海底火山の噴火で「溶岩風船」が浮かぶ!独ミュンヘン大学
小笠原諸島の西之島が1年5カ月ぶりに噴火を再開し、太平洋を取り巻く火山帯では、火山活動の活発化が相次いでいる。こうしたなか、ミュンヘン大学の火山学者は、海底の火山が噴火すると、溶岩が風船のように海面近くまで浮いてくる現象に気づいた。
「溶岩風船」とは珍しい名前だが、ミュンヘン大学のウルリッヒ・クーパース研究員らは最近、米地球物理学連合(AGU)のチャップマン会議で、海底火山の噴火が起こると、海底に閉じ込められたガスが溶岩を押し上げる結果、内部が空洞化して膨れ上がった溶岩が形成されると発表した。
溶岩風船の大きさはさまざまで、フットボールくらいの小型のものから、3メートルくらいの巨大サイズも観測されている。あまり知られていないのは、海面に浮上すると、数分間はプカプカ浮いているが、まもなく水を吸収して海底に沈んでしまうからだという。
これまでの記録では、1877年2月にハワイ島の海岸で目撃されたのが最初の例で、それ以来は2012年までの135年間にわずか5回しか観測されていない。
最も新しい記録は、2011年10月に西アフリカ沖のスペイン領カナリア諸島近海で発生した海底火山の噴火だ。諸島の中で最も小さなエル・ヒエロ島の南側の沖に位置する火山の噴火は翌年まで続き、海上に無数に浮かんだ黒い溶岩風船が火山学者の注目を集めた。
クーパース氏は、そのうちのいくつかを採集し、詳細な分析を行い、「風船」という名前のわりに、海底から上昇する数百メートルの間にふくらみが変わることなく、海面に浮上して水圧から解放されても破裂することはないことを突き止めた。
「溶岩風船の形成プロセスについてはわからない点も多いですが、大西洋のポルトガル領アゾレス諸島で1998年〜2001年にかけて起こった海底噴火では、死んだ魚が大量に発生し、漁具の損傷が報告されるなど、溶岩風船が原因とみられる被害も確認されています」とクーパース氏は言う。
今後は、海底に沈んだ溶岩風船を採集して、溶岩の膨張にどれだけの火山ガスが関与しているのか分析を進め、形成プロセスの解明を目指す。
日本にも数多くの火山島や海底火山があるが、ほとんどは本土から遠く離れた海上に位置するため、噴火の記録や研究が乏しく、実態の解明は進んでいない。しかし、ひとたび大規模な噴火が起これば、津波はもとより、付近を航行する船や旅客機にも影響を及ぼす危険がある。
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