玉城知事は、防衛局が辺野古新基地建設事業の設計概要変更申請を提出したことに対して、遺憾の意を表明したものの次のようにコメントした。
「公有水面埋立法に基づき、設計概要の変更に 係る申請書が提出された以上、法律による行政の原理の下、当該申請に対する審査を行う必要があることから、申請書の内容 を精査した上で、法令に則り、厳正に対応してまいりたいと考 えております。」（本年4月21日の知事コメント）
しかし、このまま変更申請の審査に入ることは納得できない。沖縄平和市民連絡会は4月28日、今回の変更申請提出を受けて知事宛の緊急要請書を提出した。そこでは今回の変更申請の問題点を指摘しながらも、その前提として、①抗告訴訟が終結するまでは、辺野古新基地建設事業に関する全ての許認可・協議を保留するという方針を続けること、②県民投票の民意を受けて埋立承認を「再撤回」すること等を求めている。
ここでは「再撤回」の必要性について指摘したい。沖縄平和市民連絡会は、昨年5月23日にも、沖縄県に「県民投票で示された民意をもとに埋立承認を『再撤回』するよう申入れた。その際、県は次のように回答した。
・「昨今、再撤回という県民の声があることは承知しています。しかし、県の考えは、昨年８月の承認撤回は有効だという認識に立っている。そういう立場をとっているときに再撤回すれば、国の裁決を県は納得したということになってしまう。」
・「最高裁で決着するまでは再度の撤回はできないと判断しています。県が最高裁で敗訴した場合は、再度の撤回を検討することができる。」
県は昨年７月、「（関与取消訴訟について）司法の最終判断が出されるまでは、辺野古新基地建設事業に関する全ての許認可・協議を保留する」という方針を出した（下に添付）。この対象には、辺野古新基地建設事業に関する沖縄防衛局長からの全ての申請（サンゴ類の特別採捕許可申請、公共用財産使用協議、赤土等流出防止条例に関する協議、土砂条例の協議等）が含まれている。防衛局の設計概要変更申請提出が最高裁判決よりも以前であれば、当然、設計概要変更申請も審査に入らずに保留するということになったはずである。
最高裁は本年3月26日、関与取消訴訟で県の上告を棄却した。しかしこの判決は、「国も行政不服審査法を利用することができる」としたものにすぎず、県の埋立承認撤回を違法としたものではない。県は今も抗告訴訟を争っており、「撤回は有効だという立場に立っている」ことに変わりはないはずである。県は、関与取消訴訟の敗訴を受けて、上記方針は終了したのか、あるいは継続するのかということを示していない。
沖縄平和市民連絡会の本年4月28日の要請は、この方針を抗告訴訟終了まで継続するよう求めたものである。
本年3月27日、県民投票の会の元メンバーらが知事に面談して埋立承認の再撤回を要請した。その際、知事は、「抗告訴訟が続いている間、県の主張は正当だという立場だ。その間は再撤回できない」「抗告訴訟の後、再撤回することは『一つの手段』だ」と回答したという（2010.3.28 琉球新報）。
そうであれば、上記方針は継続するということを表明しなければならない。しかし、今回、設計概要変更申請の審査に入るというのであれば、上記方針は終了したということになる。一方では、「抗告訴訟が続いている間、県の撤回は有効だという立場だ」として「再撤回」の要求を拒否しながら、設計概要変更申請の審査に入るというのは全く矛盾している。
県は、設計概要変更申請の審査に入るのではなく、県民投票で示された民意をもとに、埋立承認を「再撤回」するべきである。抗告訴訟はまだ１～２年かかることから、抗告訴訟が終了した時点ではもう県民投票の民意を理由として「再撤回」はできない。
もちろん、今回の最高裁判決を受け、国は県が「再撤回」しても、すぐに行政不服審査を行って県の「再撤回」を無効としてしまうだろう。しかしそれは、抗告訴訟が終了した後に「再撤回」しても同じことだ。
それでも「再撤回」により、約１ケ月ほどは工事が止まる。そして何よりも「再撤回」は、知事の決意を示し、沖縄県民の怒りを示す手段でもあるのだ。
トータル
