シネマ見どころ

映画のおもしろさを広くみなさんに知って頂き、少しでも多くの方々に映画館へ足を運んで頂こうという趣旨で立ち上げました。

ラストレシピ 麒麟の舌の記憶(2017年日本映画)

2017年11月15日 | 映画の感想・批評
 「おくりびと」(2008年)でアメリカのアカデミー賞外国語映画賞を受賞した滝田洋二郎監督と、「母と暮らせば」(2015年)で日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞した二宮和也の初タッグが話題の本作「ラストレシピ 麒麟の舌の記憶」、食べてから観るか?観てから食べるか?出来れば食べてから観ることをおススメしたい。映画に登場する料理の数々がどれもこれも美味しそうで、食いしん坊な人は映画のストーリーより料理の方が気になって仕方がないかもしれない。
 幼い時に両親を亡くした絶対味覚=麒麟の舌を持つ天才料理人・佐々木充は、自らの才能を頼りに起業するも事業に失敗し、多額の負債を抱え、料理への情熱も失いつつある。依頼人の「人生最後に食べたい料理」を再現して得た高額な報酬で借金の返済を続けている。そんな充に、1930年代の満洲国で元・天皇の料理番だった山形直太郎が考案したという伝説のフルコース「大日本帝国食菜全席」のレシピを再現してほしいという、巨額の依頼が舞い込む。
 1930年代、山形直太郎は国命を受けて「満漢全席」を超える「大日本帝国食菜全席」のメニュー開発のため、妻の千鶴とともに満洲国に移住する。直太郎もまた絶対味覚=麒麟の舌を持つ天才料理人だった。世界中の食材が集まる満洲で日本と他国の料理を融合し、新たなレシピを生み出し「料理をもって和を成せる」と考えるようになる。そんな直太郎に関東軍司令部の陸軍大佐から、天皇の満洲国行幸が決定し晩餐会で直太郎の考案したレシピをお披露目すると聞かされるが、その裏には日本軍部の陰謀が隠されていた。
 レシピの行方を追う現代のパートより、1930年代の満洲でのパートの方が正直面白かった。食材や調味料などを工夫しながら次々とレシピを作り出していく過程や、直太郎と助手となった満洲人の楊清明や日本人青年鎌田正太郎との絆が深まっていく様子など、千鶴を含めた4人のチームワークがいい感じだ。ただ、「大日本帝国食菜全席」という壮大な構想に比べて、日本軍部の陰謀というのがちょっとお粗末な気はしたのだが…。
 戦時下の混乱で消息を絶った直太郎と、「大日本帝国食菜全席」のレシピはどうなったのか。映画は過去と現代を行ったり来たりして、少しずつ謎が明らかにされていく。「料理とは食べた人を幸せにするもの」という直太郎の思いが、いまや借金を返すために料理を作る充の心にも料理への愛を呼びもどすことができるのか。それにしても料理が重要な役割を果たす映画やドラマ、どんなに美味しそうに見えても味や香りまで伝わってこないのが難点だ。(久)

監督:滝田洋二郎
脚本:林民夫
原作:田中経一(幻冬舎文庫)
撮影:大嶋良教
出演:二宮和也、西島秀俊、綾野剛、宮崎あおい、竹野内豊、伊川東吾、笈川ヨシ
   西畑大吾、兼松若人、竹嶋康成、広澤草、グレッグ・デール、ボブ・ワーリー、大地康雄


最新の画像もっと見る

コメントを投稿