ちゅうたしげる詩集

2007年10月10日 20時36分51秒 | ちゅうたしげる詩集
                                        ”
写真・詩 ちゅうたしげる
     一九五八年生れ
     一九八二年 高知大学教育学部卒業
     二〇〇三年 「ちゅうたしげる作品集」出版
     二〇〇七年 「ちゅうたしげる詩集」初版


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サギⅡ

2007年10月10日 20時22分26秒 | ちゅうたしげる詩集
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糸電話の『信号』----自由よおまえは

2007年10月10日 19時51分21秒 | ちゅうたしげる詩集
                                        ”
自由よ
おまえは幼いのか
この糸電話は少々混乱しているようだから雑音が入る
それにわたしはおまえのようにうまくはしゃべれないから
伝えようにも伝わらない

おまえにもし出会ったのだとしても
このわたしに「喜び」などというものはない
それはおまえにもわかっていることだろう

おまえが闇に囚われたものだとしても
わたしは驚かない
わたしとおまえは出自が異なる

おまえにも在ったことだろう
意識をはじめて自在にあやつることをおぼえた
ほんの生まれたばかりのころに
薄暗い闇の中で(そこには若い父親と母親がいたかもしれないが)
豆電球に映る大人たちの背後に
世界のしきたりと成り立ちがたしかに読み取れる
その時だ
おまえはあちらに進み
わたしは反対にこうでしかなかった

世界の滅亡を望むおまえだから
はじめからおまえは黒を纏っていたのだろう

それに 自由よ
おまえは一度、いや二度
わたしを焼き滅ぼしたではないか

もはやおまえとわたしの間に「歓喜」などあろうはずもない
だが
おまえはまだ幼い(わたしと違って・・・)

滅ぶなら滅ぶための論理を
廃墟には廃墟に流れる”歌”を

その論理によって照らせ
すべてはそれによって検証される
と 彼の人は言う

いまわたしは心の底で冬を待つ準備をはじめた

「所有」という「所有」を
捨て去れ

もしおまえに目が見え 耳が聞こえるなら
そう
冬にはおまえにわたしの声を届けたいと思っている

若い日に歌った歌を届けたいと思っている






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冬の鴨

2007年10月10日 19時31分29秒 | ちゅうたしげる詩集
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ジョウリキリ

2007年10月10日 19時20分57秒 | ちゅうたしげる詩集
                                        ”
 夏の日射しが照りつける小道の端に、鮮やかな青色と黄色と赤色の鱗を光らせているトカゲ。村の人達はそれを「ジョウリキリ」と呼んだ。幼いおれは、俊敏な動きに原色の陰影を残して、石垣に逃げ込んだ「ジョウリキリ」を見つめていた。夏の真昼時。家ではひいばあさんが大きな腰を上げて昼飯の用意をした。村の生活は、昔と変わらなかった。何代も前のこの家の人達も鮮やかな色のトカゲのことを「ジョウリキリ」と呼んだだろう。もちろんこの家の廻りには、蛇の主もいた。庭には、蟻が群れていた。納屋の土壁には、土蜂が巣を作っていた。

 今年の夏は岩陰にジョウリキリを見ない。その代わりに散歩の途中で木苺をとって食べていた時に、細い道の横の草影にかすかに動くジョウリキリを見たような気がする。しかしそれは夏の光線に輝く虹色の鱗ではない。そしておれはもはや幼年ではない。壮年の男だ。何十年も年月は隔たっていた。今年我が家は土蔵を建て代えた。傾きかけた古い土蔵を取り壊し、真新しい、白い壁の土蔵が気持ちよく屋敷の前に建てられた。古い土蔵は、建てられてから百数十年経っていた。人は何か貴重なものが土蔵に隠されていなかったかと、蔵を建てるという行為に話の花を添えた。

