おしぼり

　ビールを飲んでいたお客さんが、頻繁にトイレに行き出した。当店はその都度、おしぼりを出すので彼は気を使った。

　お客「マスター、おしぼり、もうエエで。俺、トイレによう行くから気ぃ使うわ」
　私　「気ぃ使いなや、ちゃんと伝票に付けとくから」
　お客「何やて～！おしぼり代、取るんか？」
　私　「冗談や。まあ、おしぼり屋に見栄をはらんなアカンからぎょうさん使(ツコ)うてや」
　お客「どういうこと？」
　私　「おしぼりの使用量が少なかったら、店がヒマやと思われるやろ」
　お客「なるほど、そういう事かいな。しやけど俺、酒飲んでトイレ行き出したらよう行くねん。普段はあんまりトイレに行けへんねんけどなあ」
　私　「俺も一緒や。トイレ行けへんかったら一年でも行けへんねん」
　お客「オーバーやなあ。ほんだらどないして水分を排出してるのん？」
　私　「俺、汗かきやから汗で出してんねん」
　お客「そんなんで、間に合えへんで」
　私　「いつも嫁はんにしぼられてんねん。しょっちゅう冷汗をかき過ぎてオシッコも出ーへんわ」
　お客「ホンマかいな」

　一句：店ヒマで　溜まる一方　おしぼりが
　謎かけ：おしぼりとかけて、吹き矢の筒と解く。どちらも(拭く・吹く)時に使います