神奈川県中央会では、4つのテーマによる専門家の記事を載せています。
本日は「労働関連情報」をテーマとした株式会社人財経営センター須田労務マネジメント事務所 須田徹也氏の第20回目の記事となります。
「100年に一度の金融危機」に遭遇し、景気の先行きが真っ暗な状態になっています。この環境の中で、「内定取り消し」に関する報道が毎日伝えられています。内定取消しされた学生にとって、社会人としての第一歩になる職場がなくなるのは悲惨なことですが、多大な時間と採用コストをかけた企業にとっても大きな損失です。大企業であるとマスコミ報道によって企業イメージが低下するのは避けられませんので、できたら避けたいものです。
そこで、「内定取り消し」すると、企業にどのような責任が問われるのかを考えてみたいと思います。
まず、内定の法的意義としては、企業が内定通知書を学生に送り、学生はそれに対して誓約書を提出することによって労働契約が成立した、ということになります。内定から入社まで数ヵ月間もあるため、この労働契約は始期解約権留保付とされています。これを取り消すには社員の解雇と同じように、「客観的に合理的で、社会通念上相当であると認められる場合」に限られています。この「客観的に合理的」とは、例えば、(ア)学校を卒業できなかった、(イ)健康状態に異常があり労務提供ができない 、(ウ)犯罪をした、など主に学生側に問題がある場合に該当します。
企業側の業績悪化による内定取り消しの場合は、通説では「客観的に合理的」な理由に該当しないと解されています。また、取り消しをしないように回避努力をしたかなど総合的にみて判断されるものであり、認められるのは難しいものと考えられます。
解雇であれば、法律上、平均賃金の30日分の賃金を払うことになりますが、内定取り消しの場合、法律上の規定はありません。そのため、金銭で解決するのであれば、平均賃金の30日分以上が必要になるものと思われます。このプラスアルファはいくらが妥当であるかは企業規模などの要因で異なるでしょうが、学生側からすれば1年間就職浪人することを考えると、1年間の収入相当は要求したいでしょう。
しかし、金銭解決の前に大切なのは、内定取り消しが避けられなかった経緯、理由を誠意をもって説明するとともに、学生にお詫びする責任があるということです。そして、結果として金銭解決に至った場合には、学生の気持ちを汲み取ったうえで金銭を提示することです。
この環境下で企業が生き残るのは容易いことではなく、内定取り消しもやむを得ないかもしれません。しかし、忘れてならないのは、新卒採用は中途採用と違って長期雇用を前提としている、ということです。
~次回につづく~
株式会社人財経営センター須田労務マネジメント事務所 http://www.jinzai-info.com
本日は「労働関連情報」をテーマとした株式会社人財経営センター須田労務マネジメント事務所 須田徹也氏の第20回目の記事となります。
「100年に一度の金融危機」に遭遇し、景気の先行きが真っ暗な状態になっています。この環境の中で、「内定取り消し」に関する報道が毎日伝えられています。内定取消しされた学生にとって、社会人としての第一歩になる職場がなくなるのは悲惨なことですが、多大な時間と採用コストをかけた企業にとっても大きな損失です。大企業であるとマスコミ報道によって企業イメージが低下するのは避けられませんので、できたら避けたいものです。
そこで、「内定取り消し」すると、企業にどのような責任が問われるのかを考えてみたいと思います。
まず、内定の法的意義としては、企業が内定通知書を学生に送り、学生はそれに対して誓約書を提出することによって労働契約が成立した、ということになります。内定から入社まで数ヵ月間もあるため、この労働契約は始期解約権留保付とされています。これを取り消すには社員の解雇と同じように、「客観的に合理的で、社会通念上相当であると認められる場合」に限られています。この「客観的に合理的」とは、例えば、(ア)学校を卒業できなかった、(イ)健康状態に異常があり労務提供ができない 、(ウ)犯罪をした、など主に学生側に問題がある場合に該当します。
企業側の業績悪化による内定取り消しの場合は、通説では「客観的に合理的」な理由に該当しないと解されています。また、取り消しをしないように回避努力をしたかなど総合的にみて判断されるものであり、認められるのは難しいものと考えられます。
解雇であれば、法律上、平均賃金の30日分の賃金を払うことになりますが、内定取り消しの場合、法律上の規定はありません。そのため、金銭で解決するのであれば、平均賃金の30日分以上が必要になるものと思われます。このプラスアルファはいくらが妥当であるかは企業規模などの要因で異なるでしょうが、学生側からすれば1年間就職浪人することを考えると、1年間の収入相当は要求したいでしょう。
しかし、金銭解決の前に大切なのは、内定取り消しが避けられなかった経緯、理由を誠意をもって説明するとともに、学生にお詫びする責任があるということです。そして、結果として金銭解決に至った場合には、学生の気持ちを汲み取ったうえで金銭を提示することです。
この環境下で企業が生き残るのは容易いことではなく、内定取り消しもやむを得ないかもしれません。しかし、忘れてならないのは、新卒採用は中途採用と違って長期雇用を前提としている、ということです。
~次回につづく~
株式会社人財経営センター須田労務マネジメント事務所 http://www.jinzai-info.com