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「犬も食わねどチャーリーは笑う」(2022年 日本映画)

2022年10月12日 | 映画の感想・批評


 結婚生活4年目の夫婦の物語。ただ、ラブラブだと思っていたのは旦那(香取慎吾)だけだった。妻(岸井ゆきの)の不満は、お互いに働いているのに、旦那が家事を全くしないこと。脱いだら脱ぎっぱなし、妻のテレフォンオペレーター業務を誰でも出来る仕事と言ったり、料理はしないのに、ゆっくりしたい休日に勝手なリクエストを言ったり・・・。妻の不満は溜まる一方。その不満を妻は「旦那デスノート」というSNSに書き込んで、うっぷんを晴らしていたのである。偶然、旦那はその存在を知ってしまう。二人で飼うフクロウの名前(チャーリー)がペンネームで、身に覚えがある出来事が綴られていて、間違いないと確信する。さあ、夫婦喧嘩の幕が切って落とされる・・・。
 タイトルの「笑う」の「笑」の文字が反転している。「笑えない」という意味か。笑う=コメディではなく、ブラックコメディ。いいえ、ホラーの領域か・・・。確かに、書き込んでいたのが妻だったと分かってからの家の雰囲気は一変。家でも、常に緊張状態。これは、確かにホラーである。
 ただ、出会った頃を思い出し、それでは駄目だと反省し、二人は歩み出す。希望を持てるエンディングだった。空中にふわふわ浮いたレジ袋を二人で意味なく追いかける。結婚前は掴めなかったが、今回は苦労して掴むことが出来る。「掴もう」(=「理解しよう」)とするその気持ちが大事。どんなことでも、二人でトライしたことに意味がある。
 劇中にもあるが、結婚すると「夫婦」という「システム」に安堵してしまって、相手を想う気持ちが薄れてしまうのだろうか。一番身近にいる筈の夫婦が、相手をよく見ていなかった。理解していなかった。感じていなかった。一番、傍にいてほしい時に逃げていた。身につまされた。私は一人で観たが、これは夫婦で観た方が良いかも。捉え方は人それぞれなので、夫婦でもポイントは違うかもしれない。もし、ポイントが違っていたら、そこを修正する。それを小まめにする。修正点が大きくなってからだと、手遅れになってしまうかもしれない・・・。ただ、それを理解していても中々出来ない。何故だろうか。「夫婦」だから???
 香取慎吾が勤務するホームセンターの社員役の余貴美子がいい味を出していた。間抜けなようで、気付きを与えてくれるしっかり者の役柄。実は、彼女も旦那デスノートに書き込んでいた。チャーリー名の旦那デスノートを面白いと職場で香取慎吾に見せたのが話の発端でもある。
(kenya)

原作:市井点線『犬も食わねどチャーリーは笑う』
監督・脚本:市井昌秀
撮影:伊集守忠
出演:香取慎吾、岸井ゆきの、井之脇海、的場浩司、眞島秀和、きたろう、浅田美代子、余貴美子