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神奈川県中央会では、3つのテーマによる専門家の記事を載せています。

 本日は「事業承継」をテーマとした、弁護士法人フェニックス 弁護士 伊藤 博氏の第30回目の記事となります。

事業承継を考える(30)-「親の意見と冷酒はあとで効く」

中小企業の場合、実の親から実の子どもへと、その事業を承継することが多いであろう。親は事業を譲るにあたってあれもこれも承継してもらいたい、と思う。しかし、「親の心子知らず」である。

事業承継というものは、何を承継するのかが承継者にも被承継者にも分かっていない。
資産や負債、得意先や交友関係などの目に見えるものを引き継ぐのか、経営の方法など目に見えないものを承継するのだろうか、ということである。

事業承継とは、それら両者を承継するのであろう。そのどちらをも承継したとしても、後継の承継者には被承継者の事業をますます発展させる者もいるが事業を縮小させ会社を倒産させてしまう者もいる。

大事なことは、環境がどのように変わっても、企業が繁栄し得るように、目に見えない心の教えを親から子、子からまたその子へと伝えて事業を承継して行くことだ。

S社長は、跡継ぎとして社長となる自分の息子に、常日頃から「社長になると自分に耳障りの良いことを言ってくれる人は多くなるが、耳に痛いことを言ってくれる人は少なくなり、そのような社員を嫌いになる。社長の耳に痛いことを言う社員は段々と少なくなるので、そんな社員を嫌い遠ざけて用いないということは良くない。自分の嫌いな社員を用いることこそ大事なことなのだ。」と言っていた。

息子が社長となり、不動産やゴルフ会員権を買わないか、その資金は銀行が融資してくれる、という話が取引銀行から持ち込まれた。バブル経済華やかなりし頃のことだ。会社の中には、そんなうまい話はないやりましょう、という役員は多かったが、反対したのは親の意見を嫌々ながら聞いて役員にしてあった嫌いな人物ただ一人だった。
社長が、親父の意見を思い出し、銀行から持ち込まれた融資付き不動産取引の話を断ったのはいうまでもない。

バブル期に会社経営の方向性を見失った中小企業は枚挙にいとまがない。 


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 本日は「事業承継」をテーマとした、弁護士法人フェニックス 弁護士 伊藤 博氏の第29回目の記事となります。


事業承継とは何だろうか?「事業」の「承継」に間違いはあるまい。

その計画をたてるのが事業承継計画なのだろう。しかし、その計画を立てることは、そう簡単ではない。承継すべき事業の中身が曖昧模糊としており、何を承継するのかが明らかではないからだ。

事業は、ヒト、モノ、カネ、といわれるが、「ヒト」の面だけ取りあげても、従業員・仕入れ業者・買ってくれる顧客・株主(中小企業の場合は親子、兄弟、親戚等その関係が濃密である)等、色々ある。これらの人間関係を引き継ぐのが事業承継なのだろうか、また会社の資産や負債を引き継ぐのが事業承継なのだろうか。

事業承継について書かれた書物をみると、事業承継計画書を作りなさい、と書いてある。家族関係、個人資産の状況、相続が起こった場合の相続人の問題などの現状を分析し、事業承継に備えるのが良いようだ。

中小企業庁発行の中小企業事業承継ハンドブックという冊子がある。そこには、?まずは知っておきたい事業承継対策のポイント、?後継者の選び方・教育方法、?後継者への経営権の集中方法、?事業承継と民法<<遺留分>>、?事業承継に必要な資金、?事業承継と税金、などについて解説されている。

それらの書物に書かれていることは、いずれも一朝一夕にしてできることではない。事業というものは、毎日毎日変化している。成長もあり、退歩することもあるだろう。

事業承継というものを、静止的にとらえるのではなく、事業経営の一つとして、事業の承継ということがあると考えて、その対策を常日頃より考えるのが良い。事業承継計画も経営計画の一つとして考えなければならないのだ。すなわち、社長たる自分が死んだ時のことも考えて経営にあたる必要があるのである。

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 本日は「事業承継」をテーマとした、弁護士法人フェニックス 弁護士 伊藤 博氏の第28回目の記事となります。


