”旅をなぞるべきではない”以前読んだ沢木耕太郎さんのエッセイの中に出てきた言葉だったと思う。人は決して同じ旅を繰り返すことができない。過去のよかった旅をなぞっても同じことは起こらない。時期や年齢が違えばおなじ感動は得られることはないという意味だろうか?
自分にとっての90年代は様々な出来事があり経済的、時間的余裕がなくて海外は夢のまた夢な感じだった。2005年、少し状況も落ち着き始め長年の鬱憤が溜まっていたせいもあり突発的に1989年以来の海外でストーンズを観るためロサンゼルスに行くツアーへ参加することを決めた。仕事の休暇がとれるかも未定だし、さほど貯金もなかったがとにかく行くことにした。
この旅がその後の人生のやり過ごし方と生き方を大きく変えたと今でも思っている。久しぶりの海外というかアメリカ(15年ぶり)。前回は添乗員の着く大人数ツアーだったが今回は10名くらいとはいえほぼ個人旅行。いまでは当たり前だが格安航空券でチェックイン時に席が決まり自分で勝手に出国して搭乗ゲートに集合。あとは機内で勝手に過ごして入国ししたら出口に集合。旅慣れていない自分にはすべてが冒険のようだった。置いて行かれないようにあわてて迎えのバンに乗り込みロサンゼルスのダウンタウンへ。
久しぶりの渡航の緊張から機内ではほとんど眠れず頭がふらふらし意識朦朧だったけど車窓からみるダウンタウンはとても輝いてみえた、宿泊先はフィゲロアホテル。どうみても3星ホテルじゃないスペイン風装飾の古風なホテル。大きな通りに面していて目の前はステープルセンター。付近にはスタバやフードコートもあり便利と言えば便利。ツアー参加者ははじめ人見知りなのかみんな無口だったがホテルの部屋がコネクティングルームだったことがあり慣れてからは勝手に繋いで毎晩飲んで色々な話をした。勿論話題の大半は大好きなストーンズや音楽のことだったので何時間話しても飽きなかった。朝目覚めるとまずスタバへコーヒーを飲みに行き出くわした人と今日1日何するかを考える。お腹がすくとフードコートへ行って食事をする。勿論何時に食べるかなんて決めていない。ストーンズのライブに行く以外はまったくのノープランで何をするのも自由。以前は治安が悪いと言われ乗らなかった地下鉄で移動して自分の足で歩いて行きたいところにいく。ユニバーサルスタジオ、チャイニーズシアター、ハリウッド、CDショップなどあっちこっち、うろうろした。通りを一つはいると人影がなくなり危なそうなところも多かったが五感を働かせ歩き回る。周囲のやり方をみて切符を買ったり食事を頼んだりタクシーに乗ったりする。わからなければつたない英語聞いてみる。今までできなかったことが少しずつできるようになり楽しくてしかたなかった。あれから同じようにストーンズのライブを観たり海外に行き街を歩き回ったりするがあの時ほど自由さは感じられない。これが旅をなぞってはいけないという事だろうか?