初めよりは苦労しないで書けるようになった感じがしますね。
まだ文章的には勉強がいっぱい必要ですけれど、ね。
21.『花束を抱えて』 12.14
泉水子が花屋で嬉しそうに微笑んでいた、ただそれだけだった。
今日はイベントでもなければ記念日でもない。
自分の手であの笑顔にさせてみたいとそう願っただけだ。
これを渡したら泉水子はどんな顔をするのだろう。
想像したら思わず笑みが零れた。
隠しきれない花束を背中に、深行はインターホンを押した
***
22.『無自覚バカップル』 12.14
「鈴原、聞いてるのか」
と声をかけられ、泉水子は英語を教わっていた事を思い出した。
「ごめんなさい。深行くんの声が心地よくて…」
「良いのは声だけかよ」
少し拗ねた声色に泉水子が慌てる。
「声だけじゃないよ!深行くんの全部、好きだもの!」
「なっ」
図書館で真っ赤な二人は勉強どころではなかった
***
23.『独り占め』 12.17
背負われた背中に耳をあてると、心地良い鼓動が泉水子の体へと伝わってくる。
深行の背中と鼓動を独り占めしている様で小さく笑った。
「何笑っているんだよ」と背中越しに声をかけられて
「ううん、何でもないよ」と答えた。
たまにはこういうのも良いなと泉水子は挫いて腫れ上がった足にそっと感謝した。
***
24.『ねぇ、ダーリン』 12.17
そう言ってしまった途端に肩を怒らせて立ち止まった深行の背を見て、
泉水子は地雷を踏んでしまった事に気がついた。
小言を言われるかと思いきや、何時までも動けないでいる深行の前に泉水子は回りこんだ。
怒った様な照れた様な、今まで一度も見せた事のない深行の表情に泉水子は食い入る様に魅入った。
***
25.『隣との距離』 12.18
クラスメイトに名を呼ばれて「ゴメンね」と言葉を置いて泉水子が立ち去り途端に深行の隣が寒くなる。
腕を組外し温度を探る様に、泉水子がいた壁に手を這わせる。
さまっていた手に小さな手重ねられた。
「もしかして、淋しかったの?」
隣に再び戻ってきた包み込む様な温かさに、酷く幸せを噛みしめた。
***
26.『頑なに拒む両手』 12.18
咄嗟に泉水子が自分の口許を両手で隠すように押さえた。
それだけの事なのに自分の全てを拒絶されたかの様に感じた深行は、両手首を強く掴んでそのまま泉水子を壁に張り付けた。
「逃げるな、拒むな、おれから目を反らすなよ」
泉水子は自分を射抜く様な黒い瞳から逃れる術を失ったことを知ってしまった。