弱い文明

「弱い文明」HPと連動するブログです。 by レイランダー

池袋で立ち往生の巻

2008年02月03日 | プレカリアート
 昨日の深夜、新宿での飲み会の後、会の人達と一緒に駅前の屋台のラーメンをすすっていたら、頭の上に粉雪がちらちらと落ちてきた。風流なことよ、などと僕は喜んだけれど、一緒にいた人の中には、翌日飛行機で帰る、あるいは出張に行かなければならない人もいて、飛行機飛ぶかなー、と心配していた(実際、飛ばなかったという連絡を受けている)。
 乗り換えの池袋で終電車に乗って、自宅まで帰った。朝、というか昼前、目覚めると窓の外は雪景色だ。当然ながらめちゃめちゃ寒い。
 しかし無事に家まで帰って、暖かい部屋の中からそれを見ていられるというのは、マジで幸福なことだ。というのも、先月に行った同じグループの飲み会の帰りに、僕は池袋で終電に乗りそこない、えらい目にあったばかりなのだ。それで、生々しくそう感じざるをえないのである。

 終電に乗りそこねたことは何度かあるけれど、たまたまその夜は貯金から下してくるのを忘れたので、余分なお金の持ち合わせがなかった──電車賃を除いて、500円くらいしか残っていなかった。帰れさえすれば、別にそれが問題になることもなかったのに、乗りそこなったことで、朝まで安穏と過ごす場所がないという現実にぶち当たった。
 1000円くらいあれば、ネットカフェあたりで始発まで待機できるのに、それに足りない。朝まで営業している喫茶店を見つけて、入り口で店員に聞いたら、コーヒー一杯750円(深夜料金)。これでも、電車賃が足りなくなる。
 友人の所に泊めてもらう手も考えたが、まだ運行している路線沿線の友人は、家族がいるからさすがに気が引ける。ちょっと遠い所にいる、車持ちの友人に来てもらおうかと思って電話したが、つかまらない。
 後日人から聞いて、最近はコンビニによっては郵便貯金(僕はこれしか持っていない)でも24時間引き下せる場所がある、ということを知った。そういえば自分でも、夜7時か8時くらいに引き出したことが過去にあった。しかし、この夜はなぜかそれが思いつかなかったのである。いい歳こいて何やってんだか・・・・。

 結局、あと3~4時間も待てば始発だからと観念して、駅地下構内で本でも読んで待つことにした。
 ところが、柱を背に座って、読みかけの本を開いたと思ったら、駅員達が巡回にやって来て、追い出されるはめになった。夜中1時には、店だけでなく、地下への出入り口もすべてシャッターを下してしまうという。
 うかつだった。そうだ、そういうことをやるんだ。でも・・・・今そこここに座り込んでる、あのホームレスの人達は?と聞くと、あの人達も出て行ってもらう、抵抗するなら警察に頼んででも、だと。そういういわけで忙しいんだから早く早く、と追い立てられる。
 僕のような「乗り遅れ組」をまず追い出して、それから路上生活者の排除にとりかかるという手順だろうか。その様子を見届けることはできなかったけれど、何人かの路上者は、いつものことらしく、僕よりも先にすごすごと荷物を抱えて出口に向かっていた。数人の警官と、それを相手に口論していたワイルドな酔客も、一団になって。

