アジア映画巡礼

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『WAR ウォー!!』の裏の裏<8>リティク・ローシャン裏話(下)

2020-07-31 | インド映画

前回の続きです。前回ご紹介したとおり、リティク・ローシャンのフィルモグラフィーには華々しいヒット作が何作も含まれています。スターとしての人気から言っても、3人のカーン(アーミル、シャー・ルク、サルマーン)に肉薄する位置にいるリティクですが、しかしながらこの20年の間には、「裏話」と言えるようなショッキングな出来事も起きていたのでした。

①父ラーケーシュ・ローシャン、ムンバイ・マフィアに撃たれて重傷を負う

リティクの父ラーケーシュ・ローシャン(1949.9.6~)は、著名なェスラージ演奏家兼作曲家ローシャン(1917~1967)の息子に生まれ、映画界に入って、1970&80年代の人気二枚目スターとして、ボンベイのヒンディー語映画界(当時はまだ「ボリウッド」とは呼ばれていなかった)で活躍していました。ラーケーシュの弟ラージェーシュ・ローシャンも兄の後を追うように作曲家として映画界入りし、上のLPジャケットからもわかるように、ラーケーシュ・ローシャンが立ち上げた映画会社Film Kraftの作品を中心に作曲の腕を振るっていました。この映画『Aap Ke Deewane(あなたに夢中)(1980)は前回、リティクが子役で出ていた作品として紹介しましたが、製作会社Film Kraftによる第1作だったのです。主演は、左側が先日亡くなったリシ・カプール、右がラーケーシュ・ローシャン、そして間にいるのがティーナー・ムニームで、彼女は今、アンバーニー財閥の弟の方、アニル・アンバーニーの夫人におさまっています。

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Film Kraftは当初小さな製作会社でしたが、1987年からラーケーシュ・ローシャンが監督業にも進出し、1990年代にシャー・ルク・カーンの主演作を作るようになると、次第にヒット作が出て大手会社に成長していきます。特に、シャー・ルク・カーンとサルマーン・カーンが共演した『カランとアルジュン』(1995/上の中)はその年の興収第2位となり、ラーケーシュ・ローシャンは監督兼プロデューサーとして一挙に注目されるようになりました。すると、魔の手が伸びてきます。ムンバイ(1995年にボンベイから呼称変更)のマフィアたちから「上がりをよこせ」、つまりみかじめ料=保護費を出せ、と言われるようになるのです。その裏には、右翼政党ともからむムンバイ闇事情があるのですが、それは長くなるので置いておいて、映画人がお金の提供を断ると襲われるという事件も起きるようになります。中でも世の中を震撼させたのは、音楽カセット会社から映画製作に参入したTシリーズの社長、グルシャン・クマールが1997年8月12日に射殺された事件でした。お金を要求するムンバイ・マフィアからの恐喝電話が複数回あったのを無視していたグルシャン・クマールは、日課のシヴァ寺院への参拝時に、16発もの銃弾に撃たれて死亡しました。

そしてラーケーシュ・ローシャンも、2000年1月21日、オフィスの近くでマフィアに狙撃されたのでした。撃たれたのは左腕と胸で命に別状はなかったのですが、衝撃的だったのはニュース等で、「ラーケーシュ・ローシャンは死なない程度に撃たれた」という報道がなされたことでした。つまり、目的は殺害ではなく見せしめだったのです。上の写真は、2000年1月にムンバイのジュフー海岸通りで撮った写真ですが、リティク・ローシャンのデビュー作『Kaho Naa...Pyar Hai(言ってくれ、愛していると)』の封切りが1月14日で、そのちょうど1週間後に起きた狙撃事件でした。これにより、リティクは一時、映画界からの引退を決意したそうで、そうなっていればデビューと同時に引退という、伝説上の人物になっていたかも知れません。父ラーケーシュ・ローシャンはその後元気になって、リティクを主演に数々のヒット作を放っていきますが、この狙撃事件は今でも忘れられない、リティクのデビュー早々の出来事でした。

 

②結婚と離婚

リティク・ローシャンはデビューしてすぐ、2000年の12月20日に結婚式を挙げます。お相手は4年越しの恋人スザンヌ・カーン(1978.10.26~)。名前からもわかるようにイスラーム教徒で、一方リティクはヒンドゥー教徒という、異なる宗教間の結婚でした。当時は結婚式のビデオを撮るのが大流行だった時代ですが、リティクとスザンヌの結婚式も友人たちが撮っていて、それが後日、シミー・ガレーワールのトーク番組にゲスト出演した時に取り上げられました。下はその一部です。

Hrithik and Suzanne (Khan) Roshan Wedding Video

 

