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アジア映画巡礼

アジア映画にのめり込んでン十年、まだまだ熱くアジア映画を語ります

このインド映画にも注目!『燃えあがる女性記者たち』<その1>

2023-07-20 | インド映画

目下の日本におけるインド映画は、男たちが何かを相手に闘う作品が幅をきかせています。しかし、男たちだけじゃない、女性たちだって日々闘っているんだ、ということがよくわかる作品が9月に公開されます。ドキュメンタリー映画なのですが、『燃えあがる女性記者たち』という作品で、一昨年の山形ドキュメンタリー映画祭で『燃え上がる記者たち』という邦題で上映され、市民賞を獲得した力作です。まずは、作品のデータからどうぞ。

『燃えあがる女性記者たち』 公式サイト
 2021年/インド/93分/ドキュメンタリー/原題:Writing With Fire
 監督:スシュミト・ゴーシュ、リントゥ・トーマス
    配給:きろくびと
9月中旬より 渋谷ユーロスペースほか全国順次公開

©BLACK TICKET FILMS. ALL RIGHTS RESERVED.

本作の主人公は、インドのウッタル・プラデーシュ州(UP州)にある新聞社「カバル・ラハリヤ」の記者たちです。「カバル(khabar)」は「ニュース」、「ラハリヤ(lahariya)」は「波」という意味のヒンディー語です。ヒンディー語を勉強した人なら、「キャー・カバル・ハィ?(元気かい?)」という挨拶言葉もご存じのはず。ベンガル語でも「キ・コボル?」でしたね。「波」は「ラハル」という言い方が一般的ですが、「ラハリヤ(ー)」にすると「小さな波」という意味にもなります。そう言えば昔、ヒンディー語のビデオ・マガジンで「ラハレーン(波の複数形)」というのもあったなあ、とか、いろいろ思い出してしまいます。ということで、「ニュースの波」という新聞を発行している新聞社のお話なんですが、ここはすごく特色のある新聞社なのです。一つには、UP州の東南部をカバーする、ローカル新聞社であること。二つ目は、記者を含むスタッフが全員女性であること。このあたりまでは、他にもあるかも知れませんね。三つ目は、スタッフのほぼ全員が、ダリトと呼ばれる被差別カーストに属していること。ここまで来ると、「すごく特色がある」という意味がおわかりいただけたかと思います。「カバル・ラハリヤ」を紹介したいろんな記事を見てみると、被差別カーストだけでなく被差別部族の人なども少し混じっているようですが、女性&被差別階層ということで、二重に虐げられている立場にある人たちが取材に飛び回り、地域の人たちにニュースを伝えているのです。

©BLACK TICKET FILMS. ALL RIGHTS RESERVED.

「カバル・ラハリヤ」ができたのは2002年。場所は、UP州のアラーハーバードに近いチトラクートという町なのですが、映画の中では場所の詳細は出てきません。また、事務所の正面を映す映像も避けられています。それはおそらく、社の所在地が特定されると、襲われたり嫌がらせをされたりする危険が伴うからでしょう。記者たちが取材するテーマは、多岐にわたります。本作の中に登場するのは、レイプ被害に遭ったダリトの人妻とその夫、違法採掘をしている採石場とそれに抗議する村人たち、トイレがない家に住むダリトの人たち、州議会選挙のベテラン候補者、ヒンドゥー至上主義の若者などなど、それはそれは多様な取材対象が登場します。「カバル・ラハリヤ」の公式サイトを見ると、それでもごく一部なのだ、ということがわかります。「サーワン月(7~8月)のトップ5曲」なんていう記事もあるので、芸能もカバーしているわけですね。この公式サイトでもおわかりのように、現在「カバル・ラハリヤ」は配信に力を入れています。紙の新聞も発行しているいるのですが(確か週刊だと思う)、スマホ時代の今、スマホで撮った映像を編集して記者の解説などを入れ、クリップとしてYouTubeや公式サイトで発信するのが主力となっているのです。本作では、上の写真で取材中の3人、左から主任記者のミーラ、スマホ撮影中の記者のスニータ、そしてまだ駆け出し記者のシャームカリを中心に取り上げ、取材場面からそれぞれの家庭での顔までを追っていきます。

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スマホがやってきた時、彼女たちはどういう反応を示したのか、どのようにして操作を憶えたのか、自分がナレーターになって説明する番組を作るには、何を習得しなければいけなかったのか、そんな彼女たちの一歩一歩が、画面に生き生きと映し出されます。被差別カーストの人たちの話、というだけでなく、同じ女性同士の話、未知のものに挑戦する人の話として見てもとても面白く、また、仕事と家庭の両立の話、無理解とやさしさの両面を持つ夫と折り合っていく話など、自分の身の回りにある話としても身につまされながら見られます。ぜひ多くの方に見ていただきたく、公開までの間に何度か、背景などをご紹介しようと思っています。毎回最後に予告編を付けておきますので、3人の主人公、ミーラ、スニータ、シャームカリと顔なじみになって下さいね。次回は、「ダリトって何?」というお話です。

インドの被差別カーストの女性記者がスマホ1つでニュースを発信/映画『燃えあがる女性記者たち』特報

 


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TBSラジオで監督インタビュー (ひらりん)
2023-09-11 22:34:23
いま、ラジオをつけたら、TBSラジオ【アシタノカレッジ】(9月11日)に、#燃えあがる女性記者たち の、監督お二人生でご出演中で聴いています。今週の土曜日から公開なんですね!1週間以内はラジコタイムフリー、YouTubeでも聴けるようです。
https://www.youtube.com/live/z9NE2g8Lesw
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ひらりん様 (cinetama)
2023-09-12 00:49:59
コメントでのお知らせ、ありがとうございました。
そうなんです、9月16日(土)から公開なのですが、その前に監督お二人は来日して下さっていて、いろんなところでプロモーションをする予定です。
関西にも行く予定とか聞いていますので、えーっと、どこを見ていただければいいのかな、公式サイトと公式Xのアドレスを付けておきますから、チェックしてごらんになって下さいね。(まだ香港なので、正確な情報をお伝えできなくてスミマセン)

https://www.writingwithfire.jp/

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