 I社の創業社長のIさんは、現在78歳。Iさんは、上場会社に勤めていたが、30歳の時、退社し、会社を設立して独立。まもなく、当時の部下であるT氏を自分の会社に引っ張った。以来30年間、T氏を専務として、売上高30億円、従業員40名の機械製造業界における中堅企業にI社を育て上げた。長男も会社に入ってくれた。業績も順調だったし、後継社長は長男である、と会社の内外のひとたちは見ていた。

 I社長は、健康で頑丈な体ではなかった。どちらからというと病弱な体質であった。そこで、会社も軌道に乗った時、一つの決断をした。

 それは、

(1)自分が、60歳になった時には、社長を誰かに譲る。

(2)次の後継社長は5年~10年の任期で、長くても、10年間。

(3)後継社長には、その間、次の後継社長たる人物を見つけ出し、社長として

の教育をして、後任者に譲ること。

(4)次の次を委せるのは、自分(創業社長)の息子でなくてもよい。

 というものだった。

 78歳になった今、その時の決断は自分でもよかったと思っている。

 60歳になった時に、社長になってもらったのは、専務として長年一緒に仕事をしてきたT氏だった。

 長男に社長の座を譲らなかったのは、社長としては今一つ物足りなかったから

である。それに、自分が病弱だった所為もあり、T氏に報いたいということもあったが、それよりもT氏なら、自分に代わって社長の何たるかを長男に教えてくれるのではないか、という期待があったからである。

 しかし、T専務を次期社長に指名するに際し、T社長の次の社長に、何がなんでも自分の息子を指名してくれるようにとは、頼まなかった。「できたら、次期社長候補の一人として考えてくれればうれしいが、」ということだけ話したのみだった。

 ただ、10年以内に次期社長を育て、われわれ会社創業時のメンバーは、引退し若い人たちに会社を任せようではないか、ということだけを頼んだ。

 T氏は社長になった時から、自分が社長をやめたときのために、次期社長探しに入り、自分がずっと社長をするという前提ではなく、いつ自分が社長をやめても会社は、次世代の従業員に引き継いでもらうのだ、そして、そのためには次期社長を探し、育てなければいけない、という意識になったようだ。

 現在、I氏は顧問、T氏は会長を務め、I社長の長男が社長として会社経営の責任を担っている。Iさんの述懐は、Tさんを社長に指名しなければ、息子は社長として一人前にならなかったのではないか、ということである。

 Tさんは、Iさんが社長としての心得を子どもに教えておきたいことを、父親に代わって教えてくれたからである。

 Iさんは今、社長である自分の息子に、先代社長のT氏に対する恩義を教えるのが、自分の役割である、と思っている。

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 本日は「事業承継」をテーマとした、弁護士法人フェニックス 弁護士 伊藤 博氏の第27回目の記事となります。


(1)家庭裁判所に審判申立・経産大臣に確認申請

 「遺留分の算定に関する合意」は、1)合意の成立後、1か月以内に、経済産業大臣に確認の申請をし、2)確認を得たときは確認を受けた日から1か月以内に、管轄の家庭裁判所に許可審判の申立をしなければならない。

 具体的には、関東地方であれば関東地方経済産業局に確認申請をし、その後、各県及び都にある家庭裁判所に審判の申立をすることとなる。

 経済産業大臣に対する確認申請、家庭裁判所に対する審判の申立、といってもそろえなければならない書類が多い。本人が行っても良いのであるが、実務の実際は、1)は行政書士、2)は弁護士が、代理人として行うこととなる。

(2)事業承継と納税猶予

 事業承継に伴い、先代経営者が有した株式や不動産等を、後継者たる相続人に遺贈や贈与によって所有権を移転するものなので、当然、相続税や贈与税等の課税問題が発生する。中小企業庁は、平成21年2月、「経営承継法における非上場株式等評価ガイドライン」を公表した。

 事業承継により、先代より、相続によって、遺産を相続した者は、相続税・贈与税の課税を免れるものではないが、納税猶予の制度が創設された。納税猶予の申請は、税務署ではなく経済産業省に為し、同省が中小会社の事業実態について認定を行い、それに基づいて納税猶予が認められることとなる。認定された中小企業者は年次報告書を経済産業省に提出しなければならない。これらの手続きは税理士に依頼して行うのが一般的だろう。

