アルト・サックス

　久しぶりに来たお客さんの息子さんが今年高校1年生になったとか。

　私　「高校で何かクラブに入ったん？」
　お客「うん、吹奏部」
　私　「へえ、水槽に入って何すんのん？藻の掃除でもするんか？」
　お客「とぼけて、もう。吹奏学部や！」
　私　「ああ、吹奏楽部かいな。音楽が好きやねんなあ」
　お客「そやねん。でもそのクラブ、男一人やて言うてたわ」
　私　「へえ、女の子ばっかりかいな。モテよ思て、女目当てに入ったのと違うの」
　お客「うちの息子は奥手やから、それはないわ」
　私　「それで吹奏楽部で何の楽器を演奏してんのん？」
　お客「サックスや」
　私　「セックス？やっぱり女目当てやん」
　お客「違う、サックスや！アルト・サックスや」
　私　「ああ、アルト・サックスかいな。吹奏楽部でアルトがあると無いとでは違うなあ」
　お客「でも25万円もしたんやで。えらい出費や」
　私　「なんや親が買(コ)うたんかいな。バイトしてないんかいな？」
　お客「そうや。小遣いと学費に部費、金掛かるのにアルト・サックスやろ。しんどいで」
　私　「楽器ぐらいバイトで買わんな。『いつまでも、アルト思うな!親と金』て息子に言うときや」

　一句：吹奏部　アルトないでは　大違い

再婚のススメ

　当店は独り者のお客さんが多い。独りの部屋は淋しいから温もりを求めて来ている。　

　私 「Aさんは離婚してだいぶなるなあ」　
　客A「そうや、独身になって長いわ」
　私 「独りは淋しいやろ、再婚しーや」
　客A「俺、収入少ないから再婚でけへんねん」
　私 「それやったら『私が面倒見たろか』という様な太っ腹な女性を探しーや」
　客A「そんな太っ腹なエエ女性(ヒト)、どこかにいてへんか？」
　私 「B子さんはどうや？太っ腹やで」
　客A「あの人はただ単にメタボなだけやん」

　一句：再婚で　逆玉のれば　さいこん(最高)や

客を弄(イラ)う

　普段オシャレに無頓着なお客さんが珍しく、真新しいマドラスチェックの半袖シャツを着てきた。

　ママ「オシャレやん。流行の先端をいってるなあ」
　お客「最近、買(コ)うてん」
　ママ「そやろ思たわ。どこで買(コ)うたん？」
　私　「古着屋でか？」
　お客「なんでやねん、流行の先端をいってるんやで」
　私　「流行は10年サイクルて言うやろ。丁度、10年前の服と違うか？」
　ママ「まあまあ、冗談はおいといて…。一体、なんぼで買(コ)うたん？」
　私　「500円でか?」
　お客「なんでやねん、そんな値段で売ってないわ」
　ママ「上手に買(コ)うたやん」
　お客「まだ(値段を)言うてへん！」

　一句：古店や　夫婦でボケて　客弄う

先入観

　我が家の老車ベンツにまた不具合が出た。
　先々月はグローブボックスのフタが閉まらなくなり修理をしたばかりなのに、先週はサイドブレーキ解除レバーのグリップ(取っ手)が折れた。
　これを修理するにはダッシュボード全体を取り外さなくてはならないので大がかりになり修理代が高くつく。
　何かいい方法が無いかと悩んでいる時に、たまたまテレビの通販で『○○パティ』という強力接着剤を目にした。
　送料込みで約3900円、接着剤にしては高いが修理に出すよりは安いと思い早速注文した。
　そして昨日、ダッシュボードにくっつかないように工夫を施して解除レバーの金具とグリップを接着し、完全乾燥まで1日おいた。
　満を持して待った今日の昼、恐るおそるサイドブレーキ解除レバーのグリップを引っ張ってみると外れない。
　「いけたー！」
　と喜んだのも束の間、3回目の操作で外れた。仕方なく、家にあった瞬間接着剤で応急手当てをした。
　夜、付き合いで飲みに行った帰り、運転代行を利用したがグリップは問題無く操作でき、運転手は何も気付かず普通に運転していた。
　安価な瞬間接着剤では荷重のかかる部品の接着はダメだと思っていたが、何事も先入観で決めつけないで先ず手元にあるモノで先ずは試してみるもんだと思い知らされた。
　
　一句：先入観　除いてみると　新発見

