広告代理店はイヌと同じだ!【表】

現役広告営業マンの日乗
~表題は某社宣伝部長の金言から(3/19参照)~

ヌード対向はダメよ!

2008-07-25 09:25:16 | 営業
雑誌に広告を出す場合、
クライアントから
掲載スペースについての要望が出るケースがあります。


特に多いのは

①前付け(センターより前)にしてもらいたい
②記事対向にしてもらいたい
③エッチな記事、えぐい記事の対向や中は避けてもらいたい

ということでしょうか。

※③については、金融などの企業に多い。
 (エッチな商品を広告するクライアントの場合は、
  逆にエッチ記事対向にしてもらいたいと言うケースもあります)


雑誌には「台割」というのがあり、
○P~○Pまでが編集ページ、
○P~○Pまでが広告ページといった具合に
制作に入る前に全部のページの構成を決めています。

だから、
出版社の広告営業さんは
事前に台割をチェックして
希望に叶う掲載スペースを確保しておくのが大事な仕事になります。


だいたいはこれで大丈夫なのですが、

雑誌の場合、編集部意向が最優先なので「絶対はない」のが怖い。

ときには、
急にスクープが入ったり、
編集長の気まぐれや勘で
校了直前に台割が変わっていたりすることがあります。

こうした場合に、運が悪いと大惨事が発生します。





これは、
以前書いた「車雑誌」を標榜する男性誌でのお話。

当時私が担当していたクライアントは、
とても厳格で堅い会社でしたが、
出版社の営業担当Iさんの熱意や企画力に惚れてくれたこともあり、
その雑誌だけで年間30ページ以上の出稿をしてくれておりました。

提案するたびにどんどん決まる!

私にとっても、Iさんにとっても、
最重要クライアントとなっておりました。




そのクライアントの唯一の出稿条件が、
ヌード対向は絶対ダメということでした。


なので、

Iさんは出稿があるたびに、
マメに台割をチェックし、
ヌードグラビアが売りのその雑誌としてはビックリするくらい、
毎回見事に条件をクリアし続けておりました。
そして
いつしか私も、それが当たり前になっていたのです。



ところが、ある発売日の前日のこと。


いつもなら掲載誌は宅急便やバイク便で届くんですが、
その日に限って、Iさんが自ら運んできました。


ラグビー部出身で熱意と押しが売りのIさんが
珍しくモジモジしています。

そして

「実は・・・」

と無言で雑誌を開いて見せてくれました。






その瞬間、私は顔から血の気が引くのを感じました。






クライアントの広告の対向には、







妙齢の女性の全裸の写真が!

しかも、肛門に、お花が活けてあったのです。








私は眩暈がしました。





ヌード対向を飛び越えて、

いきなり頂点の「SM記事対向」の達成です。






その後のことはよく覚えておりませんが、

Iさんはひたすら謝り、
一緒に事情の説明に行くと言って下さったのだと思います。


そのクライアントは気持ちがとても暖かい会社ですが
約束を破ったり、不誠実なことは絶対許しません。
過去に某大手広告会社が
ちょっとした手抜きが発覚して、出入り禁止になったことがありました。






SM対向の場合は、どうなるのだろう???

私には、クライアントの反応が、想像もつきませんでした。







悩んでいても仕方ないので
とりあえず、私は単独で、
クライアントにお詫びに行くことにしました。


そして、すぐに

クライアントの担当者にアポを取り、会社を出ました。


そのクライアントには毎回20冊、掲載誌を届けることになってました。
けっこうな厚さです。
しかも今回は中身が全部「SM対向」。

ずっしりと重く、気持ちは最悪の暗さでした。




さてさて、

クライアントの会社に到着すると、
すぐに担当のワタナベさんが登場しました。
いつも陽気で、暖かい方です。

私は、Iさんが報告してくれたときと同様に、
単刀直入に

「申し訳ありません。実は・・・」と

目の前で掲載面を開いて、ワタナベさんにお見せしました。







「!」






ワタナベさんの目がまん丸になったのが分かりました。

衝撃を受けたのでしょう。

両手で掲載面を開いたまま、動きが止まりました。




(両者無言)



これはたぶん、ほんの一瞬のことだったのでしょう。


次の瞬間からのワタナベさんの行動が素早かったです。


パタッと誌面を閉じたかと思ったら

分厚い20冊の束を鷲づかみにして、立ち上がり、

脱兎のごとく自分の席に戻り、

机の下(足元)に、一気にそれを隠しました。




そして

何事もなかったように戻ってきて

生真面目な顔で

キッパリと、こういったのです。









「掲載しなかったことにしましょう」







その後、ワタナベさんが、その件に触れることは一切ありませんでした。

もちろん、ペナルティの要求もありません。

Iさんはお詫びに行きたいとおっしゃってましたが、

私の方で来ないようお願いしました。



おかげさまで、その後は二度とそういうことはなく、

出稿もそれまで通り、続きました。



きっと、ワタナベさんは、

二人が一生懸命やっているのを分かって下さっていたのだと思います。

で、

咄嗟の判断で、

大人の対応をして下さったのだと思います。



私は今もあのときのワタナベさんに感謝してます。

本当にあのときは、ありがとうございました。





でも、

ワタナベさんは、あの後、

机の下の20冊の雑誌は、どう始末したのでしょうか・・・?

今も、あのときのワタナベさんの顔を思い出します。









だから広告会社の営業は面白い。





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※The reason why the title is“広告代理店はイヌと同じだ”
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