酔生夢死浪人日記

 日々、思いついたさまざまなことを気ままに綴っていく

三途の川への渡し舟?~アメリカ牛の危険な話

2005-06-11 02:04:24 | 社会、政治

 昨日(10日)、ジョハンズ米農務長官のコメントがBS1のニュースで紹介されていた。<アメリカ政府は消費者の健康を第一に考えている。一昨年12月以来、国内でBSE感染牛は見つかっていない。日本の輸入再開に向け全力で取り組んでいく>……。成長ホルモンを投与された米国産牛はEUなどに輸出できない。日本への圧力が一層強まることは間違いないだろう。
 
 この間の経緯は朝日新聞のHPでも「BSE問題特集」としてまとめられているが、どうもしっくりこない。ここ数日、北海道で2頭の感染牛が確認された。疑ってかかる必要もあるが、1年半の間、BSE感染が見つかっていない(見つけていない?)米国産牛同様、和牛の安全性も懸念せねばならなくなる。

 <O―157こそ米国産牛輸入問題の本質である>というのが俺の推論だ。門外漢の妄想かもしれないから訂正しよう。<BSE同様、O―157も米国産牛輸入問題の本質である>と……。ブログに書く以上、裏付けが欲しい。格好の味方といえるのが、エリック・シュローサー著「ファストフードが世界を食いつくす」(草思社、2001年)だ。

 日本におけるO―157騒動では、カイワレ大根やイクラが「逮捕」されたが、本家アメリカでは事情は異なる。「主犯」はあくまで牛肉なのだ。他の食品がO―157に汚染されていても、どこかで牛糞に触れたことが原因と考えられている。O―157は最も著名な菌だが、ベロ毒素を作り出す変異体は数十種類に上るという。

 <約20万人が食品由来の病気にかかり、うち900人が入院し、14人が死亡している>……。これは同書からの引用(270㌻)で、<>内の数字は一日当たりの統計だ。普通の国なら政府主導で調査や回収が進められるはずだが、実情は大いに異なる。情報は開示されず、食肉メジャーと結びついた共和党政権が、徹底的な検査や抜本的な改革にストップを掛けている。

 筆者は米国産牛を取り巻く不衛生な環境を、政府機関に身を置く者の証言や科学者の分析を交えて告発している。米国産牛の80%は肥育のため、猫や犬の死骸まで含まれた畜産廃棄物を与えられているという。草食の牛がタンパク質を与えられれば、想像を超えた病原菌が醸成される危険性もある。同書は秀逸な「ダークサイド・オブ・アメリカ論」であるばかりか、説得力あるホラーなのだ。

 同書では、ファストフード産業の伸長によるアメリカ社会の変容を、あらゆる角度から分析している。レーガン政権で反トラスト法が棚上げされ、農業でも寡占化が進行した。家族経営の農場は衰退の一途を辿り、負債を抱えて自殺するカウボーイが後を絶たない。食肉メジャーの傘下に入った養鶏場経営者の年収は1万2000㌦程度という。ちなみに、マイケル・ムーアの「ザ・ビッグ・ワン」に登場するブックチェーンの店員の年収は1万㌦を切っていた。

 前々項で「心は孤独な狩人」(マッカラーズ)を紹介したが、作品中のブラウントの言葉が甦った。<南部人の少なくとも三分の一は、ヨーロッパのファシスト国家の最下等農民と選ぶところのない暮しをし、死んでいく><そのほかにもっとひどい悪がある。(中略)大衆には、真理が見えない。毒のある嘘のために、彼らは知ることも許されてないんだ>……。ファストフード業界の劣悪な労働条件、農民や牧場主の疲弊、食品汚染の実態と国家的隠蔽が、「ファストフードが世界を食いつくす」で詳述されていた。マッカラ-ズの言葉は脱稿後70年を経ても、真実を穿っているように思えてくる。

 対米協調の小泉政権だが、米国産牛については何とかストップを掛けてきた。いずれ輸入再開になるだろうが、その時は自力でわが身を守るしかない。俺みたいな六無斎など野垂れ死んでも悲しむ者はいないが、家庭のある人、教育機関や福祉施設で働いている人は、牛肉は生産地をチェックしてから購入するなど、慎重に対処してほしい。

コメント (1)
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