アジア映画巡礼

アジア映画にのめり込んでン十年、まだまだ熱くアジア映画を語ります

イポーでヤスミン・アフマド記念館を訪ねる(下)

2016-08-15 | 東南アジア映画

『Jagat(ワル)』はとてもパワフルな作品でした。舞台は1991年に設定され、タイプーサムの日から物語が始まります。12歳のアッポイ少年が主人公なのですが、勉強をしていてもタイプーサムの行列や、あるいはテレビから流れるラジニカーントの映画に気を取られてしまうアッポイは、学校では九九もできない落ちこぼれとみなされています。工場労働者であるアッポイの父は、これからは教育がすべてだとアッポイに厳しく接し、時には体罰も与えます。アッポイは頭もよく、想像力豊かな少年なのに、それを認めてもらえず、逃げ道として父の弟バーラーに傾倒することに。バーラーはギャングとつるんだりしているものの、アッポイを一人前に扱ってかわいがってくれていたのですが、やがてギャングの抗争が激しくなっていき、それに巻き込まれて行きます....。

Jagatfilmposter.jpg

舞台が1990年代に設定されたのは、ちょうどその頃、プランテーションでの労働に従事していたインド人たちが解雇されて町へと移動して来、スラム街に住み着くようになった時期だから、とのことです。その閉塞感漂う状況の中で、才能を持っていながら勉強ができないばかりに「落ちこぼれ」のレッテルを貼られる少年と、その息子に望みを託すしかない父親、履け口をギャングという存在に求める叔父やその仲間たちが描かれていきます。悪い方に転がっていく、見ていてつらい映画でしたが、力を感じさせてくれる作品ではありました。ただ、暴力シーンがふりをしてるだけ、というのがまるわかりだったり、音楽が印象的であるもののあまりにもかぶせ過ぎだったりと、残念な点も。ほとんどのセリフがタミル語(一部、華語と英語もあり)のマレーシア映画、という存在意義は大きいので、次回作に期待しましょう。


実はこの日の上映はあまり映写条件がよくなく、スクリーンが小さくてシネスコ画面ではいっそう映像が小さくなってしまっていました。腰が痛いので床には座らず、一番後ろに腰掛けていた私には字幕が小さくて読みづらかったので、内容をきちんとf理解できたとは言いがたいところがあります。上映が終わってのQ&Aも、MCの人は声がよく通って聞こえたものの、サンジャイ監督やプロデューサーのシヴァさんの声は、マイクがなかったためほとんど聞こえなかったのでした。帰途、MCをやったアランさんという人(上写真右端)と列車が一緒になり、待つ間ちょっと話したのですが、「僕はMCをいつもやってるから声もよく出るけど、彼らはとても控えめに話していたからねー」とのことでした。でも、質問が次々に出ていて、終了後も一緒に写真を、という人が引きも切らず。下は、左から作曲を担当したカマル・サブラン(Kamal Sabran)さん、前回の記事で名前を挙げたジャスティンさん、そしてシヴァさんとサンジャイ監督です。作曲家のカマルさんは、顔がよくわかる写真も付けておきます。


この場のムードメーカーはオーキッドさんで、その日の朝に作ったというクレープのようなパンとゆで卵のサンバル(魚で味付けされた、マレー世界に入ったサンバルですね)をみんなに振る舞い、求めに応じてポースを取ったりして、誰とでも気さくに接していました。ヤスミン記念館がいろんな活動をしていけるのも、オーキッドさんのキャラに負うところ大なのでは、と思います。


私は少し早めに失礼して、ジャヴィアンさんに教えてもらったヤスミン作品ゆかりのスポットめぐりをすることに。記念館から外に出たら、受付のテーブルに寝そべっていた猫ちゃんがお見送りしてくれました。え、お見送りなんて顔してないって? マレーシアでも猫は気まぐれなんですよー。


記念館のあたりは前回書いたようにトレンディなスポットということからか、新婚さんが記念写真を撮る絶好の場ともなっているようです。花婿さんはサングラス姿でしたが、これもグラサン姿の方がカッコいいから? インド映画講座の時に言ったのですが、ボリウッドスターのブロマイドはなぜかグラサン姿が多く、ブロマイド屋のおじさんに文句を言ったら、「えー、何が悪いんだい? カッコいいじゃないか」と反論されたのです。南国の人はグラサン好きなのでしょうか。『Jagat』の影響か、ギャングスターに見えてしまうんですが...。花嫁さんは、モデルさんかと思うぐらいの美女でした。


では、ジャヴィアンさんが書いてくれたスポットと登場した作品、そしてその写真を。

①Masjid Negeri(州のモスク)~『ムアラフ』、『タレンタイム』


前回も写真を載せましたが、今回は夕方の写真をどうぞ。『タレンタイム』でハーフィズ君が祈っていたモスクですね。

②Medan Selera Dato Sagor/Clock Tower~『ムアラフ』

モスクの向かいにあります。えーっと、どこに出て来ましたっけ?

