神奈川県中央会では、3つのテーマによる専門家の記事を載せています。
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本日は、法律事務所 佐(たすく) 弁護士 佐々木光春氏による「経営に関する法律情報」をテーマとしたビジネスブログです。前回「組織や業務を見つめ直す視点について」に引き続き、第4回目は「契約を見つめ直す ~その2~」となります。
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契約を見つめ直す ~その2~
前回に引き続き、売買契約を題材にして、契約を見つめ直す視点についてお話していきます。今回は、瑕疵についてです。
瑕疵というと何だか難しいものに思えますが、平たく言えば「思ったとおりのものでなかった」ということです。ただし、単に期待していたものと違うというだけでは足りず、買ったものが「一般的に備えている」性能や安全性を欠いていることが必要です。
期待外れの点が「一般的に備えている」ものかどうかは、買主が証明しなければなりませんが、動かないとか破損しているなどの分かりやすいものであれば別ですが、この証明は結構大変です。
これを避けるために、買主としては、どういうものとして買ったのかを契約に規定しておくことが重要です。取引基本契約等「買主の定める品質を有することを保証する」「納入物は、買主の定める品質を有するものとする」とあるのはこの目的のためです。
もっとも、具体的に定めていないケースや別途定めた品質保証規程の定め方が不十分なケースも多いので、取引基本契約に定めただけで安心せずに、品質保証規程にこそ、力を注いでください。
他方、売主にとっては「そんな用途で使うとは思ってもみなかった」ということにならないように「特定の用途に適合することを保証しない」などの規程を定めておくことも有効です。取引基本契約書そのものに書くことは難しいことも多いですが、仕様書や品質保証書の書き方で同様の効果を得られることもありますので、諦めずに工夫しましょう。
瑕疵の関係でもう一つ重要なポイントは、検査と通知という問題です。
これは、特に買主にとって重要です。会社等の商人との売買の場合は、商法第526条によって、隠れたる瑕疵であっても検査から6カ月以内に売主に通知しないと、瑕疵を理由に契約解除や損害賠償請求ができなくなり、きちんとしたものを引渡せとも言えなくなってしまいます。契約に何の定めもないと商法が適用されてしまう可能性が高いので、買主は、6カ月以上の品質保証期間を定めておくことが必要です。
他方、売主にとっては、品質の内容については具体的に規定したとしても、品質保証期間についてはむしろ定めない方が有利となる場合が多いです。
なお、製造物責任法が適用されてしまうケースでは、検査から6カ月を超えても責任を負いますので、この点は注意が必要です。
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法律事務所 佐(たすく)
弁護士 佐々木 光 春
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