洗脳

　お客のFさんは音楽が好きで、来月は堺市民会館で開催するMISIAのコンサートに行くとか。

　客F 「マスターはコンサートに行った事があるの？」
　私　「俺はコンサートは行かんけど、よう考えたら昔、1回だけあったわ」
　客F 「誰の？」
　私　「神秘的な世界へいざなうシンセサイザー演奏…みたいなチラシを見て行ってん」
　客F 「それ、よかった？」
　私　「シンセサイザーの演奏やダンスや髭面のおっさんが舞台で訳が分からん宗教じみた事をやってたわ。一緒に連れて行った嫁さんが怒ってたわ」
　ママ「ほんまやで、訳が分からんかったし入場料が6500円もしたし、しょうもなかったわ」
　私　「帰る時にパンフレットと安っぽいバッジをもろたけど、全然値打ちが無かったわ」
　客F 「結局、誰のコンサートか分かれへんかったん？」
　ママ「その時はチラシには名前書いてかけど、知らん名前やったので覚えてなかってん」
　私　「その3年後に横浜の坂本弁護士一家殺害事件が発覚して、麻原彰晃て分かってん」
　客F 「へえ、オウム真理教の麻原彰晃かいな」
　ママ「そうやで、それを知った時はビックリしたわ」
　私　「実行犯が遺留品として残したプルシャはコンサートの時にもろたバッジやってん」
　客F 「へえ、そのバッジまだあるの？」
　私　「話題になると探したけど、もろた時はしょうもない思て、どっかにやってしもたわ」
　ママ「ああいうコンサートを開いて客を集め、共鳴した人をオウムに勧誘してたんやろね」
　私　「コンサート、しょうもなかって良かったわ。もしかしたら入信してたかも…」
　客F 「大体、高学歴の人が洗脳されやすいね」
　私　「そう、センノウ…♪センノウ風になって～、センノウ風になって～」
　ママ「それは千の風やろ、違うやん」
　私　「堺にいてた茶人は…、せんのう利休やったなあ」
　ママ「F君が言うてるのんはマインドコントロールの洗脳や」
　私　「ああ、そういう事かいな。ほんだら(大学出身の)F君は洗脳されやすいなあ」
　ママ「なんで？」
　私　「最近俺とこの店、よう来てるやん」
　客F 「いえ、僕は洗脳されたんじゃなく、好きで飲みに来てるだけやで」
　ママ「店が暇やから、可哀想にと思て来てるんやろ？」
　私　「それが洗脳や。店が暇なように装って店に来るように仕向けてるんや」
　ママ「何を寝ぼけた事を言うてんのん。店は本当に暇やんか」

　一句：洗脳で　カルト教団　信者増え
　謎かけ：洗脳とかけて、ピカピカの床と解く。どちらも(吹き込まれて・拭き込まれて)います