㌔増え、総コレステロール、中性脂肪、GPTなどあらゆる数値が危険水域に達する。本作へのネガティブキャンペーンは凄まじかったが、スパーロックの目的はマクドナルド告発ではない。莫大な宣伝費で子供たちを洗脳し、給食にまでファストフードが入り込んでいる実態に警鐘を鳴らしたかったのだ。

 スパーロックはエリック・シュローサー著「ファストフードが世界を食いつくす」(草思社刊、01年)にインスパイアされたに違いない。同書はファストフードの伸張が及ぼした影響を、あらゆる角度から分析している。レーガン政権下で反トラスト法が棚上げされ、農業で寡占化が進行した。追い詰められた家族経営の農場は、食肉メジャー傘下に入らざるをえなかった。ファストフードに食材を提供している養鶏業者の年収は、1万2000㌦程度に抑えられているという。

 「30デイズ」シリーズを貫くのは、スパーロックの人間に対する信頼だ。俺は勝手にスパーロックを、真のアメリカンドリームを希求したキャプラの継承者と位置付けている。<対極の価値観を持つ者が30日間生活をともにし、思想信条の変化を探る>がシリーズの基本パターンだが、スパーロックは<相寄る魂>が対立を乗り越える過程に迫っている。

 俺も30代の頃、無意識のうちに実験を行っていた。運動もせず肉類、ジャンクフード、炭酸飲料、アイスクリームを貪り食っていた。影響は精神にも及び、脱力感と無気力に苛まれていたが、40代突入とともにライフスタイルを変えた。ウオーキングを始め、余分な糖分を控えた結果、数値は少しずつ下がっていった。あれから10年、節制は多少緩んでいるが、ウオーキングは生活の基本リズムになっている。

 本作を見て、急にマックを食べたくなった。全くの逆効果である。俺のファストフード利用頻度は月2~3回だが、年齢を考えると多い部類かもしれない。そういや今日から、メガマックが限定販売される。旨いも何も、大き過ぎ、食べているうちに冷めてしまうのだが……。


コメント (2)
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