アジア映画巡礼

アジア映画にのめり込んでン十年、まだまだ熱くアジア映画を語ります

面白かった企画<日本・香港インディペンデント映画祭2017>

2017-04-21 | 香港映画

もう本日で最終日になるのですが、<日本・香港インディペンデント映画祭2017>が開催されました。詳しくはこちらの公式サイトを見ていただければと思いますが、4月15日(土)~21日(金)にテアトル新宿を会場にして、連日日本映画と香港映画を上映し、かつその後に監督たちのトークが舞台で繰り広げられるという、約4時間半の催しでした。コーディネーターはマレーシア出身の林家威(リム・カーワイ)監督。日本に留学して大阪大学で学んだあと北京電影学院にも留学、その後マレーシアと日本をベースに『新世界の夜明け』(2011)等を監督している人です。今回、トークイベントの司会者として連日登壇したのですが、日本語の上手さにはびっくり。時には、通訳さんを補佐してあげたり(プロの通訳の方々ではなかったので、途中で聞き漏らした言葉があったり、日本語があやしかったりと、少々残念でした)と、堂々たるコーディネーターぶりでした。

私が見たのは次のプログラムです。

4月17日(月)

『FAKE』
 2016年/日本/ドキュメンタリー/109分
 監督:森達也

『狭き門から入れ』
 2008年/香港/広東語/105分/原題:三条窄路/英語題:Three Narrow Gates
 監督:崔允信(ヴィンセント・チュイ)
 出演:廖啓智(リウ・カイチー)、王亦藍(ウォン・イクラム)、蒋祖曼(ジョーマン・チャン)
トーク
 森達也 × ヴィンセント・チュイ

『狭き門から入れ』は、邦題からもわかるようにキリスト教の牧師(リウ・カイチー)が主人公です。政治活動に参加することこそが現代におけるよきキリスト者の務め、と考える牧師は、ラジオ放送で政治的な発言をしたり、逃げている人をかくまったり、ミサの説教で信者に自分の主張を話したりします。それに反発する人もいるのですが、彼の様々なサポートがやがて巨大な企業悪をあばくことになります。この牧師の話を軸に、元警官のちょっといいかげんな青年(ウォン・イクラム。何と、人気コメディアン王祖藍の弟でした)と潮州出身の娼婦が巻き込まれる中国本土における香港企業の公害事件や、パパラッチの女性カメラマン(ジョーマン・チャン)が辿り着く大手不動産企業の不正など、当時の香港のダークサイドが描かれていきます。技術的にはまだまだ商業映画レベルには達していませんが、多くの登場人物をうまく動かし、香港と中国本土を上手につなぐなど脚本が冴えていて、サスペンス映画としても見応えがありました。予告編を付けておきます。

《三條窄路》預告片 (崔允信作品) "Three Narrow Gates" TRAILER - A film by Vincent Chui

4月20日(木)

『THE DEPTHS』
 2010年/日本・韓国/121分
 監督:濱口竜介
 出演:キム・ミンジュン、石田法嗣、パク・ソヒ

~香港の今が分かる傑作短編集3本~
『九月二十八日・晴れ』
 2016分/香港/広東語/25分/原題:九月二十八日,晴/英語題:A Sunny Day
監督:応亮(イン・リャン)
 出演:張同祖(ジョー・チョン)、彭珮嵐(アイビー・パン)
『表象および意志としての雨』
 2015年/香港/広東語・英語/26分/原題:作為雨水:表象及意志/英語題:Being Rain: Representation and Will
 監督:陳梓桓(チャン・ジーウン)
『遺棄』
 2013年/香港/広東語/50分/原題:遺棄/英語題:When We Cannot Breath
 監督:麥志恆(マック・ジーハン)
 出演:鄭敬基、■立賢、區騰駿
トーク
 濱口竜介 × チャン・ジーウン × マック・ジーハン

抜群に面白かったのが、『表象および意志としての雨』。最初、「香港では重要なことがあると必ず雨が降る」というナレーションに従って、7月1日など大規模デモなどがある日は必ず強い雨が降っている映像が続きます。日本では「雨降って地固まる」と言いますが、同じような文句を取り上げて参加者を励ます主催者たち。ところがここで、この降雨を疑う人たちが出て来ます。あまりにも狙ったように降るので、これは意図的に雨が降らされているのでは、と疑うのです。見ているこちらは、「1997年7月1日も豪雨だったし、中国は西部地域の砂漠化を阻止するため、人工降雨の実験を進めているしなあ...」などと考えるようになります。やがて、「中央天文学会」という謎の組織が浮かび上がってきます。また、雨とヨウ化銀の関係を調べている地下天文台(影の気象庁)の存在があきらかになり、彼らがそこの科学者たちから話を聞いてみると...ということで、どんどんヤバい現実がわかってきてドキドキした私は、実はチラシを読んでいなかったからで、チラシには「フェイク・ドキュメンタリー」と記されていました。それにしても作り方がうまく、登場人物たちもみんなそれらしい人が選ばれていて、まるで本当のドキュメンタリー映像のようです。コロッと欺されてしまいました。というわけで、こんなネタバレを読まずにご覧になると、スリルが十分味わえます。

鮮浪潮 2014–本地競賽短片《作為雨水:表象及意志》預告片 Fresh Wave 2014: "Being Rain: Representation and Will" Trailer


上が予告編ですが、チャン・ジーウン監督は初日に上映された長編ドキュメンタリー『乱世備忘-僕らの雨傘革命』(2016)も撮った人で、こちらが見られなかったのは返す返すも残念でした。なお、今回東京で上映された作品の中から、香港映画だけを集めた<香港インディペンデント映画祭2017>が名古屋と大阪で開かれます。名古屋と大阪の皆さん、ぜひ足をお運び下さいね。

<香港インディペンデント映画祭2017>
名古屋:シネマスコーレにて/5月6日(土)〜12日(金)
大阪:シネヌーヴォーにて/6月開催決定



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