アジア映画巡礼

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抱腹絶倒のマラヤーラム語映画『Kumbalangi Nights』と字幕が付いていた件

2019-03-20 | インド映画

チェンナイはやっぱりいいです、映画料金が安いから。ここのところ見てる映画は、すべて150ルピー台か160ルピー台。デリーの400ルピーやムンバイの300ルピー前後のチケット代を考えると、どーして同じ国なのにこうも映画料金が違うの~、とつい思ってしまいがちですが、各都市の物価の違いと共に、タミル・ナードゥ州は娯楽税が安いのだと思います(帰ったら、一度真剣にチケットの額面をチェックしてみよう)。そんな料金で見たのは、タミル語映画『To Let(貸家)』とマラヤーラム語映画『Kumbalangi Nights(クンバランギの夜)』。前者は簡単に、後者はちょっと詳しくご紹介しようと思います。

A poster showing footprints

『To Let(貸家)』は借家に住む若夫婦と5歳の男の子、というある家族の話です。イランゴ(サントーシュ・スリーラーム)は、映画関係の仕事をしています。脚本も書いたりしていますが、いまだ認められず、その他大勢の声の吹き替えや、監督助手などで何とか家族を養っています。妻のアムダ(シーラー・ラージクマール)は、階上に住む家主である奥さんに使われたりしながら、どうにか家賃も払ってきたのですが、その家主から突然「30日以内に部屋を明け渡して」と言われてしまいます。家主はもっと高い家賃の取れる相手に貸そうという欲を出したのです。こうして、新聞広告でチェックしての家捜しが始まりますが...。

Tolet - Official Trailer | National Award Winning Film

字幕なしで見たので、細かいお金のことなどがわからず、少々しんどかったです。アート系作品と言ってもよく、これまで撮影監督として『Joker(道化)』(2016)などの作品を撮ってきたチェリヤン監督のデビュー作でした。キツい家主の奥さんが、『世界はリズムで満ちている』の肝っ玉母さん役の人だったのでちょっと嬉しかったりしたのですが、いかにも不幸といった感じの主人公2人にはどうもついて行けず、息子シッダールト役のかわいい少年ダルン君の演技に感心しつつも、いまいち乗れませんでした。Wikiによると2017年の作品だそうで、その年の作品を対象としたナショナル・フィルム・アワード(国家映画賞)では、最優秀タミル語映画賞を獲得しています。その後各地の映画祭で多くの賞をとりながらもなかなか公開まで行かず、今回やっと劇場にかかった、ということのようです。


Kumbalangi Nights poster.jpg

『To Let』とは対照的に、たっぷりと楽しんだのがマラヤーラム語映画『Kumbalangi Nights(クンバランギの夜)』。最初、高校か中学校のサッカー部練習シーンから始まる本作は、そこに登場するフランキー(マシュー・トーマス)とその兄3人を巡るストーリーです。休暇になり、クンバランギ地区にある実家、長男のサジ(ソウビン・サーヒル)と三男のボビー(シャーネ・ニガム)が暮らす粗末な家にフランキーは戻ってきますが、父の命日で別の所に住んでいる次男ボニー(スリーナート・バシ)も戻ってくるというのに、サジとボビーは何かと言うと取っ組み合いのけんかを繰りひろげます。サジは露天商で、タミルナードゥから来た男を雇い、彼に商売を任せて自分は飲んだくれる毎日です。ボビーも漁はうまいものの、やはりのらくらと日を送っています。彼ら4人兄弟は複雑な背景があり、サジの父がボニーの母と再婚し、ボビーとフランキーが生まれたのですが、その母は父が亡くなったあとは家庭を去り、キリスト教のミッションで過ごしている、という一家なのでした。ボニーは生まれつき口がきけないのですが、誠実な人柄で、ちゃらんぽらんな兄弟に嫌気がさして家を出て暮らしています。

Shane Nigam and Soubin Shahir in Kumbalangi Nights (2019)

