アジア映画巡礼

アジア映画にのめり込んでン十年、まだまだ熱くアジア映画を語ります

バンコクのアート系上映館BKKSRで見た『My Buddha Is Punk』

2017-08-14 | 東南アジア映画

何か、いい映画をほかにやってないかなー、とサーフィンしていたら、面白そうなドキュメンタリー映画が見つかりました。タイトルは『My Buddha Is Punk(俺の仏様はパンク)』ドイツとビルマ(ミャンマー/私はできればミャンマーは使いたくないので、個人的な執筆の場合はビルマを使います)の合作で、監督はAndreas Hartmann(アンドレアス・ハルトマン、でいいのでしょうか?)というドイツ人です。まずは、予告編を見ていただきましょう。

MY BUDDHA IS PUNK Trailer

ええーっ、ビルマにもこんなパンクのお兄ちゃんが!? とびっくりなさったのでは、と思います。主人公は、最初に髪を青く染めていた25歳の青年Kyaw Kyaw(ビルマ語発音だと、”Mitkyina”が”ミッチーナー”ですから”チャウチャウ”でしょうか?)で、彼がリーダーとなってのバンド活動を中心に、シュウェダゴン・パゴダの近くで露店を出してパンク・ファッションの洋服やアクセサリーを売ったり、パンク活動を広める小冊子を発行したりしています。仲間はバンドをやるメンバー以外にも10人ほどいて、眉ピアスや入れ墨をし、とさかの毛を逆立てている青年もいれば、ごく普通の格好をしている人もいます。映画は2012年9月の反戦デーから始まり、ヤンゴンでの活動や仲間内での話し合いの様子を追って行きますが、意外に思われるのは、彼らは信心深い仏教徒で、お寺参りをし、仏像の前で瞑想するのも彼らの生活の一部だというのを見せてくれるシーンです。ロンジー姿の女性たちと共に、仏像に水をかけ、祈るKyaw Kyaw。彼の中では、仏陀とパンクとが矛盾せずに同居しているのです。


Kyaw Kyawは弁も立ち、自らの考えを仲間に話したり、時にはパンクに憧れる若者たちに対して、啓蒙活動のように話をしたりします。「どういう人を”パンク”と言うのかな?」「今は外見だけの人が多くなって、行動がパンクの人はいなくなったね」と言うKyaw Kyawの弁舌は、地方のパンク青年たちにパンク・ファッションを卸しに行く旅では、列車で乗り合わせた人たちも魅了してしまいます。また、ビルマに住むイスラーム教徒、ロヒンギャの人々に対する仏教徒の迫害についても関心を持つなど、政治意識も鋭敏です。ちょっと香港の俳優サム・リーに似たKyaw Kyawは、カリスマ性を備え、禁欲的な生活も修行者のような雰囲気を感じさせるところがあって、それが監督を引きつけたのでは、と思われます。途中何度か映像がアウト・オブ・フォーカスになる箇所があるのですが、意図的にそうしているのか、それとも手ぶれなのか、というのがちょっと気になった、68分のドキュメンタリー映画でした。


この映画を上映していた場所は、Bangkok Screening Room(略称BKKSR)という小さなスペース。地下鉄のルンピニ駅から、SOソフィテル・ホテルの方に向かい、ホテルの前を通り過ぎてしばらく歩いた角を左に曲がり、すぐのビルの2階にあります。上のようにがら~んとしたスペースの奥が小さなレストランになっていて、そこが目指すBKKSRでした。

レストランの奥に、映画館の入り口のドアがあります。


中は、下の図のようにイスが並んでいて、合計52席。チケットを買う時「A、B、C列のいずれかをお勧めします」と言われたのですが、確かに入って見ると、後ろの席はスクリーンが遠くて、おまけにリクライニングする立派なシートは完全に体を倒してしまうとスクリーンの下方が切れてしまい、ちょっと見にくいのです。なかなか、設計と現実は噛み合わないものですね。


チケット代は結構高くて300バーツ(約1.000円)。普通の映画館が140バーツ程度だったりするので、倍のお値段ですね。でも、この日も結構お客が入っていて、遅れてきた人も含めれば20人ほどになりました。ドキュメンタリーやアニメ、昔の名作(1958年の作品で、チャールトン・ヘストンとオーソン・ウェールズが共演した『黒い罠』の予告が流れていました)など、なかなか見る機会のない作品を取り上げるため、すでにファンが付いているようです。これまでこういったアートハウス系の上映館はHouse RCAぐらいしかなかったのですが、今度は足の便のいいBKKSRができて、またバンコクに来た時にはチェックする楽しみができました。

そうそう、もう一つ面白かったのは、最初に王室歌が流れてみんな起立するのは他の映画館と同じなのですが、「王様に敬意を表するため、起立して下さい」というテロップ画面が出た後、映像が一切なくて、歌の、しかも演奏だけの曲が流れたことです。前国王の静止写真を出すとかいう手もあったのでは、と思うのですが、どうして真っ黒な画面だけにしたのでしょう。今度行ったら、聞いてみようと思います。この映画館、興味がおありの方は、こちらのBKKSR公式サイトをご覧になって下さいね。



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