 今年も盆がやって来る。先祖の霊が里帰りをするという。我が家に里帰りした八十才の老婆は、記憶を失っていた。生家の記憶は、遠い昔のことでしかなかった。かすかに、床の間に飾られた死んだおれのひいばあさんの姿だけおぼろげに思い返すことができた。なぜだか懐かしいと言って、一晩泊まった。しかし、老婆の記憶はよみがえりはしない。

 あの夏の日射しに鮮やかな鱗を光らせたジョウリキリはどこへ行ったか。土のなかで朽ちたか。それとも世代を交代したか。

 生々しい夏の記憶を失ったのは、おれなのだ。もはやあの夏は存在しない。過ぎ去った過去をかすかに記憶に呼び起こして、心を慰めているのは、壮年のおれ。おれは、夏を感じる感覚を失った。幼い日のジョウリキリの鮮やかな光は失われた。時は失われて、二度と再びよみがえることはない。あすの日を想定することさえできなくなった壮年のおれは、時とともに崩れ去る世界の残響を耳の奥に聞きながら三十八才の夏を迎えた。

 悲しみも苦しみもそして存在したかもしれない喜びも、夏の光線に焼かれた影のように移ろい行き、記憶が記憶でなくなって、意識がたよりない波に浮かぶ小舟のように漂い、生はもはや生ではなくなって、現実が現実でなくなって、残酷な時の流れに意識の小舟を浮かべているに過ぎない。哀れというよりほかないのがこの世の存在だろう。孤独な命は、他の命とどこまでも交わることはなかった。おれの魂はきっと、冷酷な唯物論を受け入れることはできないだろう。三十八才の夏の、喪失した存在感のなかで、悲しみに溺れることができればまだ幸せだった。悲しみでさえもない。無味乾燥した、この夏を行く。





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胸の小鳥

2007年10月10日 14時55分48秒 | ちゅうたしげる詩集
                                        ”
 胸の小鳥が騒ぐので、おれは夢の林に入って行った。

 道端にはきのこが腐れ果てていた。木は褐色の葉をぱらぱらと振り落とす。獣の糞が石の上に落ちている。胸の小鳥はおれの喉を突き破って林の奥に飛び立った。

 谷の流れが聞こえる。苔むした大木がひっそりと立っている。その木に蔦が空に向かって絡まっている。その蔦の葉に黒い虫がうごめいていた。
 こんな処にシンデラ姫はいないだろう。七人の小人の家もないだろう。もちろんおれは魔女でも王子でもない。童話の世界はいつもハッピーエンド。
 この道はパッピーエンドに終わらない。終わりのない終わり。

 その昔、おれが南国の街で革命運動の活動に没頭して、あたら若い日々をむやみに浪費していた頃、この森の向こうの空は晴れ上がって汚されることのない清浄な空気が村を包んでいた。村人は秋の取り入れに忙しく働いて、この森に入る者は誰もいなかった。きのこは生えるだけ生えたら、ひとりでに気象の変化とともに朽ちていった。獣たちは森の豊かさに守られて幸福に棲息していた。夜明とともに木々のこずえから小鳥がかまびすしく鳴き、森に反響させた。

 一羽の小鳥がおれの胸に棲み着いたのはいつごろだったろうか。おれは小鳥を抱いたまま街を捨て、村に舞い戻った。それから、おれは日課のようにこの森を散策して、胸の小鳥を解き放つのだった。だが夜になったらいつの間にかその小鳥は暗い森を抜けだしてねぐらを求めておれの胸に帰ってくる。おれは二十代のほとんどの日々をそうして過ごしたのだ。

 ある春先の雪の日。大輪の花のような重い雪が森に降りそそいだ。寒い冬に耐えて木々は凍結していたままだった。森の奥から張り裂けるような音を発して雪の重さに耐えかねた木の幹が折れていった。雪崩のように折れた木は次の木の上に倒れかかり、次々と森は爆音とともに崩れていった。無残に折れた切り口からきつい芳香が流れた。