SajiとBobby

やがて、ボビーはしっかり者で自宅を民宿にしようとしている女性ベビー(アンナ・ベン)と恋に落ち、デートするようになります。ベビーの家族は年老いた母と姉シミー(グレース・アントニー)なのですが、シミーは最近結婚し、婿のシャンミ(ファハド・ファージル)も家に同居していました。このシャンミ、理髪店を持っているのですが、四角四面な男で、広場でサッカーをしているフランキーたちを苦々しく見据え、家の庭にボールが飛んでこようものなら、怒って空気を抜いてしまうというやっかいな人物でした。シミーは彼におびえ、母も遠慮しています。こんな男なので、サジがボビーとベビーの結婚を申し入れても、「あんなのらくら者、せめて正業に就かないと考慮もできんね」とにべもなく断ります。ボビーは一度は魚加工工場で働き始めたものの、数日でぶち切れ、やめてしまいました。一方ボニーは外国人観光客でホームステイを望む女性と仲良くなり、彼女がベビーの家からシャンミに追い出されたあとは実家で同居を始めます。さらに、サジの行為が原因で彼のタミル人の友人が亡くなり、臨月だったその妻(シーラ・ラージクマール)が産気づくなど、次々と事件が勃発。最後にやってきた最大の難事件は、ボビーとベビーが駆け落ちをしようとした前夜に起きました...。

BonnyとFrankie

とっても面白かったのですが、そんなに楽しめたのは英語字幕があったから。これまでインドの映画館で英語字幕があるのは、インド国際映画祭出品作とかに限られていたのですが、最近は英語字幕付き上映が多くなったようです。ムンバイで見たマラーティー語映画『Anandi Gopal(アーナンディー・ゴーパール)』も英語字幕付きで、どこかの映画祭に出たのかな、と思っていたのですが、もしかしたら非マラーティー語観客のために付けられていたのかも。ここチェンナイでは、タミル語映画以外には英語字幕が付くようで、このマラヤーラム語映画、それからあとでご紹介するヒンディー語映画『Total Dhamaal(大騒ぎ総集編)』にも英語字幕が付いていました。これはいいかも、です。ヒンディー語映画を英語字幕付きで見たい人は、チェンナイにくればいいわけですね。まあ、シンガポールでも英語字幕で見られますが、やっぱりインドで見たい、という方はぜひチェンナイへ。

Fahadh Faasil in Kumbalangi Nights (2019)Kumbalangi Nights (2019)

本作は字幕以外にも、映画自体が面白いという点が素晴らしかったです。4人兄弟を上手に動かし、それぞれの魅力を感じさせてくれるうえ、兄3人のお相手の女性たちもベビー(上写真右)を筆頭にとってもチャーミングに描いてあって、愛すべき映画となっています。それだけだと、ハートウォーミングな良作に留まりますが、そこに現れるのがクセ者俳優ファハド・ファージル(上写真左)。初登場時から不穏な空気をまとい、この人、アブナイ、と思わせてくれる怪演です。いやー、うまい俳優ですね-。本作は彼がプロデューサーの1人ともなっており、それで脇に回ったのかも知れませんが、彼の名演で映画に不協和音が溢れ、とっても面白くなっています。監督は、マドゥ・C・ナーラーヤナンという人で、助監督を経てこれが監督デビュー作のようです。脚本がベテランのシャーム・プシュカランという人で、脚本に負っている部分があるのかも知れませんが、将来が楽しみな監督と言えそうです。日本でも、どこかで買って下さらないかなー、と思いつつ、ちょっと欧米映画みたいなテイストがありすぎなので無理かなー、という気も。TIFFでやって下さってもいいと思うのですが、いかがですか、TIFF事務局様。

<追記>あと、エクスプレス・アベニュー内のシネコン「エスケープ」は、なぜか本編上映前の国歌演奏フィルム上映がありません。3回、別々のスクリーンで見て3回ともそうなので、館の方針として上映しない、ということになっているのでは、と思います。反BJPなんでしょうか、オーナーが。『Petta』を見たPVRではちゃんと上映されていたので、このシネコンだけではないかと思います。理由はともかく、見る方にはありがたいです。

 

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