③Royal Ipoh Club~『細い目』


ジェイソンがオーキッドの好きな花を見つけるシーンですね。敷地内には入れなかったので、外から何カ所か撮りました。

④St. Michael's Institution~『細い目』、『グブラ』


こちらも敷地には入れなかったので、外からの写真だけです。この学校の右手にはきれいなモスクがあったのですが、何と「インド人イスラーム教徒モスク」と書いてありました。

あと、ジャヴィアンさんは、⑤St. John the Devine Church(『ムアラフ』)と⑥Anderson School(『タレンタイム』)も挙げてくれたのですが、徒歩で行くのはもう限界でギブアップ。イポーはタクシーが全然通りませ~ん。暑さで結構参っていたので最後にお茶でも、と思ってさっきのトレンディ・スポット近くに戻ったら、どうやら四つ角を右に折れた一帯はイポーのリトル・インディアらしいと気がついて、またウロウロ。こんな風に、インドの地名を冠したお店が目立ちます。「チェンナイ」というアクセサリー屋さんで、ついバングルなどを買ってしまいました。あ~、冷房が涼しい...。


2ブロックぐらい歩いたものの、今度こそホントに熱中症寸前になって、元来た道をあわてて戻り、カフェに転げ込みました。マジで、ちょっと危なかったです。というわけで、イポー日帰り旅行はこれにておしまい。イポー駅からは、ライトアップされたヒンドゥー教寺院を見ながら、ETSに乗って無事にKLに戻って来ました。

ヤスミン・アフマドの監督作品『タレンタイム』は、ムヴィオラの配給で来年公開される予定です。公開されたら、ぜひ見に行って下さいね。そして、ヤスミン作品大好きのあなたは、イポーへぜひとも一度お出かけ下さい。

 

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4 コメント

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Cinetama様 (Tomo)
2016-08-18 09:41:41
充実したイポー滞在をされていてさすがだなーと大変大変うらやましく記事を拝見しました。
私も7月初めに一泊で行ったのですが、cinetamaさんとの落差が激しいです。
そもそもイポー行きはRaees延期による予定外行動だったので仕方ないのですが、ヤスミン記念館へイベントのない日に行ってしまいました。数分で終わりました(笑)。
ものすごくみつけにくい路地を入り、さらにその路地の内部でも探してグルグル。
そして断食明けってみんな休むんですね。ツーリストインフォまで数日休みで、これ痛かった。
流しのタクシーは新市街まで行けばいました。
私も歩きすぎて熱中症寸前になり、数回カフェへ避難。
出発前日にETSカウンターへ行きましたが、帰り分は二日後なのに朝5時出発しか残ってませんでした。週末や休みの時期はこうなるようです。
帰り分はバスチケットをネットで購入。
事故渋滞でKLまで5時間かかりました。でもバス内で聞こえてきた話によるとその日は電車がストップしてたらしいです。
これから行かれる方は私のようになりませんように。ならないか(笑)。
Tomo様 (cinetama)
2016-08-18 10:28:34
貴重なコメント、ありがとうございました。

ヤスミン記念館、私もTさんとそれからインド映画のコーディネーターでアジア映画全般に詳しいDさんが『Jagat』の上映を教えて下さったので、「おお、ラッキー」と思いながら行ったのですが、普段の展示がどこかに片付けられている風でもなく、ひょっとして、普段行ったらこの壁の写真展示だけ?とちょっと愕然としたのでした。
確かに、「数分で終わる」内容ですね。
イポーのロケ地の大きな地図を作るとか、彼女の遺品なども展示するとか、いろいろ工夫をしないと続かないかも知れません。
遺品としては、『細い目』と『ワスレナグサ』の脚本や自筆詩集のコピーが当日紹介されてみんなに回されましたが、我々が抱いているヤスミン愛を満足させてくれるだけの内容にはまだまだ遠いですね。

国際交流基金のKさんにブログを見ていただいたら、「監督への送迎がない、上映環境が良くない等々、その辺りを彼らがきちんとしていくかどうかが、今後あのミュージアムを存続させていく上で重要になってくるのになぁ、と思った次第」というお返事をいただいて、本当にその通りだと思いました。
ヤスミンの思い出を保存するだけでなく、イポーで新しい映画運動を創り出していく場として、しっかり機能してくれることを願っています。

それにしても、Tomoさんはよくバスチケットを取ってお戻りになれましたね。
実は私も、お泊まりセットも用意して、電車が取れなければバス、バスがだめなら1泊する、と覚悟して行ったのですが、朝の出発時にKLセントラルで帰途の席をうまくゲットできたのです。
帰途イポー駅で見たら、この土曜日夜のKL行きを除いて、ほとんどの列車が「FULL」になっていましたので、私の場合は幸運以外の何ものでもなかったのかも。

イポーのヤスミン作品ロケ地地図、以前シネマート六本木で上映があった時に展示されていたのですが、あれが誰にでも見られるよう、ちょっとあの折の主宰者の皆さんに働きかけてみます。
ロケ地めぐりだけでも、ヤスミン愛を満たしてくれますものね。
Cinetama様 (Tomo)
2016-08-18 18:19:09
そうなんです、そうなんです、わたしの愛は満たされませんでした(泣)。
私が知りたかったことや思ってたこと全部というかそれ以上に書いてくださってありがとうございます!!
シネマート六本木のあのロケ地紹介については是非お願いします!いつかイポーへ行く日のためにと写真に撮ったのに、旅行中スマホを使用不能にするという特大ボケをしたため活用できず、ただウロウロして終わりでした。
ちなみにバスチケットはSG&MY easybookというサイトで買いました。
今回は残念な感じでしたが、cinetamaさんのコメントのおかげで無駄足でもなかったかなと思えるようになりました。そういえば割と楽しかったのでした。ありがとうごさいました!!
Tomo様 (cinetama)
2016-08-18 21:48:37
再度のコメント、ありがとうございました。

いえいえ、世の中、無駄なことは何もありません。
イポーまで足を運ばれて、私を含め他の人に体験をお伝えになっただけでも意義があります。

バスチケを取られたサイトは、SG(シンガポール)&MY(マレーシア)easybookというサイトなんですね。
これでしょうか。
http://www.easybook.com/easibookNew/mobile-index.aspx
電車、バス、フェリーと何のチケットでも予約できる便利なサイトみたいです。
シンガポールとマレーシアでお困りの方が辿り着けますように。

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