電脳筆写『 心超臨界 』

人の心はいかなる限界にも閉じ込められるものではない
( ゲーテ )

日本史 古代編 《 漢文学の輸入でも揺るがない和歌の地位――渡部昇一 》

2024-09-02 | 04-歴史・文化・社会
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日本の漢詩や漢文の歴史は、民族の誇りとなるほどのものである。『懐風藻』はその輝かしい伝統の出発点となるものであるかもわかる。しかも『懐風藻』の詩人であり、同時に『万葉集』の詩人という人が少なくない。これも、まことに面白い現象である。


『日本史から見た日本人 古代編』
( 渡部昇一、祥伝社 (2000/04)、p227 )
2章 上代――「日本らしさ」現出の時代
――“異質の文化”を排除しない伝統は、この時代に確立した
(6) 記紀(きき)・万葉と漢文学の関係

◆漢文学の輸入でも揺るがない和歌の地位

日本最初の歌集が『万葉集』であるならば、日本最初の詩集は『懐風藻(かいふうそう)』(751年)である。詩集といっても漢詩集で、主として五言詩である。

その詩の上手下手をあれこれ言う資格は私にはないが、一般にこれを、幼稚とか模倣とか批評する人が多いようである。

しかし近世日本の漢学の祖であった藤原惺窩(せいか)(1561-1619)は、これをシナ本場のものに劣らぬと言っているから、それほどひどいものでもなかろう。「和習(わしゅう)」つまり日本調なところがあるというのは、日本人がつくれば当然のことである。

ここで論じたいもっと根本的なことは、上手下手ということよりは、その外国文化の消化度の問題である。これほど海外との交通が盛んで、研究書も山のように出ている現在、ちゃんとした韻律や詩形を持った英語の詩やドイツ語の詩やフランス語の詩を作れる日本人が、ほとんど皆無であることを考えると、古代の日本人の感受性と集中度の高さを思わずにいられないのである。

このような現象は、昔のヨーロッパにもあった。

ラテン語で詩や文を書くことは教養人として必修のことであった。もちろん彼らの詩は、本物のラテンの詩人と違うところがある。「和習」ならぬ「英習」や「独習」や「仏習」があるのである。それで後世の学者たちはそれを笑った時代があった。

しかしフリートリッヒ・パウルゼンのような碩学が現われて、中世ラテン語の詩には、古代ローマの詩にない、みずみずしい、デリケートな感受性があることを指摘したし、またカール・オルフ(ドイツの作曲家)作の『カルミナ・ブラーナ』を聴けば、中世のラテン語が、いかに素晴らしく歌いうるものであるかもわかる。

日本の漢詩や漢文の歴史は、民族の誇りとなるほどのものである。『懐風藻』はその輝かしい伝統の出発点となるものであるかもわかる。

しかも『懐風藻』の詩人であり、同時に『万葉集』の詩人という人が少なくない。これも、まことに面白い現象である。

ヨーロッパの中世では、ラテン語の詩人として名を残し、同時に自分の国の言葉の詩人(ドイツ語とか英語とかフランス語とかの詩人)としても名を残した例は、まずは皆無である。それは当時の自国語で詩を歌った人間たちと、ラテン語で詩を作った人間とは別階級であり、母国語の地位が高くなかったからである。

これに反して日本語の地位は、和歌とか、カミに捧げる祝詞(のりと)のおかげで、はじめから高く、しかも漢文がいくら入ってきても、その高い地位は少しも揺らがなかったものなのである。このような状況であったからこそ、8世紀においては、日本語の歌集と古代シナ語の詩集の両方に登場する人が何人もいるのだ。
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