スザンヌ・カーンとの結婚は、異宗教間の結婚というだけでなく、別の意味でも話題になりました。スザンヌの父も、サンジャイ・カーンという1970年代の有名俳優だったのです。また、サンジャイ・カーンの弟フィローズ・カーンはさらに有名なスターで、のちには両方の息子たち――サンジャイ・カーンの息子ザーイード・カーンとフィローズ・カーンの息子ファルディーン・カーン――も俳優としてデビューします。スザンヌの弟ザーイード・カーンは、『Main Hoon Na(僕がいるだろ)』(2004)でシャー・ルク・カーンと共演するなど、一時期は人気俳優でした。スザンヌとリティクには息子が2人生まれ、スザンヌは実家の母や姉たちの影響を受けてインテリア・デザイナーとしても働くなど、幸せな家庭を築いていました。

Kites Official Poster.jpg

ところが上の映画『カイト』(2010)で、リティクはメキシコの女優バーバラ・モリ(日系の女性らしい)と共演したのがきっかけで不倫関係になり、家庭に波風が立ってしまいます。『カイト』にも出演したカングナー・ラーナーウトとはその後クリッシュ』(2013)でも共演するのですが、彼女とも関係があったようで、後日リティクがカングナーをサイバー・ストーカー容疑で訴えるなど、かなりこじれました。一連の不倫騒動のせいでスザンヌは実家に帰ってしまい、2013年12月からの正式別居を経て、2014年11月にスザンヌはリティクと離婚してしまいます。2人の息子たち――2006年生まれのリハーンと2008年生まれのリダーンはスザンヌが育てていますが、子煩悩なリティクは離婚後も子供たちと食事に行ったりして、いい感じのお付き合いが今も続いているようです。今年のコロナ禍でロックダウン中も、息子のバースデーを4人で祝う下のような動画がアップされていました。

Hrithik Roshan Celebrates Son Hrihaan's Birthday @Home with Family:Wife Suzanne & Kids

 

冒頭部分以外は、ロックダウン中のファンにメッセージを伝えるリティクの動画2本となっていますが、リティクはロックダウン中積極的にファンに語りかけたスターの1人で、ファンたちは大いに励まされたことと思います。生真面目な語りのメッセージと、たまにピアノ演奏をしたりする地味な動画でしたが、リティク・クラスの大物としてはとても真摯な動画で、好感が持てました。

© Yash Raj Films Pvt. Ltd.

 

③大コケ映画『Mohenjo Daro(モヘンジョ・ダロ)』

リティク・ローシャンの主演映画は、デビュー作『Kaho Naa...Pyar Hai(言ってくれ、愛していると)』がその年の興収第2位だったことに始まって、主演作のほとんどが10位までにランクイン、ランクインしなかったものも製作費をしっかりと回収する好成績を上げたものばかりでした。ところがその中に、1作だけ「Flop(失敗作)」となったものがあります。2016年8月封切りの『Mohenjo Daro(モヘンジョ・ダロ)』で、監督は、『Jodha Akbar(ジョーダーとアクバル)』(2008)でリティクに大ヒットとフィルムフェア賞主演男優賞をもたらしたアーシュトーシュ・ゴーワーリーカル。アーミル・カーン主演の『ラガーン』(2001)の監督でもあります。大規模なモヘンジョ・ダロのセットを組み、大洪水シーンを出現させるなどして製作費は12億ルピー(約18億円)もかかったのに、興収はやっと10億8千万ルピー。リティクの相手役はプージャー・ヘーグデーで、タミル語やテルグ語映画出演の経験はあるものの、ボリウッド映画は初出演、ということで、興行の責任はリティクの肩にかかっていたのでした。

A man is holding a trident.

本作は私も封切り時にマレーシアで見たのですが、こちらの紹介記事で”「全然ダメだろ!」映画”と書いています(笑)。後日読んだインドでの映画評では、歴史的事実と違う描写がある、というようなことも批判の的になっていましたので、リティクの責任と言うよりも監督&脚本の責任ではあるのですが、リティクの俳優人生中の汚点となりました。しかし、これに懲りたのか、以後はしっかり作品を選んでいるようで、特に昨年は『Super 30(スーパーな30人)』という、教育者を主人公にした地味な実録映画にも主演しています。『Super 30』は興収トップ10には及ばず第15位でしたが、20億9千万ルピーという立派な興収を上げました。本作、私も未見なので見てみたいです。

© Yash Raj Films Pvt. Ltd.

 

というわけで、リティク・ローシャンの知られたくない過去(?)をご紹介しましたが、2019年は『WAR ウォー!!』が興収トップに輝き、リティクの時代はまだまだこれから、という印象を与えてくれました。でも、その陰ではものすごい肉体改造も行われたようで、確かに『WAR ウォー!!』のリティクを見た時には、あまりにもそげた頬にドキッとしたものです。その謎は、最近下の動画を発見して解けました。

Hrithik Roshan’s Transformation | The other side of Kabir | The HRX Story

 

『WAR ウォー!!』の後も、この時鍛え上げた肉体をキープしているらしいリティク。上映中の『WAR ウォー!!』でもう一度あの素晴らしい肉体と演技を見て、次の作品に期待をつなぎたいと思います。

 


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