電脳筆写『 心超臨界 』

あなたが犯す人生最大の過ちは
過ちを犯すことを常に恐れることである
( エルバート・ハッバード )

もちろん、赤松元大尉は自殺を命令などしていない――渡部昇一教授

2007-12-30 | 04-歴史・文化・社会


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「致知」2008年1月号――◎特集◎健体康心 → http://www.chichi.co.jp/
朝日の論点ずらしは 歴史を偽り 未来を歪めるものである
【 連載第143回「歴史の教訓」上智大学名誉教授・渡部昇一 】

(上記記事より抜粋、p117)

守備隊長の赤松大尉は
立派な人格者だった

それはともかく、集団自殺は軍の命令だったのか、そうでなかったのか。

やがて、この問題に決着をつける事実が明らかになった。

戦後ほどなく、渡嘉敷島の村長が島の守備隊長だった赤松元大尉の自宅を訪ね、頼み事をした。沖縄戦の時の集団自殺は軍の命令だったということにしてもらえないか、というのである。島の住民は苦しい生活をしている。軍の命令だったとなると戦死並みに扱われ、国から金が下りるから助かる、ということだった。

もちろん、赤松元大尉は自殺を命令などしていない。だが、赤松氏は責任感の強い人である。米軍の猛攻から住民を守りきれなかったことに強い自責の念を感じていた。そして、自分が多少悪者になることで住民の助けになるならと、善意から集団自殺は軍の命令とすることに同意したのである。

このことは座間味島の守備隊長だった梅澤元少佐にも連絡され、梅澤氏も同意した。両元守備隊長が軍の命令を認め、国から慰藉金が支払われたのは、そういう事情だったのである。

その善意が問題だ、という議論もあるだろうが、それは軍の命令があったのかなかったのかの問題とは別の次元のものである。

この事実を明らかにしたのは、当事者である島の住民である。しかも、ひそかに明かしたのではない。テレビできちんと証言しているのだ。

併せて、住民を守ることに死力を尽くした赤松元大尉の立派な人格を知っている住民は、その死去に際しては花輪を供え、赤松氏を偲(しの)ぶ集まりを開いた、という事実も明らかになっている。住民から情け容赦もなく食糧を徴発し、集団自殺を命じた悪鬼なら、住民がこんなことをするわけがない。

集団自殺は軍の命令ではなかった。これはもう明瞭(めいりょう)なことなのである。

しかし、大江健三郎氏の『沖縄ノート』は、それなりに売れていると見られ、岩波書店はいまでも刊行し続けている。

その中に描かれている赤松大尉は、多少悪者になっても、どころではない。この世にこんなひどい人間がいるのかと思わざるを得ないような極悪人になっている。それは赤松氏自身の思惑をはるかに超えたものだったと思われる。だが、住民を守りきれなかったことに強い責任を感じていたからだろうか、赤松氏はこれを甘受したかのように沈黙して亡くなった。

しかし、故人を極悪非道の人間とする本が相変わらず出ている。そのことに、遺族は耐えられるものではない。名誉回復を図るべく、大江健三郎氏と岩波書店に対し、取り消しを求める訴訟を起こしたのは当然である。この裁判は現在審理中である。

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