マンション管理組合奮闘記

とあるマンション管理組合の管理に関する行動記録です。管理会社変更で管理委託費削減に成功。組合活動の情報公開にブログ活用中

「住む人が育てる安心マンション」 (抜粋)

2006-10-01 18:59:57 | マンション交流会
今日参加した、緑区のマンションサポートセンターの交流会で、マンション管理士の方より、貴重な情報をいただきましたので、その資料を紹介させていただきます。
管理士の方も、現在、居住するマンションの理事長を務められており、我々の立場を理解した上で、これから起こりうる問題点に対して真剣に取り組まれています。

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今 当マンションは,人(=高齢化),建物(=築30年),管理(=管理会社への委託)など,いろいろな面で転機を迎えています。
 このことは,これから当マンションをどう維持管理していけば良いのかについて,さまざまなことを考えさせられます。

有馬百江さんの「住む人が育てる安心マンション」をご紹介します。
参考にしていただければ幸いです。

「住む人が育てる安心マンション」(抜粋)
有馬百江(集合住宅管理組合センター 事務局長)(岩波ブックレットNO.477)

 おまかせ主義で気楽?
「鍵1つでプライバシーが守れますよ」,「管理費と修繕積立金を毎月払っていれば,面倒くさいことはしなくても結構です。あとは管理会社におまかせください」というのが,分譲業者のうたい文句の1つです。そんな言葉に魅力を感じて,マンションを購入された方も多いと思います。
管理会社が湯水のごとく管理費や修繕積立金を使っても,管理会社からいわれるままのお金をいくらでもあなたが出せるとしたら,おまかせ主義に徹するのもかまわないでしょう。
しかし,分譲業者や管理会社が大家で,みなさんは賃貸住宅に住んでいるのではありません。一生に一度あるかないかの高い買い物をして,マンションを購入したのです。分譲マンションは区分所有者一人ひとりが大家です。
「自分ひとりぐらい協力しなくても,だれかが責任をもって維持管理をやってくれるのだろう」という気軽さは通用しません。

 どんな立派なマンションでも放っておけば老朽化する
建物は,さまざまな材料で構成されています。それぞれの材料固有の性質を安全に維持できる期間を「耐用年数」といいますが,適切な管理を怠ると,耐用年数内であっても材料の交換や修繕が簡単には行なえなくなり,回復に多額の費用を要することになります。
たとえば,よく目にするのはコンクリートのひび割れです。最初は小さなひび割れでも,雨水や空気中の炭酸ガスなどが浸入し,その影響で,だんだんコンクリート内の鉄筋が錆びていきます。さらに劣化が進行すると,錆びた鉄筋が膨張してコンクリートを押し出す「爆裂現象」を引き起こします。
そのような劣化個所を早期に発見して補修すれば,進行を早く食い止めることができます。
 建物診断はマンションの健康診断
建物は,よく人間の体にたとえられます。人間も建物も生まれた(建てられた)ときから老化が始まります。健康で長生きするには,定期的に健康診断を行ない,もし病気が発見されれば早急に治療方法を検討し,大事にいたらないようにします。
建物が治療不可能になると,その建物の寿命が尽きて,建替えということになります。昨今は築後わずか40年ぐらいで建替え計画が浮上していますが,鉄筋コンクリート建造物本来の寿命は60年から70年といわれています。
都市部における分譲マンションをとりまく建替えの条件は非常に厳しいのが現実です。建替え費用を負担できない居住者が少なくありません。 また,建築基準法改正以前に建てられたマンションの中には,現行法のもとでは再建築できないものもあります(既存不適格)。
そうであるならば,今住んでいるマンションをいかに大事に使って,長持ちさせるかを考えましょう。適切な早めの修繕は,その建物を長持ちさせるための秘訣です。そのためには,劣化状況と修繕方法を判断する材料となる定期的な健康診断が必要です。
また,長期修繕計画を作成する場合も,劣化状況を把握してはじめて,修繕をいつごろ行なうかがわかるのであり,修繕項目もマンションによって異なりますから,現地調査が必要です。