(3)資金調達と事業承継

 事業承継においては、後継者が経営権を確保するため、自社株式や事業用資産を取得する必要がある。その取得資金はどうするか、という問題であるが、それは通常の信用保証協会の保証枠とは別枠の信用保証枠(限度額2億8000万円)を使って、金融機関から借り入れるか、日本政策金融公庫、株式会社商工組合中央金庫の事業承継のための融資制度が用意され、資金措置が講じられた。

 事業承継については中小企業庁のホームページを参照するとよい。実務は複雑なので、いずれにしても、各分野の専門家に相談するのが適切だ。

以上

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 本日は「事業承継」をテーマとした、弁護士法人フェニックス 弁護士 伊藤 博氏の第26回目の記事となります。


 経営承継円滑化法の制定により、推定相続人(現在の経営者が亡くなると後継ぎと目されている人達のこと)全員の合意による、次のような特例ができた。

1.除外合意(遺留分に関する民法の特例)

 経営者(被相続人のこと)が、会社を引き継ぐ推定相続人(後継ぎの子)に、自分の会社の株式や工場用地となっている不動産等を、贈与や遺言などにより譲る場合、通常であれば、その財産の価額が他の推定相続人(=他の子供たち)の遺留分として決められている相続分の価額を超えると、その超えた分が、遺留分(遺産を遺言や贈与によってもらっていない相続人が、もらっている相続人から取り戻しても良い、と法律により留保されている相続財産のこと)として、取り戻しの対象となります(取り戻しの請求をすることを、遺留分減殺請求という)。

 しかし、推定相続人(妻や子供達)全員の合意で本来ならば、遺留分算定の基礎財産に参入しないことができることになった。これが「除外合意」である。

2.固定合意(遺留分に関する民法の特例)

 後継者が先代経営者から取得した、承継会社の株式等の財産を、推定相続人間で、遺留分算定のための価額に算入すべき価額を固定する合意である。例えば、承継する会社の株式を5、000万円(1株当たり1万円、弁護士○○が相当として評価をしたもの)とするように。

 例えば、「A(後継社長)は、合意が効力を発したときから、甲(先代社長)に対しその死亡に至るまで毎月25日限り、生活費として、金50万円を支払う。」というように定めることもできる(付随合意という)。

 上記の特例はいずれも、経済産業大臣の確認及び家庭裁判所の許可を受けることによって、当該合意の効力が発生する。

(この項続く)

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 本日は「事業承継」をテーマとした、弁護士法人フェニックス 弁護士 伊藤 博氏の第25回目の記事となります。


 親が遺言をして後継ぎである子供に、全財産を譲ったとしても、相続人である他の子供には、事業の承継者であろうとなかろうと、子供であるだけで、「遺留分」という最低限の相続の権利を認め、その権利の回復を求めることができることになっている。「遺留分(いりゅうぶん)減殺(げんさい)請求権(せいきゅうけん)」といわれる。

 例えば、遺産が不動産(自社工場の敷地)及び会社株式等、で総額1億2000万円、相続人が3人(妻・長男・次男)、先代社長である夫がすべての財産を遺言で、長男に譲ったとしても、二男は遺産の8分の1である1500万円の遺留分を持つ(民法887条1項・1028条2号・1044条・900条1号)。そして、二男は、父の遺言に納得しない場合には、長男に対してこの遺留分1500万円の権利回復を求めて、それを行使することができるのである(民法1031条)。

 遺留分の事前放棄(遺産に対する権利は要りませんよ、ということ)は、つまり上記の例でいえば、父が亡くなる前に、二男(父や後継ぎである長男ではないことに注意)が家庭裁判所に申立て、その許可を得なければ出来ない(民法1043条1項)。

  

 従って、遺留分の事前放棄は放棄者にとって手続が面倒なことと、何のメリットもないのであまり利用されない。

 