 その日の夜、胸の小鳥はおれのもとを去ったまま戻ってこなかった。おれは独り夜が明けるまで小鳥の帰りを待った。しかし小鳥は戻ってこなかった。

 それから季節はめぐりおれは鳥のことをいつの間にか忘れ去っていた。結婚して子どもも産まれ、おれは毎日仕事に出て、そして夜は家族とともに幸せな団欒を過ごした。森に入ることもなかった。おれは気がついたら三十才を越えていた。

 ある日、頭痛がするのを覚えた。きりきりと痛む。おれは頭の手術をすることになった。頭蓋骨を切り取って脳を調べたのだ。
 切り取った頭のなかから出てきたものを医者は手にとって見せた。

 それは朽ち果てた鳥の死骸だった。






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サギ Ⅰ

2007年10月09日 13時22分04秒 | ちゅうたしげる詩集
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性毛の群れ---あの世の光景

2007年10月09日 12時19分57秒 | ちゅうたしげる詩集
                                        ”
 今日も一日 眠ってしまった 闇に輝く 電球を追って集まるのは夏の虫ではなく 私のからだから抜けだした 魂 踊るロックのリズムにあわせて今宵 晩秋の長夜が解き放つ 光り 足 足 素足の悦び 少女の脚に咲く黒い花 どこからでも攻め込んでくる夜の武者たち 闇の言葉 詩 視 死 死者の魂たち たぶんあの世は魂たちであふれている セックスを繰り返す魂たちの群れ 飛び交う眼と気体の塊 神々たちの交感は直接にセックスではないのか 狂気の発祥の地はすべて天国の物語で満ちている 拒否することのできない生命力 権利という言葉 あの世で再会することのできた恋人たち 苦難を背負ってあの世に旅立った若い殉教者たち 歌うことを忘れたカナリヤではなく詩人の唇 たぶん魂は気体と陰毛でできているそして臭う 陰毛の群れ 禿頭にヘアーを植え付けてはならない そこは神々の住むところ 少女の手を握ってはならない そこは火花の飛ぶ性器 胸打つ鼓動の聞こえてくる精気漂う聖なる個所 性のための叢生





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入江

2007年10月09日 11時53分42秒 | ちゅうたしげる詩集
                                        ”
その入江には
番いのとんびが棲んでいた
海にはサザエとウニが棲み
魚が群れていた
波は静かに打ち寄せ
海の底が透けて見えた
岸壁は億年の風雪で侵食し
崖の上には草原が広がっていた
人は漁に精だし
裸で一日を過ごした
夜は月と星が輝き
朝露は若い男女を濡らした
そうして年月は過ぎ
入江のとんびは数世代を経
その間人々の炊く焚火の煙は
入江から消えることはなかった





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This is a land.

2007年10月09日 11時45分28秒 | ちゅうたしげる詩集
                                        ”
There is a plain.
There is a road.
There is a forest.
There is a couple of man and woman.

In the morning, the sun rise.
In the afternoon, the sun set.
In the night, the man and woman love with
Each other.

That is a land.
This is a land.




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光がある

2007年10月09日 11時35分32秒 | ちゅうたしげる詩集
                                        ”
光がある
ラジオからポップスが聞こえてくる
風はなく
静かな川の流れに緑葉が映り
今年の夏も終わりを予感させる
行楽に疲れた人よ
心を休めるためにわたしの故郷で時の移り行きを感じなさい
わたしの友は皆旅立ち
音沙汰もなく
夏の終わりの一日を歩き通した人々
夏の休暇は寂しい別れを用意して
変わらないのはわたしの故郷の景色だけ
世の中の憂さを晴らすことは永久にできないが
一時の幸福と慰めを
夏の一日の終わりに見つけることはできる
労働の終わりの慰めを
村人たちと分かつ時
明日の平安を望む心が
一羽の白い鳥に託されて
村の西の空へ駆けて行く
子どもたちはまだ遊びに夢中で
静かな静かな夕暮れを待つ
あまりに現代的な家々
三十年後にこの景色があるかどうか
誰にもわからない
確かに見出すのは
一時の心の安らぎ
老人たちよ
十七才の少女よ
二十歳の青年よ
地球は丸く
緑色の野は続く