 
 長期修繕計画はあくまでも目安
分譲業者や管理会社が提出した長期修繕計画書は,修繕の根拠となる積算資料の添付もなく,一つの目安としかならない簡易なものが多く見受けられます。
ところが,目安のはずの数字がいつの間にか独り歩きして,工事時期になると,その長期修繕計画の数字がそのまま管理会社の工事見積り金額に化けている,ということもよくあります。長期修繕計画の工事金額はあくまでも概算であるはずなのに,いつの間にか管理会社の「営業材料」として使われているケースが多いのです。とくに修繕時期は,劣化状況を判断しなければ決定できないにもかかわらず,「長期修繕計画に基づいていますので」と平気で,工事実施時期をそのままそっくりに合わせてきます。
管理組合の懐具合がわかっている管理会社は,築4年目ごろから,修繕積立金を使わせることに積極的になるようです。そして,ポンプのオーバーホールに○十万円,防御フェンスに○十万円等々,次々と小規模の修繕項目を並べ立てて,次期予算案として総会に提案してきます。無関心な区分所有者が多く,ほとんどが委任状の総会では,その予算はすんなり承認されます。そうなれば,理事会が相見積もりをとるひまもないほど素早く,管理会社はその修繕を予算額で実施してしまいます。手続き上は一見なんの問題もないやり方で,あっという間に修繕積立金は消えてしまいます。10年過ぎて,いざ大規模修繕工事を計画する段になると,あるべき積立金はほとんど残っていません。

 管理組合が主人公
マンションを買う人は,自分の住む空間である専有部分だけをイメージして購入することが多く,敷地や,建物内部の廊下や階段といった共用部分も含めて購入していることは忘れがちです。しかもその共用部分の維持管理は管理会社が行うため,マンション購入者(区分所有者)が主体性をもって維持管理しようという意識が生まれにくくなっています。
どんな管理をするのかを決めるのは,管理組合つまり区分所有者です。自主管理ではこのことが実感されやすいのですが,全面管理委託では見過ごされがちです。管理会社に管理を全面委託している管理組合は,全体の約8割にも達しますが,支払ったお金に対して充分なサービスを受けるどころか,大事な修繕積立金をなし崩しに使われて,建物の保全が危うくなっているマンションも少なくありません。
しかし,そのような場合でも,管理会社ばかりが悪いとはいえず,結局のところ,主体的に維持管理に取り組むことなく,自分たちの財産を自分たちで守る意識をもたずにきた管理組合にも責任があるのです。
 無関心が悲劇を生む
管理会社にとっては,組合員の無関心さは非常にありがたいのです。お金をどのように使っても総会で質問・追及されず,決算・予算がすんなり承認されれば,管理会社が使いみちを決めることができます。
お金の使いみちをチェックする際には,できるかぎり明細を出すように管理会社に要求する必要があります。
たとえば,管理会社の作成する決算書に「定額管理費」とか「委託管理費」とよばれている項目がありますが,総額の数字だけしか出ていない場合,その中には本社経費や一般管理費とよばれる管理会社の利益に相当する金額まで含まれています。点検業務など管理会社が他の会社に再委託している業務については,再委託先とその契約内容も教えてもらうことが必要です。
管理費だけでなく修繕積立金の使い方にもチェックが必要です。
管理会社経由では2~3割高くて当たり前,極端な場合は5割高い見積もりが出てくることもあります。工事金額にもよりますが,管理会社まかせではなく,必ず3社ぐらいから見積もりをとることをお勧めします。

情報を集めよう
大事なところを管理組合がきちんとチェックし,管理会社を上手に使うためには,情報が不可欠です。
管理会社からの情報だけでなく,テレビ・新聞や書籍,管理組合の団体などから情報を集めて,マンション管理の中身をよく知ることです。そうやって得た情報は,管理会社とサービス内容や金額の交渉をする際に役立ちますし,その情報をもとに管理会社に対して情報開示を求めることもできます。
管理会社が誠実な対応をするかどうかは,管理組合がうるさいくらいのチェック機能を持っているかどうかにかかっています。

