アジア映画巡礼

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今日は「ワン」の日:『ラ・ワン』~その2~

2012-07-31 | インド映画

7月も今日で終わり。いよいよ『ラ・ワン』の公開日8月4日(土)が近づいてきました。7月31日もThirty-oneの日、ということで、今回は『ラ・ワン』のベースになっている「ラーマーヤナ」のお話などを少々。その前に宣伝担当のアップリンクさんから、インド版ポスターの画像が送られてきましたので、でで~ん!と公開してしまいます。

実はこのポスター、3月にインドに行った時ポスター屋さんで買い求めていて、9月23日(日)のナマステ・インディアでのトーク時にプレゼントで出します。あともう1枚、バッタもん(?)の『ラ・ワン』ポスターがありまして、それもプレゼント用に提供します。バッタもんだという理由は、寄せ集めのヴィジュアルで作られている上、中には『ラ・ワン』のスチールでない画像まで使ってある、という代物だからです。しかも、紙質は正規のポスターよりかなり落ちます。どうしてこういうポスターが存在するのかは、謎です。(解明するとヤバいことになるかも知れないので、今はそっとしておきます)

さて、「ラーマーヤナ」のお話でした。前にも書いたように、「ラ・ワン」というのは、「ラーマーヤナ」に出てくる魔王「ラーヴァナ」に通じる名前です。「ラーマーヤナ」がどういう物語かは、日本語のウィキに要領よく載っているので、こちらをご覧下さい。主人公は、ラーマ王子とその妻シーター姫で、重要な脇役としては、ラーマの弟ラクシュマナ、シーターに懸想して彼女をランカー島にさらって行く魔王ラーヴァナ、シーターの行方を捜すラーマに協力する猿の王国の武将ハヌマーンらがいます。

ところで、これらの固有名詞の読み方ですが、サンスクリット語風に読む時は最後の短母音の「ア」の音を出し、ヒンディー語風に読む時はそれを落とす、つまり子音終わりにするんですね。たとえば、こんな風です。

Rama ラーマ → Ram ラーム
Lakshmana ラクシュマナ → Lakshman ラクシュマン
Ravana (Rawana)
 ラーヴァナ(ラーワナ) → Ravan (Rawan) ラーヴァン(ラーワン)

あと、「V」と「W」は同じ文字で書かれ、その時々で発音し分けているので、「ラーヴァナ」は「ラーワナ」でもかまいません。というわけで、「ラーワナ」→「ラーワン」→「ラー・ワン(ヒンディー語のデーヴァナーガリー文字によるタイトルはこの読み方になる)」→「ラ・ワン」となるわけですね。

ラーワンは10の頭と20の手を持つと言われ、『ラ・ワン』の中でもラ・ワンがインドへとやってきた時、頭が10あるラーワンの張りぼて人形が焼かれようとするシーンが出てきます。これは、秋のお祭りダシャヘラー(10日間の祭り)の最終日に、ラームが放った矢でラーワンは倒され、人々はラームの勝利を祝う、という場面なのです。ラ・ワンを演じるアルジュン・ラームパールが出てくるこのシーンですね。

またラスト近くのラ・ワンとGワン対決シーンでは、ラ・ワンが10の分身に分かれて襲ってくる、というシーンがあります。これも、上記の「10の頭」が関係しているんですね。

「ラーマーヤナ」をベースにした映画は、文字通り掃いて捨てるほどあります。最近のものでは、東京国際映画祭で上映されたアビシェーク・バッチャン主演の『ラーヴァン』 (2010)。善と悪が裏返しになった、意欲的な作品でしたね。マニラトナム監督作なので同時製作のタミル語ヴァージョンもあり、こちらのタイトルは『ラーヴァナン』。主演は、『神さまがくれた娘』 (2011)のヴィクラムでした。

アニメーションでは、大ヒットした『ハヌマーン』 (2005/上)に、3D画像の『ラーマーヤナ:叙事詩』 (2010)、そしてインド初の長篇アニメと言ってよい日本人の手が加わった『ラーマーヤナ: ラーマ王子伝説』 (1992)など、こちらもたくさん並んでいます。また、1970年代までは実写の神様映画もよく作られ、そこでしばしばハヌマーンを演じていたのがダーラー・シンでした。レスラーだったのでガタイが立派なため、それはもうハマリ役だったのです。1987年のテレビドラマ「ラーマーヤン」でも、こんな風にハヌマーンを演じていました。それを真似したのが、『3バカに乾杯!』 (2009)の歌のシーンのアーミル・カーンです。

残念ながらダーラー・シンはつい先日、7月12日に84歳で亡くなってしまいました。彼の姿をご覧になりたい方は、お手元の『たとえ明日が来なくても』 (2003)を取り出して見て下さいませ。シャー・ルク・カーン演じるアマンの伯父さん、チャッダー・アンクルとして渋い演技を見せています。

最後に、ラ・ワン役のアルジュン・ラームパールについても少しだけ。本年11月26日で40歳になるアルジュン・ラームパールですが、日本公開作・上映作には、『ブラインド・ミッション』 (2002)、『さよならは言わないで』 (2006)、『DON 過去を消された男』 (2006)、『オーム・シャンティ・オーム』 (2007)があります。その他、見応えのある作品、私の好きな作品は以下の通り。

若いバンド野郎から中年ロッカーまでを演じる『ロック・オン(Rock on!) (2008)、政治家一家のサラブレッドでありながら、酷薄な面を持つ新進政治家役の『政治(Raajneeti)』 (2010)、そしてディーピカー・パードゥコーンのこわ~い兄貴を演じるコメディ『満員(Housefull)』 (2010)。年号のところをクリックしていただくと、予告編が見られます。いずれも主役ではないのですが、それぞれに達者な演技をしてくれていて満足度高し。『ラ・ワン』の次は『オーム・シャンティ・オーム』の公開が控えていますので、アルジュン・ファンの皆様、楽しみにお待ち下さいね~。

 


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2 コメント

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この写真のアルジュンが・・・ (nancy)
2012-08-01 19:01:53
めちゃくちゃ素敵です!
このフード付きの衣装がスターウォーズの衣装に似させたのかななんて思いましたが、顔に影を作って本当にカッコイイです。

アルジュンのシーンがもうちょっと多くても良かったかな~と思ったりしました。

またも奥深いお話ありがとうございました。
nancy様 (cinetama)
2012-08-01 21:36:36
続けてのコメント、ありがとうごさいました。

アルジュンのシーン、もっと多くてもよかった、というか、あの顔のままのシーンがもっと多くてもよかったですね。パーツに崩れてくれたりしなくてもいいのに~。
主演をしている映画ではあまり好きな作品はないのですが、脇に回るようになってからうまい役者さんになったと思います、アルジュン・ラームパール。『オーム・シャンティ・オーム』公開の時にゲストで呼んでくれませんかねー。でも、人気スターだから、やっぱりムリかなあ....。

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