パ行

　昨日、テレビを見ていたら漫才師・シャンプーハットの小出水君が「兄が買っていたインコの名前はピコ」と言った。それを見ていた妻が一言…
　妻「ピコて、以前、家で飼っていた猫の名前と一緒やなあ」
　私「ピコにピヨにペペにポポに…、後は忘れたけど6匹ともパ行やったなあ」
　妻「みんな、私が付けてん」
　私「そうやったなあ。俺にもパパて呼んでたもんなあ」
　妻「それは世間一般の呼び方や」

　一句：パピプペット　パ行の名前が　愛らしい

貯める

　若い女の子、ポッチャリ系のA子ちゃんと派手目のY子ちゃんが来た。Y子ちゃんは沖縄に行きたいと言っていた。

　A子「Y子ちゃんはえらいで、沖縄に行きたい為にお金を貯めてるねん」
　私　「見かけによらんなあ。いつも派手やから貯金なんかせーへんと思てたわ」
　Y子「見かけで判断せんといてよ、マスター」
　私　「ええ事やで、何かの為に何かを貯める事は」
　A子「私も何か目標を持たんなアカンなあ」
　私　「そうやなあ、A子ちゃんは相撲の為に脂肪を貯める。これ、どうや」
　A子「やめてよ、マスター。・・・わたし・・・脂肪は十分に溜まってるでぇ」
　私　「ホンマやなあ」
　A子「高校の時のしぼう(志望)は相撲部やった。どすこい、どすこい」
　私　「A子ちゃんは面白いなあ、この店のしほう(至宝)や」

　一句：どすこいの　かけ声響く　居酒場所

地デジ

　72歳のお客のTさんが地デジの事を言い出した。

　客T「そろそろ地デジやなあ」
　私 「キレジ？俺もそうやけど、ウンチする時たまらんなあ」
　客T「違う、地デジやがな。テレビを買い替えよかなあ、思てんねん」
　私 「地デジに変わる寸前まで待ちーや」
　客T「そうか？何か訳でもあるんかいな」
　私 「Tさん歳やろ。今、買い替えても地デジに代わる寸前に死んでしもたら勿体ないやん」
　ママ「もう、マスターは。お客さんを殺したらアカンやん。身体を心配してあげんな…」
　客T「優しいなあ、ママは…」
　私　「ホントは、お客さんが一人減るのが心配やねんやろ」
　ママ「そうや、わかる？」
　客T「なんや、夫婦揃て」
　
　一句：地デジ化で　情報増えて　話題増え

福山雅治“milk tea”

　お客のS君(42歳)が聞き慣れない歌を唄った。

　私　「エエ曲やなあ。これ、題は何？」
　お客「milk tea　や」
　私　「誰が唄(ウト)うてんの？」
　お客「福山雅治や。女性に人気あるやろ」
　私　「福山雅治かいな。今、龍馬伝に出演してるなあ。坂本龍馬で一層人気が出てるで」
　お客「俺、同世代や」
　私　「坂本龍馬と、か？」
　お客「なんでやねん！俺、一体何歳やねん」
　私　「はくさい！」
　お客「俺、野菜と違うで！」
　私　「歯、臭い！て言うてん」
　お客「ちゃんと歯は磨いてるっちゅうねん！マスターには参るわ」
　私　「ミルクティーだけに、紅茶ん(降参)しーや」
　お客「ほんだら24年前に戻るわ。高3(降参)！」

　一句：初デート　フレッシュ・カップルで　ミルクティー

中一の母親

　共に中一の子供を持つ母親同士の会話。

　母A「子供がなんやかんや聞いてけーへん？政治とか…」
　私 「生理？」
　母A「違う、うちの子は男やで。政治とか歴史とか…」
　母B「うちとこは私が勉強を見たろかて言うたら『ママ見て分かるんか』て言われるね」
　母A「中一ともなると難しいわ。教科書見てもチンプンカンプン。これ何？って感じ」
　母B「子供は『ママ、問題自体分かってないやん』て言うねん」
　母A「数学やけど証明って知ってる？」
　母B「しょうめい？」
　私 「照明は電機屋に行ったら売ってるわ」

　一句：子の成長　喜べど母　置き去りに

すきま産業

　久しぶりのお客さんが来た。

　私　「久しぶりやなあ」
　お客「会社を辞めて独立したから、バタバタしててん」
　私　「何の仕事やってんのん？」
　お客「パソコンの修理業やってんねん」
　私　「パソコン、よう売れてるから儲かるやろ」
　お客「アカン、ヒマやわ。僕らの仕事はすきま産業やから…」
　私　「俺も、すきま産業や。ハゲ・ネタで仕事してんねん」と頭のてっぺんを見せると…
　お客「ホンマやなあ、すきまだらけやなあ」　

　一句：すきまヘア　すきま産業　すきま風