 風俗店が多い北口に出たところで、雑居ビルの扉の前に、ダンボールの壁で囲った路上者のおっさんがあぐらをかき、頭を垂れて寝ていた。その脇を抜けて、ガラス扉を押して中に入ったエレベーター前の空間は、とりあえず寒気は入ってこないので、そこで一休みすることにした。
 座り込むとすぐに、さっきまで一緒に飲んでいた人から電話が来た。「まいりましたよ~」などと苦笑しながら話していていると、その僕の声で目を覚ましたらしい、入り口の路上者のおっさんが、「おまえなんで勝手に入ってるんだ。不法侵入だぞ」と怒鳴り込んできた。
 きょとんとしていると、おっさんはたいそうな剣幕で、酔っ払いとかが入ってこないように見張るのが俺の役目だ、みたいなことを言う。とりあえずまた外に出た。
「ここでゲロとか吐かれると困るんだよ。だから見張ってんだよ」
「あー、つまり雇われてるんですか、このビルのオーナーに?」
「うるせえな。とにかく出てけ」
「あの、ちなみに聞きたいんだけど」
「いいから出てけって」
「いや、ここって、管理人室みたいのはないんですか?」
「あるよ・・・」
「あるんですか。あるならなぜそこに・・・」
「いいんだよ、そんなことは!」
「いや、よくないとおも」
「うるせえんだよ、早く出てけって」
「だってそれはちゃんと要求した方が」
「だからいいんだよ俺のことは!早く行ってくれって!」
気がつくと、扉の向こうの地下に続く階段のあたりに、白いつなぎのような制服を来た男が立ってこちらを見ている。あれが本当の管理人?──とにかく、おっさんがほとんど懇願する調子にもなってきたので、迷惑をかけぬよう、退散することにした。

 それからレンタルビデオ屋→コンビニ→別のビデオ屋→別のコンビニという具合に、入り浸って時間をつぶした。タダで過ごせる暖房の効いた場所というと、それくらいしかなかったからだ。

 4時過ぎには駅地下のシャッターも開くと駅員から聞いていたので、駅に戻った。
 地下構内には、すでに通路の両側に総勢30人以上の路上生活者が戻って眠っていた。かなり若そうな人も少し混じっている。寝つかれず、上半身を起こしたままの人もいる。
 一人、路上生活初心者みたいに見える、こざっぱりした身なりのおじさんが、横になる準備をしながら「本当にここで寝るのか?おれが?」と、まだ信じられないというような、とまどいを顔にあらわしていた。
 雑居ビルの扉のところに陣取っていたおっさんを思い出した。一体、いくら貰っていたのだろう。ビルの中ではなく、玄関の前で夜を明かすという契約を結ぶことによって。警察も、ああした馴れ合いの搾取構造には目をつぶっているに違いない。
 僕があそこを追っ払われたのを、いわゆる「弱者が弱者をいたぶる」構図と捉えるのは少し違うだろう。僕は(少なくとも今は)一夜限りのホームレスに過ぎない。その意味では、明らかにおっさんの方が僕より「弱者」だ。
 ただ、僕はとうていあんな風には生きていけない。いいも悪いもなく、僕には無理だ。歴然たる犯罪者になってでも、屋根のついた暖かい所(たとえば監獄)に逃げ込む方を選ぶだろう。まず精神的にはおろか、肉体があっさり根を上げるだろう。その意味では、おっさんの方が強い、と言えなくもない。だから──だからどうしたっていうんだ。誰も、何も、納得なんかできやしない。

 雪景色を見ていると、またあの夜のことが思い出される。乗りそこなったのが昨夜でなくて、まだしもだった。
 それにしても、冬の間くらい、駅地下を開放してくれたってよさそうなものだ。汚されたら困るとか、治安が心配とかいうなら、路上生活者の中から志願者を募って見回り隊のようなものを作らせ、掃除なんかも必要に応じてやってもらい、その分の報酬を自治体が払えばいいではないか。時には終電に乗り遅れたサラリーマンや学生と、路上生活者が寝ころがって雑談をする、そんな光景が生まれてもいいじゃないか。というか、それで何が悪いのか、頼むから誰か教えてくれ。
 ちょっと融通を利かせれば、みんなが楽になるのに──その文脈で紹介していいものかどうかわからないが、去年出た湯浅誠さんの『貧困襲来』は必読の本である。「貧困とは単にお金がないというだけでなく、“溜め”がないこと」というその定義を応用すれば、日本の社会はそれ自体が“溜め”を失っている、“溜め”を減らし続ける現代化モデルを追及している、とも言える。
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2 コメント

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Unknown (淫靡な手作業)
2008-02-18 19:24:30
あ~…



痛いのお

俺のオメコが割れて痛いの。



あ~電気を流してぇ

オメコに電気を流してぇ
Unknown (レイランダー)
2008-02-19 01:39:11
シュールでおもろいから残す。

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