神奈川県中央会では、4つのテーマによる専門家の記事を載せています。
本日は、「環境経営」をテーマとした神奈川県技術士会 服部氏の第7回目の記事となります。(環境経営をテーマとしたブログは、今回が24回目となります)
質問者:『認証を取得されてよかったことは何ですか?』
G社長(60人程度のプラスチック加工会社の生え抜きでない社長)さんのお答え:
『よかったことは、ISOの仕組みを構築・運用したおかげで自主的に職場規律を守るようになったことです。』
質問者:『なにが問題だったのですか?』
G社長:『私のところは、いわゆる職人気質というのでしょうか、現場のことは現場にまかせておいてくれという気風がありました。そのため例えば5Sを進めようとしても、職場のオヤジさんがその気になるかどうかがポイントになり、「やることはやっているのだから、細かいことはいうなよ」という雰囲気で、それまでは業務の仕組みとしてPDCAをまわすことがむずかしかったのです。』
質問者:『古手の社員さん方の技能が会社を支えているというのは、よくあることですね。それでどうしました?』
G社長:『ISO14001の構築・運用を通して「業務・運用の見える化」を図ってPDCAをまわしました。』
質問者:『「見える化」とはよく聞きますが、具体的に説明してください。』
G社長:『ISO認証取得の宣言をして、真っ先にトイレをリフォームして、環境負荷の削減のために3点セット(照明の人感センサー、エアジェトタオル、音姫)をいれました。社員はトイレがきれいで便利になったことを通じて「会社は、口先だけでなく本気なんだ」と感じたようです。「会社のやる気の見える化」ですね。次にキックオフのあと若い女子社員にお願いをして環境新聞を毎月発行し、各職場に張り出し職長からメンバーに話をしてもらいました。これがうまくいきました。』
質問者:『環境新聞の具体例とうまくいった理由を教えてください。』
G社長:『文章を少なくし、ほとんどをグラフ・イラスト・写真にしました。また職場で読めるように文字を大きくしました。言葉遣いも、訓示調ではなく女子社員の話し言葉(例「もう一息ですね。お互いにがんばりましょう」など)を使いました。
まず当然のことですが、目的・目標の実績をグラフ化しました。「成果の見える化」です。実はいままで悩んでいた「不具合の見える化」がうまくいったのです。いくつか例を挙げてみます。
(1)それまで廃棄物容器に時々家庭ごみ、私物のごみが捨てられていました。これを大きく写真に撮って掲載しました。(2)原料・製品ともプラスチックなので、当然火気厳禁です。ある日、路上にタバコの吸殻が捨ててありました。これも大きく写真に撮って「や、や、これは大事件です」の見出しと火災のイラストと一緒に掲載しました。』
質問者:『職人さんにしてみると嫌味にとられませんでしたか?』
G社長:『やった本人は不具合なことはわかっているのですが、「まァ、いいや」と思ってしていたのです。不思議なもので、上司が権限を背景にして伝えれば「細かいことをいうなよ」と反発するのに、同僚である若い女子社員に自分の言葉で書かれると、「まいった、まいった」と苦笑いして納得したのでしょう。そのようなことが毎月あって目に見えて改善され、職場規律を守ることが当然というようになりました。「職場規律の順守」と大上段にふりかぶると犯人探しにつながるので社員は身構えるのですが、犯人さがしをしないで済み、自然体ですんだということも大きいですね。』
質問者:『やはり、いろいろ工夫をされたのですね。認証を取得されて気が緩むことはありませんでしたか?』
G社長:『いいえ、「自分たちはISOの認証取得ができた」という達成感・自負心を背景に、社員が目的・目標や職場規律は自分たちを縛るものではなく、ルールに従った自主・自律なのだということがISOの構築・運用を通じてごく自然に納得していったと感じています。その意味では、私たち経営者・管理者が「べき論」から脱して、訓示・通達以外の方法を柔らかく工夫するようになったということが一番大きなメリットかもしれません。』
~次回につづく~