 行事だけがコミュニケーションではない
マンションは,さまざまな年齢や職業,生活パターンをもった人たちが集まって住んでいますが,何かきっかけがないと,お付き合いに発展しません。
「人と人が集まって住むにはコミュニケーションが大切だ。さあ,親睦を深めよう」と,いきなり管理組合理事が居住者に声をかけ,全然知らない者どうしが集まってお祭りや親睦会を開いたとしても,参加者も少なく,いまひとつ盛り上がりに欠けます。それはなぜでしょう。
町内会的な人付き合いが煩わしいからマンションを選んだという居住者もいますので,親睦を深めるために行事を行なってコミュニケーションを形成する,という図式はマンションには必ずしもあてはまらないと考えた方がよいでしょう。
それよりも,居住者の関心のあることを通して,話し合いの場を作っていくことが重要なのかもしれません。

 居住者の顔が見えてくれば生活マナーはよくなる
人が集まって住むためには,規則やマナーがないとスラム化してしまいます。そこに住みあわせた人が,自分たちのマンションをスラム化させないで良くしようと思わないかぎり,だれも何もしてくれません。
だれも人間関係を良くしようと思わないばかりか,集まって住んでいる意識もなく,ルール無視の空気がしだいにはびこってきます。たとえば,エントランス周辺の汚さが目についたり,廊下に唾やタンを吐いたり,タバコの吸い殻やゴミが落ちていてもだれも気に止めなかったりと,すさんだ現象が表面化してきます。
こうなると,環境の悪化はあっという間にマンション中に広がり,人間関係がすさんでいる雰囲気が外部から入ってもわかるようになり,スラム化が進行していきます。
「人心のスラム化が建物のスラム化につながる」とは,よくいったものですが,あなたのマンションは大丈夫ですか。こんな状態が目につきませんか。
 居住者の高齢化に寄り添うマンションにマンションは,鉄筋コンクリートだから半永久的に長持ちするという錯覚はもたないでください。維持管理・保全のために定期的にお金がかかります。管理組合が集める管理費と修繕積立金が適正に運用され,効率的に使われているかをチェックしなければ,将来にわたって快適なマンション居住は保証されません。
そして,その作業は他人まかせではできません。管理組合を中心として居住者が関心をもつことです。
とくに,建物と人が老いる前に,活力のあるうちに,管理組合主導のマンションを築いてください。バブル崩壊前,「終(つい)の住み家」は戸建て,マンションは「仮の住まい」と考えられていました。今,戸建てにすんでいた高齢者が,階段の昇り降りがなく,冬暖かく,周りに人がすんでいて安心というマンションの良さを感じて住み替え,マンションに「終の住み家」を求めはじめています。
高齢者が,安全で豊かに安らいで住めるマンションは,たぶん,誰にとっても住み心地の良い居住環境なのではないでしょうか。
鉄とコンクリートの塊に「ぬくもり」を入れるかどうかは,あなた次第です。


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マンション管理士からのコメントです。

この資料は,私のマンションが,昨年 自主管理を捨て,過大な期待を持って管理会社への委託を決めたときから,危機感を感じて準備してきた資料でした。
今年 理事長になり,理事会内には展開したのですが,ニュース発行のタイミングに間に合わず,マンション内には展開できないままで終わりました。

それだけに,今日 掲載されているのを見て,ようやく陽の目を見たような嬉しさがこみあげてきました。

有馬百恵さんの文章は,マンションの目指す方向がハッキリと示され,説得力を持ったいい文章だと思います。特に最後の文章は,好きです。
「建物と人が老いる前に,活力のあるうちに,管理組合主導のマンションを築いてください。・・・・

高齢者が,安全で豊かに安らいで住めるマンションは,たぶん,誰にとっても住み心地の良い居住環境なのではないでしょうか。」





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