 父である先代経営者亡きあと、相続人である妻や子供達が会社経営に影響を及ぼす相続財産をめぐって、分捕り合戦を演ずるようになっては、会社経営もあやしくなってくる。

 しかし、1.赤字による倒産の危機、2.儲かると脱税騒動、3.労使紛争、4.同族間の経営・財産をめぐるお家騒動、の4つを経験して企業も一人前の大人の会社になった、とも言われることがあるように、先代の残した会社や財産をめぐって兄弟親族間で相続争いをすることも、子供が麻疹やおたふくかぜにかかって、これらを克服し一人前の大人になるように、企業の成長過程のひとコマであると考えることができれば良いのである。

 経営承継円滑化法は、遺留分をめぐる推定相続人間の争いを未然に防ごうというものである。

                     〔この項 つづく〕

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 本日は「事業承継」をテーマとした、弁護士法人フェニックス 弁護士 伊藤 博氏の第24回目の記事となります。


 後継者は、経営のノウハウを引き継ぎたい、被後継者は引き継がせたいと思うだろう。

 ところで、経営を承継するとは、どういうことだろうか。

 「アッ!私の顔がない!!」。鏡が曇っているのだろうか、手で顔をツルリとなでると、そこには何もない。昔、インドに演(えん)若(にゃ)さんという美貌の女性修行者がいた。ある朝、起きて顔を洗おうとして鏡を見たときのことだ。

 あわてた演若さんは、村中を駆け回った。「私の顔はどこへ行ったの・・・」。

 その姿を見て、村人は皆、言った。「あなたの肩の上に、顔も頭もちゃんとついているではないか」。それでも気がつかない。彼女のお師匠さんのお釈迦様がやって来て、横面をピシャリと叩いた。そこで、やっと気が付いた。「肩の上には、頭も顔もちゃんとついている」と。

 中小企業の社長も後継者も、会社の経営に何か引き継ぐべきものがあるのではないか、と探してもとめていることはないだろうか。

 経営の承継とは譬えてみれば、演若さんにも、お釈迦様にも、顔や頭が同じようについていることに気付くことだ。顔・頭が経営で、身体が会社だ。顔・頭のついていない人はいない。経営のない会社は存在しない。

 お釈迦様が、演若さんの横面をピシャリと叩いたのは、気付かせるためだった。

 「経営承継とは、後継者自身が会社を経営することである」ということに気づかない、社長さんが多い。

 承継することに熱心になることは良いが、そんなに簡単に経営承継がうまくゆく筈がない。

 どんな本を読んでも、経営承継は長年かかる、と書いてある。

 1通の遺言を書いただけで、経営承継は上手くゆかない。経営承継も「会社経営のひとこまにすぎない」と考えておくとよいだろう。現経営者は、「自分の人生は今しかない」ことを念頭におき、何時、社長を引くか、を考えていると経営承継も上手くゆく確率が増す。

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 神奈川県中央会では、3つのテーマによる専門家の記事を載せています。

 本日は「事業承継」をテーマとした、弁護士法人フェニックス 弁護士 伊藤 博氏の第23回目の記事となります。


 中小企業を営む者は、自分の所有する事業会社の多数を後継者と目する相続人に遺贈又は相続させるのが通常である。何故なら、株式会社の役員等を選ぶのは株主が決めることになっているからである。一澤帆布工業株式会社の場合もそうであったが、後継者争いは、先代の遺言書が2通出てきたことにより、どちらが本物かという争いになってしまった。その遺言書の内容は、ブログ(21)に引用した通りである。遺言書は、先代の死後にその内容が明らかになることが多いので、往々にして、遺言が偽造か否かについて争われることも多い。

 兄弟姉妹間で、相続財産を争っては、それが事業の存続にマイナスになる。

 事業を構成している、不動産や株式を分割して、事業とは関係ない一般の遺産と同様になってしまうからである。

経営承継円滑化法は、

1.遺留分に関する民法の特例

2.支援措置

3.相続税の課税についての措置

から成り立っている。

 中小企業には、100年、200年・・・と続いている企業もある。敗戦(昭和20年、1945年)後に起業したとしても、数十年経つ。

 戦前の民法は、明治29年制定され、第4編親族、第5編相続、となっていた。その内容が、戦後、大改正された。その結果「家」制度もなくなり、相続といえば、財産の相続のみとなり、相続人が法に定められた相続分を、均分に相続するということになった。