神奈川県技術士会 http://www.e-kcea.org/
本日は、「環境経営」をテーマとした神奈川県技術士会 服部氏の第7回目の記事となります。(環境経営をテーマとしたブログは、今回が24回目となります)
質問者:『認証を取得されてよかったことは何ですか?』
G社長(60人程度のプラスチック加工会社の生え抜きでない社長)さんのお答え:
『よかったことは、ISOの仕組みを構築・運用したおかげで自主的に職場規律を守るようになったことです。』
質問者:『なにが問題だったのですか?』
G社長:『私のところは、いわゆる職人気質というのでしょうか、現場のことは現場にまかせておいてくれという気風がありました。そのため例えば5Sを進めようとしても、職場のオヤジさんがその気になるかどうかがポイントになり、「やることはやっているのだから、細かいことはいうなよ」という雰囲気で、それまでは業務の仕組みとしてPDCAをまわすことがむずかしかったのです。』
質問者:『古手の社員さん方の技能が会社を支えているというのは、よくあることですね。それでどうしました?』
G社長:『ISO14001の構築・運用を通して「業務・運用の見える化」を図ってPDCAをまわしました。』
質問者:『「見える化」とはよく聞きますが、具体的に説明してください。』
G社長:『ISO認証取得の宣言をして、真っ先にトイレをリフォームして、環境負荷の削減のために3点セット(照明の人感センサー、エアジェトタオル、音姫)をいれました。社員はトイレがきれいで便利になったことを通じて「会社は、口先だけでなく本気なんだ」と感じたようです。「会社のやる気の見える化」ですね。次にキックオフのあと若い女子社員にお願いをして環境新聞を毎月発行し、各職場に張り出し職長からメンバーに話をしてもらいました。これがうまくいきました。』
質問者:『環境新聞の具体例とうまくいった理由を教えてください。』
G社長:『文章を少なくし、ほとんどをグラフ・イラスト・写真にしました。また職場で読めるように文字を大きくしました。言葉遣いも、訓示調ではなく女子社員の話し言葉(例「もう一息ですね。お互いにがんばりましょう」など)を使いました。
まず当然のことですが、目的・目標の実績をグラフ化しました。「成果の見える化」です。実はいままで悩んでいた「不具合の見える化」がうまくいったのです。いくつか例を挙げてみます。
(1)それまで廃棄物容器に時々家庭ごみ、私物のごみが捨てられていました。これを大きく写真に撮って掲載しました。(2)原料・製品ともプラスチックなので、当然火気厳禁です。ある日、路上にタバコの吸殻が捨ててありました。これも大きく写真に撮って「や、や、これは大事件です」の見出しと火災のイラストと一緒に掲載しました。』
質問者:『職人さんにしてみると嫌味にとられませんでしたか?』
G社長:『やった本人は不具合なことはわかっているのですが、「まァ、いいや」と思ってしていたのです。不思議なもので、上司が権限を背景にして伝えれば「細かいことをいうなよ」と反発するのに、同僚である若い女子社員に自分の言葉で書かれると、「まいった、まいった」と苦笑いして納得したのでしょう。そのようなことが毎月あって目に見えて改善され、職場規律を守ることが当然というようになりました。「職場規律の順守」と大上段にふりかぶると犯人探しにつながるので社員は身構えるのですが、犯人さがしをしないで済み、自然体ですんだということも大きいですね。』
質問者:『やはり、いろいろ工夫をされたのですね。認証を取得されて気が緩むことはありませんでしたか?』
G社長:『いいえ、「自分たちはISOの認証取得ができた」という達成感・自負心を背景に、社員が目的・目標や職場規律は自分たちを縛るものではなく、ルールに従った自主・自律なのだということがISOの構築・運用を通じてごく自然に納得していったと感じています。その意味では、私たち経営者・管理者が「べき論」から脱して、訓示・通達以外の方法を柔らかく工夫するようになったということが一番大きなメリットかもしれません。』
~次回につづく~
神奈川県技術士会 http://www.e-kcea.org/