神奈川県中央会では、3つのテーマによる専門家の記事を載せています。
本日は「経営者側からの視点での人事労務」をテーマとした
法政大学経営学大学院イノベーションマネジメント研究科藤村博之教授の
第4回目の記事となります。
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第4回 いまどきの大学生事情―母親の強い影響力
大学進学率が50パーセントを超え、大学は特別な人が行く場所ではなくなりました。
筆者が大学に入ったのは1975年ですが、当時の進学率は25パーセントでした。進学率が
倍以上になると、以前は考えられなかった現象が見られるようになっています。
その一つが、母親の強い影響力です。
子どもの教育や就職において最も発言力を持っているのは、父親ではなく母親です。
大学の対応に少しでも疑問をもつと、母親から電話がかかってきます。
「ウチの僕ちゃんに何をしたんですか?」という質問から始まり、延々と電話は続きます。
その主張は一方的で、話にならない場合が多いのですが、対応しないわけにはいきません。
モンスターペアレンツは、大学にもいるのです。
「大学生になってまで親が出てくるのか?」と不思議がる読者もおられるかもしれません。
でも、それが現実です。新入社員研修のために会社の寮に入るとき、親がついてくることが
珍しくないという時代です。子離れができない親、親離れができない子どもが増えています。
子どもの教育や就職のとき、なぜ父親が出てこないのでしょうか。おそらく、男性の
長時間労働が一因であると思います。子どもが小さい頃から、父親は仕事に明け暮れ、
あまり家にいませんでした。世の中の現実をよく知っている父親が助言しても、
「あなたに何がわかるのよ」のひと言で押さえ込まれてしまいます。ふだんから子育て
に参加していないのですから、発言力が小さくなるのも当然ですね。
その結果、子どもたちは。母親の価値観を聞かされて育つことになります。
「就職先は、安定している大企業がいちばん。中小企業なんて、いつどうなるかわからないんだから。」
トヨタ自動車やユニクロも、元を正せば中小企業だったという事実には目もくれません。
1990年代半ば以降、多くの大企業が倒れていったことも意に介さないのです。
「就職するなら有名大企業」という信念に近いものを学生たちはすり込まれていく
ことになります。
大人の基本は、自立と自律です。大学時代は、親から離れて、自らの足で立つ訓練の時期です。
私は、父親がもっともっと仕事の話を子どもにするべきだと思います。
「つらいことは確かに多いけど、こんなやりがいがあるから仕事はおもしろいんだ!」
という自らの体験を、子どもたちに語って欲しいと思います。それが、自立(自律)した若者を
増やすことにつながるはずです。
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法政大学大学院イノベーションマネジメント研究科
教 授 藤 村 博 之
http://www.fujimuralab.com/
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本日は「経営者側からの視点での人事労務」をテーマとした
法政大学経営学大学院イノベーションマネジメント研究科藤村博之教授の
第4回目の記事となります。
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第4回 いまどきの大学生事情―母親の強い影響力
大学進学率が50パーセントを超え、大学は特別な人が行く場所ではなくなりました。
筆者が大学に入ったのは1975年ですが、当時の進学率は25パーセントでした。進学率が
倍以上になると、以前は考えられなかった現象が見られるようになっています。
その一つが、母親の強い影響力です。
子どもの教育や就職において最も発言力を持っているのは、父親ではなく母親です。
大学の対応に少しでも疑問をもつと、母親から電話がかかってきます。
「ウチの僕ちゃんに何をしたんですか?」という質問から始まり、延々と電話は続きます。
その主張は一方的で、話にならない場合が多いのですが、対応しないわけにはいきません。
モンスターペアレンツは、大学にもいるのです。
「大学生になってまで親が出てくるのか?」と不思議がる読者もおられるかもしれません。
でも、それが現実です。新入社員研修のために会社の寮に入るとき、親がついてくることが
珍しくないという時代です。子離れができない親、親離れができない子どもが増えています。
子どもの教育や就職のとき、なぜ父親が出てこないのでしょうか。おそらく、男性の
長時間労働が一因であると思います。子どもが小さい頃から、父親は仕事に明け暮れ、
あまり家にいませんでした。世の中の現実をよく知っている父親が助言しても、
「あなたに何がわかるのよ」のひと言で押さえ込まれてしまいます。ふだんから子育て
に参加していないのですから、発言力が小さくなるのも当然ですね。
その結果、子どもたちは。母親の価値観を聞かされて育つことになります。
「就職先は、安定している大企業がいちばん。中小企業なんて、いつどうなるかわからないんだから。」
トヨタ自動車やユニクロも、元を正せば中小企業だったという事実には目もくれません。
1990年代半ば以降、多くの大企業が倒れていったことも意に介さないのです。
「就職するなら有名大企業」という信念に近いものを学生たちはすり込まれていく
ことになります。
大人の基本は、自立と自律です。大学時代は、親から離れて、自らの足で立つ訓練の時期です。
私は、父親がもっともっと仕事の話を子どもにするべきだと思います。
「つらいことは確かに多いけど、こんなやりがいがあるから仕事はおもしろいんだ!」
という自らの体験を、子どもたちに語って欲しいと思います。それが、自立(自律)した若者を
増やすことにつながるはずです。
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法政大学大学院イノベーションマネジメント研究科
教 授 藤 村 博 之
http://www.fujimuralab.com/
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