弱い文明

「弱い文明」HPと連動するブログです。 by レイランダー

自由と生存のメーデー’07~集会編

2007年05月02日 | プレカリアート

 4月30日、自由と生存のメーデー’07に参加してきた。
 まず大久保地域センター内において「宣言集会」、それから外に出て、スピーカー積載のトラックの後に続く「サウンドデモ」、再び大久保地域センターに戻って「交流集会」、という三部構成の内容だった。

 僕自身、(ここでは詳しい話は割愛させてもらうが)パート職員の一種で、(自腹を切る以外の)社会保障などほとんどないに等しい。集会に参加した人達の多くは、おそらくそんな僕よりもさらに苦労しているような人達なのだろうが、こっちはいい歳こいてるだけに、若い人より深刻な部分もあったりする。──なんてことを会場に着き、床に腰を下して早々、しゃべくるはめになった。隣に座っていたのがたまたま「AERA」の記者(女性)で、インタヴューを申し込まれたからである。よく見ると会場では、その人の他にも、NHKやTBSなんかもカメラを回していて、メディアの注目度はなかなかのもののようである。え、えらいところに来ちまった、と思った。
 かなり根掘り葉掘り尋ねられ、意見を求められた中で、僕にとってちょっとした「事件」のようなことが起きた。彼女が、こうした問題の背景の一つに、「デジタル・ディヴァイド」の問題があるとは思わないか?と聞いてきた時である。
 確かにそれはあるかもしれない、パソコンの使い方とか、ワードやエクセルの基本くらい、国が無償で講座を開設して教えてあげるのはいいことだと僕も思いますよ──みたいに言うと、彼女はそう、そう、と、我が意を得たりとばかりにうなづく*。その様子を見て、逆に僕は不安になってしまい、ええと、だけどそれは枝葉の問題に過ぎないと思う、もっと根本的な生き方とか、その生き方を保障する制度のような幹があって、あくまでそ・の・う・え・での話じゃなければ結局付け焼刃に終わるでしょう、なんて理屈を強調してしまった。強調しながら、ああ、俺はやっぱりそんなことを考えていたんだ、と、自分で半ば驚いていた。
 というのは、僕は普段、そういうことは考えるともなしに考えているだけだから。なぜ「考えるともなしに」という感じなのかと言えば、それは自分がこの問題の厳然たる当事者であるという現実を直視したくない気持ちが常に働いているからなのである。つまり、まぎれもなくワーキング・プアである自分を直視したくない。だけど、ちょっとばかり掘り下げたことを記者に聞かれて、いや、「根本的な生存の条件」こそが問題なんだ!と反射的に反応してしまうということは、それは僕にとってそれだけ切実な、長年に渡って悩まされてきた問題だからなのだ。会場に着いてしょっぱなから、そのことを思い切り意識するはめになってしまったわけである。

 だけど、それで良かったようなのだ。いざ集会が始まり、様々な活動に携わっている人達の力強いメッセージに順次耳を傾けながら、僕は自分のそうした切実な思いが、絶対に正当なものであることを確信できた。他人事のように聞いていたら、その正しさを実感することもできなかったかもしれない。
 この集会は確かに、「ワーキング・プア」の問題を正面に掲げて、フリーター全般労組などの団体が企画したものだが、もっとラディカルに「生きる」ということ、異なるもの同士が「共存する」ことを実現する運動の一部である。もっとぶっちゃけて言えば、今の社会は息苦しくてたまらない!!という思いを共有する者たちの集いだった。まさに雨宮処凛さんの新著のタイトルにあるとおり、「生きさせろ!」という思い。ただ、その思いを漠然とではなく、肌身で実感せざるを得ないのが、いわゆる「ワーキング・プア」であるということは言える。

 とにかく、すごく面白かったし、勇気づけられた。
 有名どころのゲストとしては先に挙げた雨宮さんや、社民党党首の福島みずほ議員などがいたのだが、知る人ぞ知る「高円寺一揆」の首謀者・松本哉さん、かと思えば全然無名の日雇い派遣のあんちゃんまでがマイクを握って、思いのたけを語っていた。そうした、どこにでもいるような、無名の、だけど確実に戦っている人達の話が、僕には殊更身にしみる。たどたどしい日本語で懸命に話したイラン人難民のジャマルさん、精神に障害を持ちながら働く人達の代表の方、そして僕がひざを抱えて座っている真ん前には、路上生活者のおっちゃんが寝転んでいた・・・・今の日本社会で、身の置き所がない多種多様な人達が、これほどの密度で結集した空間というのはそうそうないだろう。
 同時に、僕は深いところでつぶやかずにはいられなかった。
 ──俺たちこそが前線だ。身をよじりながら生きている、俺たちこそが最前線だ。俺たちの弱さこそが、世界を変えうる。
 
 体調その他の事情があり、交流集会後半の「分科会」には参加せずに引き上げたので、そちらの様子は僕は知らない。どこかで情報を得たいと思っている。
 次回は「サウンドデモ」の話を中心に書く。

*注
 この記者さんが、「ワーキング・プア」については「デジタル・ディヴァイド」の問題が大きい、などと霞ヶ関の官僚みたいな発想で単純化する人だった、というわけではない。それどころかもしかしたら、僕に反論させるべく、わざと誘導尋問的にこの話題を持ち出したのかも知れない。


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2 コメント

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破壊せよとアイラーは言った (BLOG BLUES)
2007-05-02 19:56:48
こんにちは。TBありがとうございます。面白い!じゃんじゃん反乱するべ。おとなしくしてたら、為政者や権力者どもは、のさばるばかりだ。続報、期待してます。
>BLOG BLUESさん (レイランダー)
2007-05-03 01:01:40
お久しぶりです、こちらこそコメントありがとうございます。「サウンドデモ編」もアップしました。読んでやってください。

尾崎豊は、2枚目までしかちゃんと聴いてないんですけど、完全に同世代で、地元も近いし、他人とは思えないところが多々ありました。
好きなのは1stの1曲目「街の風景」、これに尽きます。僕にとって、尾崎はこれだけでもう十分、おまえの言いたいことはわかった、おまえは正しい、そんな感じの曲です。

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