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ヨン・サンホ監督に瞠目!<3>『新感染 ファイナル・エクスプレス』

2017-08-06 | 韓国映画

『我は神なり』(2013)、『ソウル・ステーション/パンデミック』(2016)とご紹介してきたヨン・サンホ監督作品。次はいよいよ、これらのアニメーション作品を土台にして、ヨン・サンホ監督が大きく飛躍を遂げた実写映画第1号、『新感染 ファイナル・エクスプレス』のご紹介です。まずは作品データをどうぞ。


『新感染 ファイナル・エクスプレス』 公式サイト 

 2016年/韓国/118分/原題:부산행(釜山行き)/英語題:Train to Busan
 監督:ヨン・サンホ
 出演:コン・ユ、キム・スアン、チョン・ユミ、マ・ドンソク、チェ・ウシク、アン・ソヒ
 配給:ツイン

9月1日(金)より新宿ピカデリーほか全国疾走!!


ストーリーは以前こちらでご紹介したので、今回は列車に乗り合わせた人々を列挙紹介する形にしてみました。 

[釜山行きの特急列車KTX101号に乗り合わせた人々]

©2016 NEXT ENTERTAINMENT WORLD & REDPETER FILM.All Rights Reserved.

●ソグ↑(コン・ユ)・・・・やり手の証券会社ファンドマネージャー。強引で、人のことなどあまり考えず、自分の考えを通す。家庭も顧みなかったため、妻は釜山の実家に帰ってしまい、離婚の危機に瀕している。小学生の娘スアンはソウルにとどまっているが、父よりも母を慕う。家事は、同居するソグの老いた母が引き受けている。
●スアン(キム・スアン)・・・・小学校低学年。母との別居が寂しく、自分の誕生日にはどうしても、母のいる釜山に行くと言い張る。学芸会には来ない上(せっかく「♫アロハ・オエ」を一生懸命斉唱したのに...)、とんちんかんな誕生日プレゼントを買ってきたりする父に、強い不信感を抱いている。
●ソンギョン(チョン・ユミ)・・・・大きなお腹をかかえた、間もなく臨月になろうかという妊婦。しっかり者で、夫サンファは彼女の言いなり。
●サンファ(マ・ドンソク)・・・・こわもての一瞬ヤクザかと思う男だが、妻ソンギョンとお腹の子への気遣いはハンパではなく、心根のやさしさが垣間見える。

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●ヨングク↑(チェ・ウシク)・・・・ソウルの高校の野球部員。遠征のためチームの仲間と一緒に列車に乗るが、ガールフレンドのジニが追いかけてきてみんなに冷やかされる。
●ジニ(アン・ソヒ)・・・・ロングヘアの、イマドキの女子高生。ヨングクが好きで、強引に遠征に加わる。
●ヨンソク(キム・ウィソン)・・・・中年の男性で、バス会社の偉いさん。自分のことしか考えない自己チュー男。
●ホームレスの男(チェ・グィファ)・・・・街中で起こったある恐怖から逃れようと、切符を持たず列車に乗り込んできた中年男。
●運転士(チョン・ソギョン)・・・・運転席にいたので車内の事件には気付かず、途中テジョン(大田)駅直前で入った列車無線によりおぼろげな状況を把握。何とか乗客を釜山まで運ぼうと奮闘する。 

[釜山行きの特急列車KTX101号の進路]
ソウル駅 → チョナン(天安)駅(天安牙山/チョナンアサン駅?) → テジョン(大田)駅 → 東テグ(東大邱/トンテグ)駅 →

路線図 

(地図はWiki「韓国高速鉄道(KTX)」より)

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本作が単なる際物ゾンビ映画ではなく、エンターテインメント性の高い感動大作となっているのは、何よりも人間ドラマがしっかりと描かれているからです。メインとなるのはソグとスアン父子の信頼回復の物語で、壮絶な体験によりソグが人として大きく成長していく姿が一つの見せ場となっています。一方、スアンは最初、両親の不和によりいじけている子のように見えたのですが、どうしてどうして、列車の中で見せるいろいろな気配りや深い意味を持つ発言は大人顔負けで感動的。スアン父子らが列車内を逃げ惑って、あるデッキに落ち着き、ソグがスアンを補助椅子に座らせたところ、老女が立っているのを目ざとく見つけたスアンはすぐに立っていき、「おばあさん、座って下さい」と老女を座らせようとします。直後にソグから、「人のことなど考えなくていい、我が身をまず守るんだ」と言われますが、観客の心はここでスアンに大きく傾きます。そのほか、「外見で人を差別してはいけないんだよ」とホームレスを見つけた乗務員に言ったりと、スアンが実に魅力的な女の子に描かれていて、観客の心は揺さぶられます。演じているキム・スアンは当時まだ10歳。その素直な演技の素晴らしさは、絶対に見逃せません。

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スアン父子と共に本作の柱となっているのが、チョン・ユミとマ・ドンソクが演じるソンギョン&サンファの夫婦。男前な奥さんと、男の中の男という感じながら奥さんには弱い旦那という組み合わせが絶妙で、映画の奥行きをぐっと広げてくれます。ケンカ慣れしたサンファがいなければ、弱っちいサラリーマンであるソグは到底ゾンビ集団とは闘えず、この物語も成立しなくなってしまいますが、うまい人物造形とその組み合わせで、映画は一瞬たりとも気が抜けないエンタメ秀作に仕上がりました。

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もちろん、ゾンビあっての本作ですが、『ソウル・ステーション/パンデミック』よりはゾンビの誕生経緯に触れられているものの、その描き方は割と画一的です。ただ、列車内での闘いというアイディアは秀逸で、閉鎖空間の、しかもタテ移動しかできない中でどうやって闘っていくのか、という点がとってもスリリング。また、ゾンビと闘う過程で彼らの弱点を発見していくくだりも面白く、細部にわたるまで神経が行き届いた、近年では出色のエンタメ作品なのでした。

それにしても今回も、本当によく練られた脚本だと、思い返すたびに舌を巻いてしまいます。二度目だったにもかかわらず、見ている間中肩や腕に力が入りまくりで、見終わったとたんどっと疲れました。こんな体験のできる映画は、そうそう多くありません。「must see!」の1本、大画面でぜひご覧下さい! 最後に予告編を付けておきます。

『新感染 ファイナル・エクスプレス』予告編

 

 

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