アジア映画巡礼

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さようなら、王者の歌声:S.P.バーラスブラマニアムを悼む

2020-09-26 | インド映画

大好きなインドの歌手の1人、S.P.バーラスブラマニアムが昨日、チェンナイで亡くなりました。1946年6月4日生まれなので、享年74。8月5日に新型コロナ肺炎で入院し、一時危篤という報道も出たのですが、少し前に「持ち直した」というニュースが流れてホッとしていた矢先でした。元々はタミル語等南インド諸言語映画のプレイバックシンガーとして有名になった人ですが、ヒンディー語映画の歌もたくさん歌っていて、実力や知名度から言えば、ヒンディー語映画界をベースに活躍する大御所女性歌手ラター・マンゲーシュカル(9月28日で91歳)や、その妹のアーシャー・ボースレー(87歳)に匹敵する人でした。ご冥福を心から祈ります。(下の写真はWikiより)

私が彼、SPBことS.P.バーラスブラマニアムを初めて知ったのは、1997年に映画『ムトゥ 踊るマハラジャ』(1995)の字幕翻訳をした時で、冒頭の”ムトゥお名乗りソング”「主人はただ1人(Oruvan Oruvan)」の歌手としてです。それまでは、南インド映画の歌手ではイェスーダースぐらいしか知らなかったのですが、その後気がついてみればSPBの歌が山ほどあって、ヒンディー語映画の歌まで歌っていることがわかり、すごい人なんだ~、と思ったのでした。YouTubeができる前にも、何度か映画賞などのステージで歌う姿も見たのですが、一番印象に残っているのがA.R.ラフマーンのドバイ・コンサートでの「主人はただ1人」を歌う姿。グレゴリ青山さんにダビングした映像をいただいて、何度見たかわかりません。このコンサートでは、バックの演奏家もオリジナル曲の編成をそのまま再現してあって、イントロだけで映画の興奮がよみがえってきます。そのフルオーケストラの真ん中に、大学教授みたいなSPBが出てきて直立姿勢で歌うので、荘厳というかまさに王者の貫禄、迫力満点のコンサートになっていたのでした。(下の写真はIMDbより)

S.P. Balasubrahmanyam

その映像はYouTubeでは見つからなかったのですが、2018年にベンガルールのガネーシャ祭で歌った動画がありましたので、付けておきます。これはバックが少々しょぼくて残念なものの、途中からSPBが楽曲を自在に展開させていくのが聞けるという、貴重な動画になっています。インドの古典音楽はジャズと一緒で、即興演奏ができて一人前なので、これだけでSPBがインド古典音楽の基礎を習得していることがわかります。この時は、バックコーラスのきっかけ出しも含めて、彼が全体の指揮もしていたみたいですね。

DR.S.P.Balasubramanyam singing ''Oruvan Oruvan Mudalali'' at 56th Bengaluru Ganesha Utsava,2018

 

今、日本語のサイトでもググってみたら、何と日本語版Wikiも発見、あらためてSPBのこれまでを辿ることができました。そうか、『シャンカラーバラナム~魅惑のメロディ』(1979)のJ.V.ソーマヤージュルが演じたテルグ語古典音楽歌手の歌も、SPBの声だったのですね。古典音楽専門の歌い手が歌っているのだとばかり、今まで思っていました。我々インド映画祭実行委員会が開催した1985年の<インド映画スーパーバザール/インド映画・春>では英語字幕で上映し、その後国際交流基金アジアセンターによる<インド映画祭2003>ではちゃんと日本語字幕を付けて上映された『シャンカラーバラナム』、どこかがDVDで出してくれないかな、と熱望する1本です。(下の写真はIMDbより)

S.P. Balasubrahmanyam

日本版Wikiによると、SPBは「世界で最も多く映画の曲を歌った男性歌手」というギネス記録を持っているとかで、16の言語で4万曲以上にのぼる歌を吹き込んでいるとか。新型コロナウィルスさえなければ、まだまだお元気で歌っていただろうに、と残念でなりません。ご自身、下のようなコロナ・ソングも作っていたとかで、いつ頃録画されたのかはわかりませんが、昨日の日付でYouTubeにアップされました。今はご冥福を祈るばかりです。SPB Sir, श्रद्धांजलि |

SP Balasubrahmanyam Song on Corona || SP Corona Song in Telugu || SP Balasubramaniam Last Song

 


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