もはや光はない
手探りする人々の心と
切り放されたわたしの友の荷物が
重くわたしの心にかかる
少年の日を呼び戻して
わたしの目の前に再現することは不可能だが
あの希望の日々を追い求め旅立つことはできる
光よまた明日輝け




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死は忘れた頃に訪れる

2007年10月09日 11時13分31秒 | ちゅうたしげる詩集
                                        ”
議員が立った
「町長、あなたも通勤されてご存じのように
岩屋の曲がりカーブがこのほど改良され
工事も完成して新しい道ができました
まことに住民の念願がかない喜ばしいことであります
ですけれども
あのカーブにつながる交差点
あそこは非常に広々とした空き地ができました
この空き地にくらべて道路は非常に狭い
狭いのです
あれでは非常に危険です
何とかならないものでしょうか」
町長答弁
「わたしの家の近くでもありよく存じておりますが
確かに空き地にくらべて道路が狭いようであります がしかし
それも県の方でよく考えられて工事をされたものです
なにとぞ交通規則を守られて
事故のないように気を付けていただきたいと存じます」
議員
「しかし町長
ああいった場合はよく地元にも相談してコースを決めるようにして
十分事故対策をするべきであります」
町長
「ご趣旨はよくわかりますが
なにとぞ交通規則をよく守られて
事故のないようにしていただきたいと心から皆さんにお願いします」

そして一か月後
その場所でわたしは事故を見た
救急車の運転手の顔は緊張していた
自転車が道端に転がっていた
それは
町長夫人のものだった
町長夫人は意識不明
ヘリコプターを使って大病院に運び込まれた
外傷はないが頭蓋骨はばらばら
心臓はかすかに動いていた
事故を起こした大きなトラックの運転手は
以前わたしの家の近くに住んでいた男だった
わたしの家の分家のおやじである町長は
数か月前に再選されたばかりだった
最初に事故を通報したわたしの妻は葬儀屋につとめている
死は忘れた頃にやってくる



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resin

2007年10月06日 15時47分36秒 | ちゅうたしげる詩集
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誰にも知られずひっそりと

2007年10月06日 13時41分04秒 | ちゅうたしげる詩集
                                        ”
誰にも知られずひっそりと
生きていたい

野菊よお前のようにひっそりと
花開いていたい

合歓木よお前の眠りのようにひっそりと
葉を合わせていたい

春芽生える草花の音
話し声一つしない空間

そんなふうにひとり静かに
生きていたい

そして人知れず斃れる木のように
誰にも知られずひっそりと死にたい




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十七歳の春

2007年10月06日 13時23分23秒 | ちゅうたしげる詩集
                                        ”
三月、春。
山の端が赤く染まる頃、
突然訪れた。
神の予調、天啓。
ある調べをともなって、
心を打ち抜いた。

突然口が聞けなくなって、
一息一息 呼吸を整えるだけ。

(あれは岩の間を流れる清水の調べだったのか。)

繰り返すリフレーン。

陽は西に傾き、
夕焼けの色はしだいに濃くなる。
足もとの影はゆっくりと長くなり、
時をはかる。

陽の名残を惜しむ私の耳のそばで、
誰かがささやいた。
口は聞けない、
一心に耳をそばだてた。

誰かが歌っている。
誰の声だか聞きとろうと
ふりむく。
かろうじて聞こえてくる歌。

調べは若い肉体に染み入り、
夕陽が若者の横顔を映しだす。

(山が歌っているのだ。
新芽をはらんだ木立が、
風に合わせて歌っているのだ。)

音楽は高鳴り、
夕陽の最後のかけらが、
暗い山に沈んでいく。

空だけが赤い。

夕闇のなかに星が瞬く。
谷を下ると、
流れに耐える岩がある。
永遠に耐える岩。

息は静まっていく。
闇に身を深くしずめたまま、
いつまでも旋律の記憶をたどっていた。






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