”旅をなぞるべきではない”以前読んだ沢木耕太郎さんのエッセイの中に出てくる言葉。人は決して同じ旅を繰り返すことができない。過去のよかった旅をなぞっても同じことは起こらない。時期や年齢が違えばおなじ感動は得られることはないという意味だろうか?
自分にとっての90年代は(年齢だと30代)結構大変だった。実家が自然災害で倒壊したり事業に失敗して負債をかかえたり就職先の社長が突然失踪したりそして何より子育ての真っ最中で海外に出掛けるお金も余裕もなかった。そんな嵐のような時代も少し通り過ぎた2005年11月。長年の鬱憤が溜まり突発的ににストーンズを観るためロサンゼルスに行くツアーへ参加することを決めた。仕事の休暇がとれるかも未定だし嵐の後でもさほど貯金もなかったがとにかく行くことにした。この旅がその後の人生のやり過ごし方と生き方を大きく変えたと今でも思っている。久し振りの海外というかアメリカ(多分15年ぶりくらい)。前回は添乗員の着く大人数ツアーだったが今回は10名くらいとはいえほぼ個人旅行。いまでは当たり前だが格安航空券でチェックイン時に席が決まり自分で勝手に出国して搭乗ゲートに集合。あとは機内で勝手に過ごして入国ししたら出口に集合。旅慣れていない自分にはすべてが冒険のようだった。置いて行かれないようにあわてて迎えのバンに乗り込みロサンゼルスのダウンタウンへ。緊張から機内ではほとんど寝ていなくてふらふらした。宿泊先はフィゲロアホテル。どうみても3星ホテルじゃないスペイン風装飾の古風なホテル。大きな通りに面していて目の前はステープルセンター。付近にはスタバやフードコートもあり便利と言えば便利。ツアー参加者ははじめ人見知りか初めはみんな無口だったがホテルの部屋がコネクティングルームだったことがあり慣れてからは勝手に繋いで毎晩飲んで色々な話をした。勿論話題の大半は大好きなストーンズや音楽のことだったので何時間話しても飽きなかった。朝目覚めるとまずスタバへコーヒーを飲みに行き出くわした人と今日1日何するかを考える。お腹がすくとフードコートへ行って食事をする。勿論何時に食べるかなんて決めていない。ストーンズのライブに行く以外はまったくのノープランで何をするのも自由。以前は治安が悪いと言われ乗らなかった地下鉄で移動して自分の足で歩いて行きたいところにいく。通りを一つはいると人影がなくなり危なそうなところも多かったが五感を働かせ歩き回る。周囲のやり方をみて切符を買ったり食事を頼んだりタクシーに乗ったりする。わからなければつたない英語聞いてみる。今までできなかったことが少しずつできるようになり楽しくてしかたなかった。あれから同じようにストーンズのライブを観たり海外に行き街を歩き回ったりするがあの時ほど自由さは感じられない。これが旅をなぞってはいけないという事だろうか?