 事業の承継は財産のみを、相続するものではない。

 個人主義が行き過ぎると、財産の みをもらえれば良い、事業(家業)はどうなっても、自分の知ったことではない、と考える相続人が出て来ても不思議ではない。

 そこで、事業を円滑に承継が出来る様に、経営承継円滑化法が制定された。

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 神奈川県中央会では、4つのテーマによる専門家の記事を載せています。

 本日は「事業承継」をテーマとした、弁護士法人フェニックス 弁護士 伊藤 博氏の第22回目の記事となります。


 中小企業の後継者は、血縁者それも子供のうちの誰かであることが多かった。その場合に問題となるのは、承継される事業会社の株式の評価及び事業を承継しない他の相続人たる兄弟姉妹と事業承継者たる相続人間の相続財産の平等・公平さだった、といっても過言ではあるまい。家業は跡取り息子や娘が当然に継いで、親を手助けし事業を、盛り立ててゆき、他の兄弟は高等教育を受けさせてもらったり、又は結婚する時に幾ばくかの持参金をもらって、実家の家長たる父親が亡くなった場合は、身を引く、すなわち、実家の事業は事業会社の株式を含め当然に父親とともにその事業に携わっている子供が相続する、という時代が戦後もしばらくの間続いていたのである。

 しかし、相続法つまり民法の規定は、兄弟姉妹たる相続人は相続に関して平等であり、親が亡くなった場合財産を平等に相続することに決まっている、すなわち均分相続なのだ。親と共に実家の事業を営んでいるかどうかは相続に関して原則として考慮されない。

 一般に事業を親と共に営んでいた相続人に相続財産の分割に際して考慮されるのは「寄与分」(被相続人の事業会社の価値を下げない又は増加することに力があったことが、相続の際に一定の範囲で考慮されること)の制度と親の残した遺言であるが、昔とは違い、中小企業であっても世界に伍して行ける会社が現れたり、相続人も実家の事業存続に執着するよりその財産的価値に目が行くようになった。

 中小企業は、人的・財産的基盤が大企業に比べて脆弱である。中小企業主たる父親が亡くなった場合に相続人間で会社の主導権争いを行っている場合ではない。また、優秀な中小企業は、その事業会社の株式価値も高い、ということは相続税が高く相続税の納付することが事業の後継者の肩に重く圧し掛かってくる。

 そこで、中小企業の事業承継を円滑にしよう、という目的で「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」(以下、「経営承継円滑化法」と略す)及び遺留分に関する民法の特例制度が制定され、平成21年3月1日から施行された。

 以下、次回につづく

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 神奈川県中央会では、3つのテーマによる専門家の記事を載せています。

 本日は「事業承継」をテーマとした、弁護士法人フェニックス 弁護士 伊藤 博氏の第21回目の記事となります。


 「ネェー、お兄さん、お父さんに遺言してもらっておかない。お母さんも年だし・・・2番目のお兄さんも入社したことだし、お姉さんにも相談して遺言してもらいましょうよ。会社の後継ぎを決めてもらっておきましょうよ。」

遺言書を書いておけば、後継者の争いを防げるか、という問題である。

(遺言書1.)

1.(略)

2.一澤帆布工業株式会社の株式につき、次の通りとする。

 3万株を一澤信三郎に遺贈する。

 2万2275株を一澤喜久夫に遺贈する。

 1万株を一澤恵美に死因贈与する。

3.4.(略)

(遺言書2.)

1.2.(略)

3.一澤帆布工業株式会社の株式は5分の4を長男一澤信太郎に、5分の1を四男一澤喜久夫に相続させる。

4.5.6.(略)

7.従前に作成した遺言書はこれを取消す。

 これは、京都の老舗である帆布カバン店一澤帆布工業株式会社の先代一澤信夫氏が残したとされる遺言書である(菅聖子著・一澤信三郎帆布物語・朝日新書より引用)。

 これらの遺言書によれば、株式の大半を取得するのは、前者が信三郎・恵美(両者は夫妻)、後者が信太郎、となっている。

 経営陣を選出するのは株主総会なので、株式の大半を取得する者が事業、すなわち会社の後継者であるのが一般である。

 しかし、遺言しただけでは後継者を決めることが必ずしもすんなりとは行かない。それは何故か、またその対策はないのだろうか。

(この項つづく)

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