電脳筆写『 心超臨界 』

あなたを心配させることがあなたを支配する
( ジョン・ロック )

アサンジはウィキリークス立ち上げに際し各国の法律や制度を実によく勉強している――菅原出さん

2011-03-22 | 200-歴史・文化・社会
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『ウィキリークスの衝撃』
【 菅原出、日経BP社 (2011/3/3)、p42 】

《 高度な暗号技術と多国籍運営体制の確立 》

アサンジは2006年12月にウィキリークスを本格的に立ち上げる準備に取りかかるが、その際に各国の法律や制度を実によく勉強している。

ウィキリークスはスウェーデンでは新聞社、フランスでは財団法人、オーストラリアでは図書館として登録されている。各国の法制度を熟知した上で、自分たちの活動を進める上で最も適した形態を取っているのである。ウィキリークスが使っている主力サーバーが、スウェーデンに設置されていることは広く知られるようになったが、それはこの国が取材源の秘匿を保障する憲法を持っているからだ。

またドイツには、ウィキリークスに対する寄付の受け皿となる「ワウ・ホランド財団」が置かれているが、これはドイツに「寄付をした人物を明らかにしなくてもよい」という法律があるためである。これによりウィキリークスの活動はほとんどが個人からの寄付で成り立っており、「ジャーナリスト、弁護士、ITエンジニアなど個人的にこの活動にかかわっている人々からのものが大半だ」とアサンジは述べている。

ウィキリークスの活動には年間60万ドルほどの資金が必要であり、フルタイムのスタッフは5人程度、それに加え800人とも1000人とも言われるパート、アルバイトやボランティアの支援者が世界中にいるとされている。

ウィキリークスに内部告発情報を提供したい告発者は、ウェブサイトの指定されたページを通じて、暗号化の施されたネットワークにアクセスすることができる。ウィキリークスが使用している暗号システムは、米軍や大手銀行が使用しているものと同じ最高レベルのシステムであり、送信元が特定されないような高度なセキュリティが整備されている。このあたりは暗号に詳しいアサンジならではのウィキリークス独特の仕組みである。

もちろんインターネットに通じていない告発者でも情報を送ることは可能だ。この場合、より伝統的な方法、つまり手紙でウィキリークスに連絡を取り、USBメモリースティックなどに情報を保存して送付したり、通常の郵便を使って文書を送ることも可能である。ウィキリークスはオーストラリア、ケニア、ドイツの郵便局に私書箱を置いていることを公表しているが、連絡をしてきた告発者にだけ密かに教える一般には公表していない私書箱も、米国を始めいくつかの国々に置いているという。

こうして送られた文書を、ウィキリークスは、標準的なジャーナリズムの手法を使って検証するとされている。すなわち告発された組織に対する取材、送られた文書と同様の文書にアクセスすることのできる人物への取材に加え、送られた電子データ自身の解析も行う。デジタル・フォレンジックスという電子文書の鑑識作業のようなもので、データが改竄(かいざん)された形跡がないかどうかなど、そのデータの過去を調べる作業である。もちろん、公開する際にはそうした電子データに残された過去の記録はすべて削除し、情報源がどこか分からないように加工する。

このように暗号化を始めとする高度なコンピューター技術と、主要な機能を複数の国に分散して配置する多国籍運営体制がウィキリークスの最大の特徴であり、特定の国家からの圧力を受けても「潰されない」仕組みを支えている。世界中で20カ所以上のサーバーを利用し、ウィキリークスのデータを保存する「ミラーサイト」の数もすでに数百に上ると言われている。

アサンジは「ウィキリークスを潰そうと思ったらインターネット自体を破壊しなくてはならない」とまで言い切る。

このような体制を構築したアサンジは、いよいよ世界を震撼させるとてつもない機密情報を次々と公開していく。次章はウィキリークスの初期の活動と発展の過程を見ていこう。

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